
鴻上尚史が作・演出を手がける「KOKAMI@network」シリーズの第19弾となる本作は、約2年ぶりに鴻上が書き上げた渾身の新作。
翼を捨てた元天使が人間を救う戦いに挑む冒険を描いた、思い切り笑って泣ける、歌もダンスもありのエンターテインメントとなっている。
主人公、人間の女性に恋をして翼を捨てるも即失恋し、もう一度天使に戻るため人間を救う冒険に挑む元天使・榊原一郎役を務めるのは、ふぉ~ゆ~の福田悠太。
共演には、榊原が恋をした女性・絹田玲菜役に大野いと、「宇宙の声」代表の第一秘書・岩波大介役に小南光司、フリーライターで玲菜の元恋人の芝隆太役に鈴木康介、森川彩子の娘で小学三年生の少女・森川麻衣役に三上さくら/中川陽葵(Wキャスト)、麻衣の母親で元夫のDVから逃げ出した森川彩子役に田畑智子、榊原が戦いを挑む、スピリチュアルグループ「宇宙の声」代表・神山秀雄/神様役(二役)に渡辺いっけいと、若手からベテランまで、魅力あふれる俳優陣が集結した。
初日に先駆け、囲み取材およびフォトコールが行われた。囲み取材には福田悠太、大野いと、田畑智子、渡辺いっけい、作・演出の鴻上尚史が出席。
初日への意気込みについて福田は「今回は天使役ということで、ずっと天使役をやってみたいなという思いがありましたので、今回天使役をいただけて本当に光栄です」と真剣な眼差しで語るも「本当か?」と鴻上に疑われ、「本当です。僕、嘘つきませんから」と続ける。
いつから天使役を熱望していたのかという問いかけに「生まれた瞬間からです。念願叶って、ここからこの羽のように役者として羽ばたいていくんだなと思っております」と凛として答えた。
大野は「稽古が1ヶ月と10日間ぐらいあったんですけど、ついに初日を迎えることができて、とても緊張していますが、涙あり、笑いありの舞台になっているので、ぜひしんでいただけたら嬉しいので頑張りたいと思います」と意気込む。
田畑は「母になってから母親役というものをやったことがあったかなと考えたところあまりなくて。なので今回は母親になったからこそできる役なんじゃないかなと日々感じておりました。毎回色んな感情がたくさん必要な役なので、クタクタになりながら、でも毎回私の娘役の子たちにたくさんパワーをいただいて楽しんでやっております」とそれぞれコメント。
渡辺は「個人的に鴻上尚史という方とは縁がございまして、35年前に鴻上さんの劇団のオーディションを受けて、落ちた人間です。鴻上さんから直接オファーをいただいたわけではございませんが、このチームに呼んでいただいて、非常に嬉しく、稽古ではしゃかりきに頑張りました。『ベテランだからあんまりダメ出ししないからね』なんて言われてたんですけど、もうダメ出しをどうしても受けたくて、色んなことをやりました。その結果が今日披露されるのは、個人的に非常に嬉しいです。もう福ちゃんとか関係ないです。僕は僕の為にこの芝居を頑張ります。よろしくお願いします」と、鴻上との縁も明かす。
そして演出・脚本を務める鴻上は「この姿を見たらどんな芝居かと思うかもしれないですけど、とてもいいメンバーが集まっていただいて、今回特にオススメだと自信を持っております」と自信を伺わせる。
福田の印象を鴻上は、「去年の舞台を見た時に上手い俳優がいるなと。もちろんふぉ~ゆ~の名前も知ってましたし、割と舞台一生懸命やられているのも知ってたんだけど、その前に一回福ちゃんの舞台を見てるらしいんだけど、全く記憶がなくて」と話すと「その時、僕褒められてるんですよ!」と迫る福田。
鴻上も「そうそう。上手い良く知らない人がいたから、どうも楽屋ですれ違いざまに褒めたんだよね?」と振り返り、「その時は大人数だったので色んな人が出てたから福ちゃんとは分からなかったんですけど、去年、少人数の芝居を見てて、上手い人がいるなと思って、できたらやりたいなと思ったってのが始まりです」とオファーの経緯を明かす。
鴻上の言葉に「ありがたい。大きめに書いといてください!」と嬉しそうに取材陣へお願いする福田の姿が。
対して福田は、「鴻上さんのお芝居にいつか必ず出たいなという思いがあったんですけれども、今回のオファーいただいて、コメントでも『本当に上手い役者さんがいて』みたいな感じで言われた時に、ちょっと勘弁してくれって」と情報解禁時の鴻上のコメントに触れ、「やっぱりお芝居が上手いって言われるより、料理も美味しくないと言われているものを食べて美味しい時の感動が多いじゃないですか。ハードルがちょっと上がっちゃってるのは、自分的には気まずいなって思いはあるんですけど、でもそのハードルを乗り越えて、お客様に感動をお届けしたいと思っております」と力強く宣言。
