2021年4月に上演を予定していた『月とシネマ』だが、コロナ禍で全公演中止に。どうしてもお客様にこのハートウォーミングな舞台を観ていただきたい!という、作・演出のG2と中井貴一をはじめとするキャスト陣の熱い想いが実り、新たなキャストを迎えて、今秋バージョンアップした『月とシネマ2023』を届ける。

出演には、2021年版でG2、中井貴一、藤原丈一郎と共に、全公演中止決定のギリギリまで稽古に臨んだ村杉蝉之介、たかお鷹。
この並々ならぬ想いを抱えたメンバーと共に、バージョンアップした2023年版の『月とシネマ2023』を彩るキャストには、永作博美、清水くるみ、木下政治、金子岳憲、奥田一平、今井朋彦といった実力派俳優が揃った。

公演初日に先駆け行われた取材会には、キャスト10名と作・演出のG2が出席。初日を迎えるにあたっての意気込みを一人ずつ語る。

まず、G2は「色んなところで言い続けてきましたが、コロナで中止になり、そしてまた違う形となって新しい人たちも混じって練り上げた作品というので、今日いよいよお客さんに見せられるということがまだ実感として自分にはないんですが、ご覧のようにとても優秀な俳優・女優が集まったので、より世界に誇れる皆が集まってくれてると思いますので、ぜひ僕自身も初日を楽しみに待っております」と期待を寄せる。

続いて、主人公で映画プロデューサーの並木憲次を演じる中井は「なにわ男子の中井貴一です」と話し出し、「違いますって言うのも言いづらいです」と苦笑いする藤原の姿が。
「2年前、僕たちの作品の前の作品がちょうどコロナで中止になって、ここの場所で僕たちが一ヶ月稽古をして、そしてこのようにセットが立って、いざ本番という時に緊急事態宣言が出て中止になって。でも東京が終わって大阪までの間には緊急事態宣言が終わるんじゃないかということを目標に、一ヶ月間稽古をし、結局全公演中止という形になってしまったんですけど。その時に稽古をやりながらそれぞれ芝居を構築していくんですけど、芝居って一番大切なのはお客さんなんだっていうことがその時にすごく分かりました。お客さんがいてくださることによって芝居っていうのは成熟し、進歩をしていく。お客さんがいない中で芝居をして、いくら稽古やっていってもなかなか成熟しきれないということがその時に分かって、今日初めて成熟させてくれるお客様と相対することになって、どういう風な反応になるかちょっと心配ですけども、全員で最後まで怪我のないように、頑張っていきたいと思います」と2年前を振り返りながらコメント。

映画会社の宣伝部社員・小暮涼太役の藤原は、役どころについて「映画会社の宣伝部の若手社員として要所要所でかき回す役でして、悪気はないんですけどもついつい言ってしまったりと、アクセントになっている役だと思いますので、そして中井貴一さんとの掛け合いも是非見どころなので楽しみにしていただけたらなと思います」と述べる。「そして今日、2021年の『月とシネマ』以来、約2年ぶりにこうしてPARCO劇場さんで、初日を迎えられるということは本当に僕自身もすごく嬉しいことです。昨日は関西がすごく“アレ”で盛り上がってますので、“アレ”に負けないように、今日から『月とシネマ2023』を盛り上げられたらなと思います!」と昨日日本中が大盛り上がりとなった日本シリーズにも触れながら気合いを見せる。

並木の元妻でフリーライターの高山万智子を演じる永作は今回からの参加となる。「G2さんが作・演出ですけれども、それぞれがそれぞれの思いで動くタイミングとか作ってきてる感じがあって気持ちいいなと思いながら稽古場にいました。稽古もすごくトントンと進んでいき、今日があるような気がしています。出来上がりはもちろん、帰りの足並みが絶対皆軽いと思います。気分が軽くなって、ちょっとうっすらこう笑っちゃうような感じで帰れるような作品になっておりますので、楽しみにしていただきたいと思います」と笑顔で語る。

町の消費者金融の男・児玉正義役の村杉蝉之介は「前回も参加させていただいたんですけれども、色々あって全公演できなくなって、今回初めてお客さんの前でできるのがとても嬉しいです。そして、色んな諸事情でもしかして僕が出れないかもしれないし、僕の役もないかもしれないみたいな話があったんですけど、結局前回と同じ役で呼んでいただいて、Gちゃんと貴一さん、ありがとうございます。丈くんもね」と裏事情を明かしながら感謝を述べる。「本当にスケジュールの関係で、出てるのか出れないのか分からなかったんですけれども、皆さんより稽古日数が少なくて、今とても不安です。でもこれを僕客席で見てたら、悔し泣きをしてたと思うので、本当に嬉しいです。よろしくお願いします。頑張ります」と意気込んだ。

