本作は、1969年初演の『少女都市』を改作し、1985年、新宿スペースDENにて劇団状況劇場が初演。その後 1993年、劇団状況劇場出身でもある金守珍が、自身が主宰する新宿梁山泊公演で上演し、文化庁芸術祭賞を受賞した。
フランスのアヴィニョン演劇祭をはじめ、カナダやアメリカ、オーストラリアなどでも上演され、海外でも高い評価を受けている。

今回演出を務めるのは、前出の劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍。
そして、主演は関ジャニ∞の安田章大。アーティストとしてはもちろん、俳優としてもドラマ・映画・舞台で活躍し、昨年上演された『閃光ばなし』以来の舞台出演となる。これまでテント芝居で唐作品に幾度となく触れ、憧れを抱いていたという安田。どこか神秘的で静謐な空気感を纏う彼が、唐作品特有の幻想的な世界観と融合しどのような化学反応を起こすのか、満を持しての参加に期待が高まる。
ヒロインは元宝塚歌劇団雪組トップ娘役で、本作で初のストレートプレイに挑戦、その透明感溢れる歌声と佇まいは、まさにガラスの肉体を持つ少女・雪子にぴったりの咲妃みゆ。
さらに三宅弘城、風間杜夫と唐ワールドを構築する上で欠かせない手練れの俳優陣も勢揃いし、求心力あるアングラ演劇の世界を作り上げる。

囲み取材には、安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城、風間杜夫、金守珍が出席。安田自らが手を叩いて、ムービーカメラのために同期を取るところから会見がスタート。

初日公演を翌日に控え、現在の心境を聞かれた安田は「唐十郎さんの作品をほぼ真逆であるジャニーズ事務所の安田がお届けでき、そして(「THEATER MILANO-Za」の)オープニングアクト第3弾ということで、皆で整えて、唐さんの作品を日本だけじゃなく世界に届けられるレベルで仕上げてきたかなと思っている次第です」と力強く語る。
憧れの唐作品への参加ということで「嬉しい限りですよ。表情を見てもらったら一番伝わると思います。幸せですね」と喜びが隠しきれない様子の安田。「何より金さん、風間さんと先輩たちが受け継いでいる唐さんのエネルギーを受け継がなきゃいけない中間の年齢に至っていると思うので、次に繋ぐという意味で自分はとても幸せな状況にあるんだなと実感しています」とコメント。

そんな中、稽古で苦労した点については「もちろんあります。理解しきれない部分もあるでしょうし、誤読してしまう部分もあるでしょうし。なんせ唐十郎さんの脳みその中を覗いているわけですから。でもそれがすごく楽しいんです。儚く美しく、その先にある唐さんの世界観というものが覗けるので、充実してます」とやりがいを感じているとのこと。「ジャニーズ事務所ってすごく大きな事務所ですから、唐十郎さんという世界を広げていくためにはとても素敵な大きな場所であり、届けられる立ち位置にいるんだなってことを考えていて。なので、これから僕たちで唐さんの凄さや大切さを途切れさせないようにしていこうって今回改めて決めましたね。だから今回の作品で終わるのではなく、すぐ先にまたやってやろうなんて思ってます」と、唐作品への更なる意欲も伺わせた。

そんな安田の言葉に対して演出を務める金は「もう嬉しいですね」と笑顔を見せる。「唐十郎作品というものはアングラとして世の中に伝わってますが、唐さんがアングラを名乗ったことないんです。世間がアングラだと揶揄していたところがあって、風俗として消えるものだと。これが100年ぐらい続いたら文化になるじゃないですか。その出発点に安田くんがいて、『少女都市からの呼び声』は40年近くやってきて、やっと答えが見つかった完成品だと自信を持ってお届けできます。これから若い人たちや次の世代に伝わったら僕の役目は終わるのかな。あとは安田くんに任せて思いっきり羽ばたいていきたいと思います。安田くんがこれを受け入れたことが大きな転換期になると思います」と語る。

金の言葉を噛み締める安田は「本当にとても大切な役目だと思うんですよ。今回共演している8歳下の細川岳がいるんですけど、それをまた岳が受け継がなきゃいけないと思いますし、どんどん10代や20代の若い子たちが文化として広げていく、唐さんのワールドをしっかり自分の血液の中に送り込むことができるんじゃないのかなって思っています」と作品を繋いでいく意志を語った。