すると鴻上から「もっと上げればいいのか?ハードル。ジャニーズで一番上手いとかって言えばいい?」横やりが。「本当に勘弁してください!それだけは本当に勘弁してください!」と必死な福田を見て、鴻上は「風間俊介も止めてくれって言ってましたから。中山優馬も言ってました。その言い方は止めてくれと。皆嫌みたいです」と数々のジャニーズタレントにも同じような言葉を送っていたようで、「鴻上さん誰にでも言ってるな?鴻上さんの手口だ!」とショックを受けながらも「ただ、僕はすごくいい気持ちで、お芝居やらせてもらってます。ありがとうございます」と笑顔を見せる福田だった。
鴻上の演出についての手ごたえを聞かれると「作品としてはありありでございますね。鴻上さんも今回は特にオススメとおっしゃってる通り、オススメです。見た方が良いと思います。僕がこの舞台に出てなくて、客席でこの作品を見たら悔しい思いをするような、役者として出たかったなって思うような作品になってますね」と太鼓判を押した。
脚本の中で福田への当て書きの様な部分もある?という問いかけには「元々オリジナルのアイデアがあったんだけど、福ちゃんに出てもらえることによって、子どもが福ちゃんに向かって『おじさん』って言ったら、『お兄さん』って否定するとか。福ちゃんに決まったことによって直したところはあります」と明かす。
「じゃあジャニーズの若いジュニアの子がもし配役されてたら、そのシーンはなかったってこと?」という福田の言葉に「そういうことです。お兄さんのままです」とあっけらかんと返す鴻上だった。
天使姿を大絶賛された福田は「ありがとうございます。今日からずっとこれでいこうかなと思ってます。ふぉ~ゆ~のメンバーにもね。羽を生えさせてもらって、4人で天使になろうかって……なんかおかしいこと言いました?皆で天使になって世を救っていこうかなと思ってます」と答えた。
福田以外のキャストも鴻上作品は初参加となる。
念願がかなった渡辺は、心境を聞かれると「(鴻上が)第三舞台という劇団を昔おやりになってて、僕はその時のメンバーと同世代で、厳しかった頃の色んな話は聞いてきたんですよ。だからそれを覚悟してたんですけど、やっぱり年をとって、どの演出家さんもあるあるですけど、非常に演出の仕方が変化していったんでしょうね。優しいというとあれですけど、理不尽なことは全くなかったし、非常に良い稽古だったなって思い返しても思います。それぞれ皆に課題を与えていらっしゃるので、それが今日の初日から千秋楽までずっとそれぞれのモチベーションが上がったままいくんじゃないかなと思いますし、非常に良いリーダーでした」と稽古の日々を振り返る。
大野は「鴻上さんの作品に出させていただくのはもちろん初めてなんですけど、台本いただく前に本を何冊か読ませてもらっていて、その時にすごく会話が濃厚で、セリフの量も多い作品が多い印象だったので、今回挑戦させていただくにあたって、私は普段話すスピードとか結構ゆっくりなのでそのテンポ感をもうちょっと速度を上げてとか気持ちを高めてっていうところにすごく苦戦して、そういう課題をいただいたりとかしたんですけど、なんとか今日無事いるので、見ていただけたら嬉しいなという思いです」と、笑顔を見せた。
田畑は役柄について「私も初めてなんですけども、今回『ちょっと関西のおばちゃんみたいな感じで』っていうワードを結構言われて。(出身は)関西なんですけれども、京都なので……。もちろん新喜劇を見て育ったし、想像はつくんですけど、どうやらそのグイグイ感というものが私の中にあまりないんですけど、色んな大阪の印象、関西の印象を引っ張り出してなんとか関西のノリのグイグイ感を出せるようにと、お稽古場では常々思いながらやってました」と役作りを語った。
一人二役を演じる渡辺は、中盤から出てくるスピリチュアルグループのリーダー役について「福ちゃんと丁々発止があるんですよ。そこはもう本当に楽しいです」と語る。
鴻上も「見物ですね。上手い2人が永遠やってくれたら、もう全然飽きない!」と大絶賛。
福田と渡辺も初共演というが、「本当に勉強することしかなくて、稽古を1ヶ月10日くらいやってるんですけど、毎回“あ、本物の渡辺いっけいだな”と思ってます」と話す福田。渡辺も「楽屋が今回二人(福田と渡辺)で、ほとんど芝居の話はしないですね。だから舞台上で会話してる感じです」と語った。