市の「まちづくり推進課」の職員である朝倉瑞帆を演じる清水は、「真面目なんですが、チャキチャキしてる女の子です」と役どころを話し、「笑いあり、涙ありで、コメディ作品って稽古場でもすごい笑いが絶えなかったんですけど、お客様入って初めて完成するものなので、すごく楽しみにしています。あと個人的には藤原くんの衣装がすごくお似合いの部分があって、シリアスなシーンなんですけどすごい楽しい感じになっているので」と見どころをアピール。

瑞帆と深野の上司の村上英嘉役の木下は「市役所の役人ということで、一般の企業の課長とは違う課長を演じられたらなと個人的には思っております」と話しながら「稽古場ですけども、とても風通しのいい稽古場でして、それぞれが通称で呼び合う仲で、ということで始まりまして、恐れ多いですが、僕は中井さんのことを“キーさん”と。とてもいい現場でした」と稽古場を振り返った。

不動産屋の佐々木均を演じる金子は「意気込みに関しては前回からの意志を引き継いでいこうと。緊張してます」と緊張している様子。

瑞帆の同僚で婚約者の深野隆史役の奥田は「深野という役は表面に出てくるものと中に抱えているものがとても違っていて、そこのせめぎ合いを表現できたらなと思っております」と役について語り、「2年ほど前、中止になってしまった月とシネマが今回新たなキャストを迎えて公演ができるということに、そこにまた参加できるということに喜びを感じております。責任を持って最後まで演じさせていただきます」とコメント。

ムーンシネマの映写技師・黒川庄三役のたかおは「僕も前回も出てましたけどロクさんはずーっとここに住み着いてる主みたいなもんです。30年前からじいさんだったという(セリフがある)から、もう自分の歳が何歳なのかわからなくなってますね。もう充分稽古しましたので。ただ、淡々とやるだけです。それで伝わると思います」と話す。

映画監督・榊哲哉役の今井は、「10年前に中井さん演じる並木さんとタッグを組んで映画を作るはずだったのが、とある事件をきっかけにちょっと仲違いという状態になったんですけども、ムーンシネマの館長の死をきっかけに、またこの映画館に吸い寄せられるように近づいて来るというような役でございます。途中でもしかすると敵役のように見える瞬間もあるかもしれませんが、最終的にはG2さんが描く、ハートフルコメディの物語の中に無事着地できるのではないかと思っております。本当に楽しい稽古場だったんです。一日中笑いが絶えないようなそういう稽古場でしたので、その雰囲気をそのまま舞台に乗っけられたらもう成功間違いなしと思っております。どうぞお楽しみにお待ちください」と語った。

2年前の全公演中止から待望の上演となる今作。2年越しの上演となる心境をG2は「一昨年、稽古もいっぱいやって、お客さんが見るだけになっていたところ中止になって、ちょうどセットの中で、皆でこれ以上やっても発表の場がないということで、ある日稽古を中断してお別れ会をしたんですけど、その時に中井貴一さんに「Gちゃん、これはもしかしたら芝居の神様がまだ見せてはならないとおっしゃってるんだよ」って慰めてくださったんですけど、それは逆にもう一回やる時ブラッシュアップするんだよっていうメッセージが既にその時にあって」と2年前を思い返し、「それでPARCOの製作の方々も惜しいということでリベンジ公演を設定していただいたんですけど、再三話をしていて、あれは稽古をすごいやりきったので、何か違う形でチャレンジをしたいねと。それで新しいPARCO劇場なので人数も増やしたいなと思って、登場人物を増やしています」と進化している部分を語る。「僕自身は難しかったんですけど、今回皆ユニークかつ優秀で自分の世界を持ってる人が集まっているので、稽古中にどんどん役が僕の手元から離れていくんです、良い意味で。昨日くらいに完全に僕の元から離れちゃったなという寂しさがあったりして。そういう経緯なので、構想5年、稽古は前回を含めると2,3ヶ月という作品です。普通の作品とは違う何かがお客様に伝われば良いなと思います。何だか分からないけど笑ったんだけど、なんで笑ったか分からないし、感動したけどなんで感動したのか、すごく感動した、みたいな感想を抱いて帰ってくれたら嬉しいなと思っています」と観客の反応を楽しみにしている様子。

そして2021年版からの出演続投となった藤原は、2年ぶりの稽古について「楽しみもありましたし、キャストの方々も増えたということなのでなにより緊張がすごくありまして、もちろん脚本も変わって」と話しながら「忘れられないのは、今回の本読みの時に中井貴一さんに挨拶に行った時、「おお~久しぶり!」って言ってくれるのかなと思ったら「初めまして、中井貴一です」って言われた時は、ちょっと待ってくださいと!あれだけ2年前一緒にやったじゃないですかと思いながら、そういったやり方のコミュニケーションを取ってくださって。悔しさもあったんですけども、その悔しさをバネにこの『月とシネマ2023』が無事完走できたらなという思いが今は強いです」と力強く語る。

