――本作への出演が決まった際の心境を教えてください
- 神尾楓珠(以下、神尾):タイトルがかなりインパクトあって、どんな話なんだろう?と思ったのが最初でした。役柄については、真央が飄々として掴みどころがないので、高校生から25歳まで演じましたが、その年代によっての演じ分けが難しそうだなと思いました。
- 葵わかな(以下、葵):タイトルの意味が深そうで抽象的で、見る角度によって意味が変わるお話だと思うので、真央と由宇の関係性だったらどういう意味があるのかな、どんな風にそのワードが届くと良いのかなと思いました。あとは、いろいろなキャラクターたちの話もあるということで、それぞれがどういう風に絡んでいくのかがすごく楽しみでした。
――ご自身の役と相手の役の印象をそれぞれどう捉えていましたか?
- 神尾:真央は掴みどころがない役で、この人は誰にでも人当たり良く接して、腹の底は分からない感じだったので、そのミステリアスさというか、この人は何を考えているんだろう?と気になってもらえるように演じていました。
由宇は生きること、恋愛、そして自分の夢のことにすごく一生懸命で、多分それが真央からしたらすごい眩しかったんだろうなと思っています。
- 葵:由宇は、ひょいと乗り越えられる段差だったとしても、これをどう乗り越えるか、みたいにちゃんとぶつかって、落ち込んで、すごく不器用な子だなという印象があります。特別強い力があるというより、地道に歩いて少しずつ成功体験を重ねて、大人になっていった人だと思っていて、その少しずつの良い体験の中に真央との出会いがあったんだなと。
真央はすごく自由に人生を単身で生きている感じがあって、学生時代は特に自分の感情に素直な人に見えていました。由宇はそこが眩しくて、自分もそうなりたいという憧れみたいなものがすごく強いのかなと感じました。
――お互いの芝居から感じたことは何かありましたか?
- 神尾:僕は本当に由宇にしか見えなくて。わかなちゃんはすごく一生懸命で真面目で、それは本読みの段階からすごいなと思っていました。分からないことがあったらちゃんと監督に聞いて、自分が納得するまで話していたのが、由宇と似ていると思いました。
- 葵:高校時代の真央と大人になって再会する真央の雰囲気が結構違って、私的には神尾さんのイメージは、どちらかというと大人になった真央の、少しアンニュイな、どこか影があるミステリアスな感じでした。けど、高校時代の真央は常に目に光が入っている感じで輝いていて、由宇の憧れの真央というか、2人が大事にしている高校時代のキラキラした思い出とリンクする部分があって。普段の楓珠くんと真央になった時の楓珠くんの印象が違って、すごいキラキラしているなって高校時代は思っていました。
――役を演じる際に意識していたことや、気をつけていたことがあれば教えてください
- 神尾:台本を読んだ時に、真央は柔らかい雰囲気の人物なんだろうなと思ったので、そういう話し方や目線など、少しでも柔らかい人に見えるように意識していました。
- 葵:本読みの時に監督から「由宇は10代の時はすごく自信が無くて、真央に会って変わっていく」と話していただいたので、その変化みたいなものは結構意識していました。由宇もハツラツというより、人に合わせるタイプなのかなと思ったので、できていたかは分からないですけど、あまり強くなりすぎないようにと意識していました。
- 神尾:強い時は無かったよ。
- 葵:でも喧嘩のシーンが多かったからね。
- 神尾:喧嘩のシーンは難しかったね。多分色々抱えていたものが爆発、みたいに、真央も真央っぽくない部分が出たり、由宇も由宇っぽくない部分が出たりとかしていて。
- 葵:喧嘩ってそういうものだからね。
――今回、葵さんと神尾さんは初共演となりますが、最初の印象から一緒にお芝居をして、印象が変わった部分はありましたか?
- 神尾:僕はすごい真面目な方だなと思っていて。
- 葵:そんなに?(笑)
- 神尾:お会いする前から、品があって一生懸命で、真面目な方だなと思っていました。それは今も変わらずですが、思っていたよりお笑いのセンサーがちゃんとあって、それがすごく僕は助かりました。本当にしょうもないボケに乗ってくれたりつっこんでくれたりして、だから話していてすごく楽でした(笑)
- 葵:私は、クールな印象だったので、一言も喋ってくれなかったらどうしよう……と思っていました。実際にお会いしたらすごくフランクで、お喋りも好きそうで、あとは同世代なので気兼ねなく気楽にいろいろな話ができて、撮影に臨む時もそういう感じでできたかなと思います。
――神尾さんがしょうもないボケをされるんですか?
- 神尾:僕がしちゃうんです。テレビとかでは絶対できないような、本当にしょうもないボケなんですけど(笑)。精神年齢が僕は子どもなんですけどわかなちゃんは大人で、でも僕に合わせてくれるからすごい助かっています。しょうもないボケはいつも思いつきです(笑)。丈くん(藤原丈一郎さん)と一緒にずっとしょうもないことをしていました。
- 葵:確かに。2人がずっと小声で何か言っていましたね。2人が本当に幼馴染みたいだった(笑)
- 神尾:わかなちゃんはちょっと振ったりするとちゃんと乗ってくれて。この間、雨で靴底が濡れていたので室内を歩いた時にキュッキュッって言ってて、楽しそうにしていたから「どこからそんな声出てるの?」みたいなフリをしたんです。そうしたらそれに乗ってくれて、嬉しかったです。
- 葵:嬉しかったんだ(笑)
――葵さんはどう答えたんですか?
