
20世紀を代表するアメリカの劇作家アーサー・ミラーの社会派ドラマである『橋からの眺め』は、違法移民の従兄弟家族を受け入れたことで一家に巻き起こる悲劇を描き、ピュリツァー賞をはじめ、数々の賞を受賞した作品。
近年、ウエストエンドでリバイバル作品として上演され、マーク・ストロング主演、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出で、ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞の各賞を総なめにした。
本作の演出を手掛けるのは、演劇とオペラの演出家として定評があり、コンセプチュアルな演出で評価も高く英国内外で活躍するジョー・ヒル=ギビンズ。かねてより本作の演出を熱望していた彼が、初演出となる日本でどのような作品を誕生させるのか、期待が高まる。
主演を務めるのは、2010年上演の『ジャンヌ・ダルク』以来、13年ぶりの舞台出演となる伊藤英明。イタリア系アメリカ人の港湾労働者で、“男性らしさ”に固執し一家に悲劇をもたらす主人公・エディを演じる。
そして、エディの妻ビアトリス役には映像のみならず舞台にも意欲的に取り組み各方面から高い評価を集め続ける坂井真紀、エディの姪キャサリン役にはNHK連続テレビ小説『なつぞら』や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演するなど多数の映像作品で活躍し、今作が初めての舞台出演となる福地桃子、ビアトリスの従弟ロドルフォ役には映画、TVドラマ、舞台とジャンルを問わず活躍し国外の作品にも多数出演している松島庄汰、ビアトリスの従兄マルコ役には話題の映像作品に多く出演しながらもコンスタントに舞台への出演も続けている和田正人、ストーリーテラーとなる弁護士アルフィエーリ役には舞台、映画、ドラマのみならず司会やナレーションなど多方面で活躍する高橋克実が決定した。
PARCO PRODUCE 2023『橋からの眺め』は、9月2日(土)から24日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスでの上演を皮切りに、その後、北九州、広島、京都で上演される。
<物語>
弁護士アルフィエーリによって語られ、ニューヨーク・ブルックリンの労働者階級が住む波止場が舞台。イタリア系アメリカ人の港湾労働者エディは、妻のビアトリスと17歳になる最愛の姪キャサリンとの3人暮らし。エディは幼くして孤児となったキャサリンをひきとり、ひたすら姪の幸せを願って育ててきた。そこへ、ビアトリスの従兄弟マルコとロドルフォが同郷のシチリアから出稼ぎ目的で密入国してくる。最初は、エディも歓迎するが、キャサリンが色男ロドルフォに徐々にひかれていくようになると、彼らに対する態度が豹変する。そして、自分の気持ちを抑えきれなくなったエディがとった最後の手段は……?
【演出:ジョー・ヒル=ギビンズ コメント】
アーサー・ミラー作品を演出するのは今回が初ですが、彼の戯曲はどれも本当に素晴らしい。なかでも「橋からの眺め」は、作家の優れた技巧と、高度なストーリー展開が合わさった傑作です。血の通った言葉、感情や情熱のたぎりを作中に感じます。
今回はふたりの素晴らしいイギリス人アーティストも来日します。演劇・オペラ舞台美術家兼衣裳デザイナーのアレックス・ラウドと、ムーブメント・ディレクターのジェニー・オギルビーです。彼らとチームを組み、1950年代アメリカを舞台とする本作を、現代的な演出を用いて、今日の観客に語りかける作品にしたいと思っています。
【伊藤英明 コメント】
13年ぶりの舞台出演となりますが、自分自身、意識していたわけではなかったです。ただ、舞台に出演した際はセリフをちゃんと言う事しか考えられず、家に帰ると反省の毎日で……そういったことを避けていたかもしれません。舞台はやってみたいけど、追及もしてみたいけど、自分には何もできないからと思って。
そんな時代がありつつ、真剣に役者として自分をどう捉えるか、何に向かっていくのかということを考えていた時、たまたまこのお話をいただきました。アーサー・ミラーの作品には初めて挑みますが、作品も演出家も、こんなに自分にとって素晴らしいチャンスはない、ここで俳優として何かを捉えたい、どこまでいけるかわからないけどいい挑戦ができたらなと思っています。
稽古がしっかり出来て、いつ本番になってもよいと言えるくらいに自分を出し切りたいです。とにかく頑張ります!!
【坂井真紀 コメント】
この力強く人間臭いアーサー・ミラーの作品を読んだ時の大きな消耗感。それは、なんとも心地よい消耗感でした。「人生」を強く感じました。演出を担当してくださるジョー・ヒル=ギビンズさんや素晴らしいキャスト、スタッフの皆様と一緒に、人生の熱量を客席に熱くお届け出来るよう、頑張ります。
【福地桃子 コメント】
この度、姪のキャサリンを務めさせて頂く事になりました。福地桃子です。
原作を読んでいて、皆が同じものを見ていても、一人一人見えている景色は違うときもあり、気が付けば思わぬ方向を向いているという経験はあるなぁと感じました。
大人になるに連れて芽生えてくる感情など、このお話の人間らしい部分に共感をおぼえました。
脚本・演出を担当してくださるジョー・ヒル=ギビンズさんと顔合わせをした際に、「悲劇だけれど誰ひとり悲劇だと思っていない。良い方向へ向くように歩いて行く気持ちを最後まで持っていて欲しい」というお話しをして下さいました。
とても刺激のある言葉だなと感じ、印象に残っています。
頂いたお言葉を受け止めて自由にお芝居が出来たら良いなという思いでおります。
【松島庄汰 コメント】
世界中の名優が挑戦してきたアーサー・ミラーの作品に僕も参加できるという喜びに満ち溢れております。
約70年前の作品ですが脚本を読んで、家族や他人との交わりから生まれるドラマはどこの国でも、どの時代でも普遍的なものだなと思いました。
俳優とお客さまが同じ空間で空気を共有できることが舞台の好きな所なのですが、特にこの作品の緊迫感から生まれる空気がどんなものになるのか、僕も非常に楽しみであり、今から緊張しております。
素晴らしいキャスト、スタッフの方々と共に最後まで走り抜けられるよう頑張ります。
【和田正人 コメント】
舞台「橋からの眺め」への出演オファーを頂き、とても光栄に思います。
アーサー・ミラーの戯曲は今作が初挑戦ですが、これまでにも多くの先輩方がその世界に没入していく姿を目にし、そこに存在する面白さの本質のようなものに、とても興味も持っていました。
演出を手掛けるジョー・ヒル=ギビンズ氏には、作品についてお話する機会を設けて頂きましたが、私という人間を知ろうとする真っ直ぐな眼差しと、言葉をきちんと受け止める真摯な姿が、とても印象的でした。
演出家の言葉や感情から、細やかなニュアンスを察して演技を構築する役者にとって、言葉の壁は高いハードルとなり得ますが、彼の稽古場では要らぬ心配となりそうな気がしています。
これまで培ってきた経験を活かしつつ、新しいものを吸収する余白を充分に残して、この貴重な創作の場を全力で楽しみたいと思います。
【高橋克実 コメント】
アーサー・ミラーの作品は、昨年春の「セールスマンの死」のベン役に続いて2本目になります。
今回はストーリーテラー的な役割なので、どんな演出になるのか今からワクワクしています。
エディ役の伊藤英明くんとは10年以上前にドラマでご一緒して以来の共演です。
最近テレビなどで拝見する英明くんは、年齢を重ねて、より魅力的になられているので、久々にお会いできるのがとても楽しみです。
舞台では初共演‼︎どんな化学反応が起きるのか??
皆様楽しみにいらしてください。