中井も「G2さんもおっしゃいましたけれども、もういいなと思ったんですよ。本当にやり切った感があったので。でもスタッフたちがこのセットを誰にも見せないで壊すのは、という想いと、そして2年前は藤原くんが(なにわ男子の)デビュー前で、「僕まだデビューしてないんですよ」って言って「デビューと今、どう違うの?」という話をしていて。丈のためにももういっぺんやるか、っていうような話になって、そうしたらこんな有名になると思わなかった。こんな人気者になるのかって一番状況が変わったのは藤原丈一郎で。じゃあやらなくてよかったんじゃないかっていう思いもどっかにあったんですけど」と藤原への想いを冗談も交えながら語り、「彼が役者として今後、もちろんアイドルだけどいずれかそこから役者としてやっていったりするベースみたいなものがここの瞬間に何か作れるみたいなことがどこかであれば良いなと思いながら。稽古の時も「お願いします」って言われて、初めての気持ちでやりましょうということで「初めまして」って言ったんですけど、こいつガラッガラの声で来たんですよ初日。一人だけ声が出てないっていう。最悪な稽古初日を迎え、そこから徐々に回復をし、本日に至ったという次第でございます」と、「初めまして」と声をかけた理由と、稽古初日のエピソードを暴露。
なぜ声がガラガラだったのか聞かれた藤原は「ちょうどライブツアー中でして。そこでちょっと声を枯らしてしまって、気合いはすごくよかったんですけど、声がガラガラで総ツッコみを食らいまして。そこから喉のケアだったり、中井貴一さんから差し入れの方とかもいただきまして、しっかりと喉が潤っていきました」と弁解した。

一方、今回からキャストに加わった永作は、稽古場について「途中から入る私は少し気後れしちゃうかなと思ったんですけど、でも皆さん結束されているのにそんな感じでもなく、今始まったような感じでスタートさせていただような気がします。本当に現場が明るくて楽しくて、どんどんそれぞれがそれぞれを引っ張っていってくれるような。素敵な作品を呼んでいただけたなと思っております」と語った。

最後にキャストを代表して中井からメッセージが。
「とにかくこの企画というのは、G2さんとかPARCOの皆さんと一緒にコロナ禍でどういうものを見せるか?っていうことを考えて2年前に作って。皆の心が塞いでる時にどういうものを見ていただいたら、一緒に心が和やかになるんだろうかとか、それを中心に考えたもので。今はコロナが無くなったわけではないんですけど、落ち着いた時にお客様がどういうふうに感じていただけるのか、今は非常に不安な状態でいるんですけど、このカンパニーは非常にチームワークが良いんですが、このメンバーで2時間の間、今のニュースを見ると嫌なニュースがたくさん流れているんですけど、それを忘れてもらえる時間を過ごせてもらえたらいいなと思っております。藤原くんの成長ぶりと言うんでしょうか、自分でもよく言ってますけど、稽古で「結構成長したと思います」と僕に耳打ちするように言ってくれるんですよ。だからそれを楽しみにお客様に来ていただきたいなと。よろしくお願いします」と、取材会を締めくくった。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『月とシネマ2023』は、2023年11月6日(月)から11月28日(火)まで東京・PARCO劇場、12月3日(日)から12月10日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。

<ストーリー>
とある町にある映画館「ムーンシネマ」は、映画プロデューサー・並木憲次(中井貴一)の父である館長が亡くなったことにより閉館の危機。同じ映画関係の仕事だが、30年以上父子の交流は全くない絶縁状態だった。映画プロデューサーとはいえ、経営のノウハウがない彼は映画館を売ろうと地元の不動産屋・佐々木に見積もりに来てもらうも、映画会社宣伝部の若手社員・小暮涼太(藤原丈一郎)や「ムーンシネマ」のボランティアスタッフで、市の「まちづくり推進課」職員でもある朝倉瑞帆、映写技師の黒川庄三(愛称:ロクさん)らから猛反対を受けてしまう。そこへ並木の元妻でフリーライターの高山万智子(永作博美)が現れ、映画館の相続権が瑞帆にあることを知らされるが—。

【登場人物】
並木憲次(映画プロデューサー):中井貴一
小暮涼太(映画会社の宣伝部の若手社員):藤原丈一郎(なにわ男子)
高山万智子(並木の元妻、フリーライター):永作博美
児玉正義(マチキンの男):村杉蝉之介
朝倉瑞帆(市の「まちづくり推進課」の職員):清水くるみ
村上英嘉(瑞帆と深野の上司):木下政治
佐々木 均(不動産屋):金子岳憲
深野隆史(瑞帆の同僚で婚約者):奥田一平
黒川庄三(長く勤める映写技師):たかお鷹
榊 哲哉(映画監督):今井朋彦