風間は「戯曲というのは非常にいっぺんの詩みたいなところがあって叙情性もあって、その詩の世界を見事に具現化して可視化する演出力に圧倒されまして」と金の演出の魅力を語り、「また今回出させていただいていますけど、機会があれば“やっさん”と一緒に、また次もまた次もと気持ちが昂っています」と安田との再共演を熱望。
風間は安田と過去に何度も共演経験もあり、”やっさん”と呼ぶ間柄。久しぶりの共演について風間は「一回りも二回りも大きく…体は大きくなってないけど」と、冗談も交えつつ「でも芝居に対する構え方が本当に素晴らしい成長で頼もしいです」と感慨深げに語る。

三宅は約40年、金が演じていた役柄を引き継いだ形となり「その重圧に押しつぶされそうに…まあほぼ押しつぶされたんですけど。皆さんのお力もお借りしながら、金さんの演出の下、なんとかちょっとだけ僕なりのフランケができたのかなと」と謙遜しながら、「あとはこのTHEATER MILANO-Zaで『少女都市からの呼び声』がどんどん育っていってくれたら」と期待を寄せた。

咲妃は今作が初のストレートプレイとなるが、稽古を振り返って「自分の中で課題がたくさんだったんですけど、そんな中でもどんどん唐十郎さんの魅力の虜になっていく自分が確実にいて、毎日ワクワクしながらお稽古させていただきました。金さん始め先輩方がたくさんアドバイスをくださる中で、少しずつ自分の中で肉付けされていく雪子を楽しみながら今日まで来ました」と語る。

安田の印象について聞かれると、「元々すごくストイックな方という印象を抱いていたんですけれども、その印象は変わらず、目配り気配りが大変行き届いていらっしゃり、妹役を演じさせていただいていてももちろん感じますし、お稽古場では他の共演者の方やスタッフさんへの何気ないお声がけにもすごく温かみが感じられて、お人柄としてもすごく尊敬しています」と賞賛。
「すごく健康管理をきちんとされていらっしゃるんだなというのを感じて、お稽古場でも早くからいらっしゃって身体作りをなさって、本稽古に挑まれているお姿をお見かけしますし、体調を整えるグッズをたくさんお持ちになられていて。マットとか…」と稽古場での様子を話す咲妃に、安田は「マットは大体皆持ってる」と笑いながら、「確かに自分の身体を壊したこともあるので、ケアとかしないと120%のパフォーマンスが出来ないというのは来てくださる方に申し訳ないと思う部分もあるからじゃないですかね」と語った。

安田を迎えた今作の『少女都市からの呼び声』では演出が変わったところがあり、見どころの1つとにもなっている安田演じる田口の歌唱シーン。
それについて金は「この作品の戯曲にはないんですけど、唐十郎といえば劇中歌でものすごく大事なものですから、それが増えました。今日稽古をしまして、今日完成です」と直前に決まったことを明かす。「お披露目はゲネプロなので僕もワクワクしていて、唐さんが歌ってるぐらい素敵なんですよ!」と大絶賛。
すると安田は「稽古が全部終わった後に決まったことなんです。ハードルを上げちゃダメですよ」と苦笑いする場面が。
風間からの「やっさんをもっとかっこよく凛々しく登場させなきゃ!」という助言があったという金は「何かしなきゃいけないってピンと来たのが歌。それで次の日に連絡したら「歌います」って。やっぱり本業は歌手ですから!ファンはイチコロになりますよ!」と熱くアピール。

取材の最後は、安田が代表してメッセージ。「今まであった作品が少しずつ色を変えながら、エンターテイメント性も含まれつつ過去の大事なものを残しつつ、進化しながら変化していく。そうすることによって文化というものは廃らないでしょうし、これからも語り継がれるのかなと思っているので、今回がスタートなので、2回目3回目と続けていくための準備、そして皆さんに対しての僕たちの誠心誠意というものを受け止めてもらえたらなと思っています。とにかく唐十郎さんの世界、そして金さんの演出の世界を楽しんでいただきたい。今しか見られないものになっていると思います」と取材を締めくくった。

THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ/COCOON PRODUCTION 2023『少女都市からの呼び声』は、2023年7月9日(日)から8月6日(日)まで、東京・THEATER MILANO-Za、8月15日(火)から22日(火)まで、大阪・東大阪市文化創造館Dream House 大ホールにて上演される。