息もピッタリの様子だが渡辺は「僕は合わせてもらってると…」と福田の方を見て、「いや、もう勘弁してください!僕が何してもいっけいさんが全てを受け止めてくれるので」と恐縮する福田の姿があった。
本来であれば見守る存在の天使だが、福田が演じるのは少し異なっていて「実は見守るタイプの天使ではないというのが、この作品のミソでございまして。だからこそドラマが色々生まれてくるんですね。ああ、なんて面白そうなんでしょう!」とアピール。
鴻上からも「見守りたいと言ったんだけど、いとちゃん役の女性が拒否しただけです。見ないでくださいと。いとちゃんに惚れて人間になったのに、もうやめてって言われる、そういう役です」と補足が入り、「そうです。複雑なんです。だから天使が人間になりたいなんて言い出すんですかね」と続ける福田。
ずっと天使の姿ではない?という記者から聞かれると「さあ、どうでしょう?ねえ!どうなるんでしょうね?」と含みを持たせた。
そして、最近本当に救われたことについての質問には、福田は「昨日の夜マネージャーさんから『明日の朝、劇場まで車で送ってあげるから』って連絡をいただいた時は、本当に救われたなと思いました。偉そうにニトリの前まで来ちゃって、ガチャって(ドアを開けて)『行ってくるわ』みたいな。助けられましたね。マネージャーさんありがとうございました」とマネージャーへの感謝を伝える。
渡辺は「今年の初めに飼い猫が失踪しまして、かみさんが見つけたんです。それは奇跡だなって思ってます。心が救われました。戻って来てくれてありがとうと、かみさんに感謝しています」、大野は「今年の初めぐらいに携帯を落としてしまって、結局戻ってこなかったんですけど、でも落としたことによって、たくさんの人がどうしたらいいかっていうことを教えてくれたりとかして、落とした時の対処法とか、知らなかったこととかを色々知れたのは、救われたなと思います」、田畑は「うちの息子たちが今4歳と2歳なんですが、稽古の動画を家で見ていましたら、お二人(福田と渡辺)が登場されると『これ何?』って言い出して。なんて説明しようかな……って思って、『この人羽があるでしょ?天使なんだよ』って言って、『じゃあ悪魔は出てくるの?』っていう話になり。『うーん…そうだね…』って考えてたら『ママは悪魔と戦っているの?』っていう話になりまして。毎日行く時に『ママ、今日も悪魔と戦ってきてね』って言われて、帰ったら『どうだった?勝った?』って言われるのが毎日の救いです」とそれぞれ語る。
最後に回ってきた鴻上は、「良い話が続いたな、困ったな…」としながら「稽古場に通ってる時に、近くに美味しいパスタ屋さんを見つけて、稽古の前に美味しいパスタを食べて『あ、頑張ろう』って救われました。さらに、無事に初日を迎えられることは僕にとって本当に一つの幸せで救いだと思います」とコメントした。
代表して福田から見どころが語られ、「やっぱり生で天使が見れる、生で神様が見れる……っていうことと、鴻上さんの演出・脚本により、濃密なドラマがこのサザンシアターの舞台上で繰り広げられますので、この演劇は多分この瞬間ここでしか見れないので、そこが見どころですかね。見た方がいいと思います!」と取材会を締めくくった。
KOKAMI@network vol.19『ウィングレス(wingless)ー翼を持たぬ天使ー』は、2023年5月1日(月)から21日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、2023年5月27日(土)・28 日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演される。
<あらすじ>
天使が人間に恋をした
天使の仕事はただ見守ること
けれど天使は恋した人間を救いたいと思った
だから天使は翼を捨てた
その日から翼を持たぬ天使の冒険は始まった
人間の女性に惚れて天使をやめた元天使は、失恋し、もう一度天使に戻りたいと神様に頼み込む。が、神様は「一人の人間を本当に救ったら、天使に戻す」という条件を出した。
かくして、元天使は、「天使本舗」という会社を作り、人間達の救済に乗り出す。が、人々の悩みを解決しても、「本当に救う」ことにはならないと神様はいう。そんな時、元天使は夜の公園で小学三年の麻衣と出会う。彼女の母親は、スピリチュアル的陰謀論の「宇宙の声」にはまっていた。かくして、麻衣を救うために、元天使は「宇宙の声」代表の寺川秀雄と戦い始めた。