- 葵:なんて答えよう……と思って、「そんなわけないじゃん!」は違うか、とか思いました。
- 神尾:あの一瞬でそんな考えてたの!?
- 葵:ちょっと乗ってみた(笑)。そうしたらすごい笑ってくれたから嬉しかった(笑)
- 神尾:めっちゃ面白かったです。
――同年代の方が多い現場だったかと思いますが、ムードメーカーはどなただったんですか?
- 神尾:丈くんじゃないかと思います。本当に良い人で、壁が無く、どんな人でも何でも受け入れるよ、みたいな器の大きさを感じました。初めて会った時から、初めて会った感じがしない、長年付き合いのある友だちみたいな感覚になりました。
- 葵:誰とでも分け隔てなくお話をしてくださって、普通の話ができる人じゃない?
- 神尾:普通の感覚で話せて、芸能人って感じではない(笑)
- 葵:したことは無いけど、「野菜高いよね」って主婦みたいな会話ができそうな感じで、「今日暑いよね」からすごい話が盛り上がって、コミュニケーションスキルが高いです。
- 神尾:(なにわ男子としての)ライブツアーもあってスケジュールが相当大変だったと思うんですけど、それでも現場に来たら毎回盛り上げてくれて笑わせてくれて、助けられていました。
――神尾さんと藤原さんは幼馴染という役柄で、実際もかなりフランクに接していたようですが…?
- 神尾:もちろんリスペクトはあります!めっちゃ好きです!(笑)。あまり年の差を感じない人柄だったので、それはすごくありがたかったです。
――葵さんが印象に残っている共演者の方はいますか?
- 葵:真央とはまた別に、白洲(迅)さん演じる野北さんと同じシーンが多くて、役柄も真央と対照的に描かれている部分もあり、面白かったです。
- 神尾:迅くんは不思議で面白いよね。
- 葵:面白くて良い方です。白洲さんも私もご飯やお酒が好きで、食の好みが合うことが多かったです。撮影現場でどれ選ぶ?みたいなことをスタッフさんとやった時に同じものを選んでいて、由宇と野北さんもそうやって仲良くなるんですけど、そこまで一緒なんてすごいと思いながら、ずっとご飯の話をしていました(笑)
――本作は真央と由宇の恋愛だけではなく、幼馴染の真央と西颯(藤原丈一郎さん)の関係性と、友情も描かれています。そういう部分に感じる作品の魅力は?
- 神尾:真央と颯の関係性は、仲が良かったけど全然会わなくなって、でも颯は会いたいと思ってくれていて、友情なんですけどそれも一つの愛というか、その2人の関係性も尊いものだなと思っていました。そんな風に思ってくれる人ってすごくありがたいと思うので、恋愛とかだけじゃなく、友だちとしての絆も描かれていて良かったと思います。
- 葵:今回のドラマでは颯には颯の人生があって、颯側のストーリーも見えてくるのが面白い部分だなと思います。それぞれのキャラクターをいろいろな角度から見られて、皆がその人のことをよく知ることができるのが良いなと思いました。
――本作のテーマである“忘れられない恋”にちなんで、学生時代の忘れられない思い出はありますか?
- 神尾:いっぱいありますね。でもやっぱり卒業式です。意外だと言われるんですけど、卒業式で大泣きしちゃうタイプで、多分誰よりも泣いていた自信があります。
- 葵:卒業式のどこで泣くの?
- 神尾:全く関わりの無かった違うクラスの女の子が答辞を読んでいたんですけど、その子の思い出話とか全然関係ないのに、その人の気持ちになってボロボロ泣いて。先生たちから一番見える列にいて、泣かないと思われていた僕が泣いているのを見て先生たちが号泣し始めて。
- 葵:泣いてるとつられますよね(笑)
- 神尾:先生たちが泣いてるのを見て「先生泣かせた、やった!」って思っていました(笑)
――葵さんは何か思い出はありますか?
- 葵:仕事を始める前、小学生時代は外で遊ぶのが大好きで、木登りや川遊びをして、夏休みは毎日友だちと自転車で川に行ったり、家のホースで水をバーッと撒いたり、家の駐車場で寝そべったり(笑)。真っ黒に日焼けしていて、小学生で一番夏休みらしい夏休みというか、自転車でどこまでも行ける気がしていたあの頃、みたいな忘れられない夏です。
- 神尾:だから虫とかも大丈夫なのかな?撮影の本番中に蜂が止まったんですよ。
- 葵:本番中だったから(笑)。私の視界では小さく映っていたんですけど、皆がヒヤッとするぐらい、相当大きかったみたいで。
- 神尾:全く動じてなくて、カメラマンさんが止めてました(笑)
――最後にこの作品を楽しみにしている方にメッセージや見どころをお願いします
- 葵:短編集の原作があり、原作を読んでくださっている方がドラマを見てどう思われるのか、どんな風に受け取ってもらえるのかが楽しみです。撮影している時に、いろいろなキャラクターの恋模様や人生模様が垣間見えるのがすごく面白いところだなと思い、私自身も楽しみながら撮影していたので、ぜひ放送を待っていただけたら嬉しいです。
- 神尾:回想シーンなど、年代が行ったり来たりする中で、それぞれの感情や関係性が今、どうなっているのかがしっかり描かれているので、そんな関係性の変化を楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。
撮影:川島彩水
【葵わかなさん】
ヘアメイク:河嶋希(io)、スタイリスト:岡本純子
【神尾楓珠さん】
ヘアメイク:奥山 信次(barrel)、スタイリスト:大内美里(Emina)