水野が演じる一ノ瀬美津は、りんの母で、那須にあった小藩の旧藩主の一族として生まれた。農家になり、明治を迎えても気位の高さは失っておらず、いざという時には自らなぎなたを振るう豪胆をもつ。一方で新しい物好きな一面も。夫・信右衛門をコレラで亡くした後、上京してりんたちと暮らし始める。娘たちにとっていちばんの幸せは良家に嫁ぐことと信じつつ、「ナースとして働きたい」というりんの覚悟を認め背中を押す。自立しようとするりんに触発され、自分も瑞穂屋で働くことに。

―― 一ノ瀬美津のキャラクターはどのように作っていかれたのですか。
美津は武家の女性なので、最初のキャラクター造形は所作指導の先生に学んだことが多かったです。手の置き方や食べ方、姿勢、風呂敷の包み方など、所作や礼儀を小さいころから指導されて出来上がっている人間なんですよね。
口も大きく開けてはいけない。キリッと結んで、笑うときも袖で隠して笑う。ひとつひとつの所作を指導の先生に教わることで、キャラクターを作っていったので、喜怒哀楽を表現したい部分も所作の縛りのなかで演じることで美津という人に近づく。自分の生理とは異なる芝居の表現や感情の放出の仕方をするということは、今回が初めての経験でした。
――― クランクインから一年近く美津を演じられていかがでしたか?
こうやって長いこと携わると時間の流れを感じますね。りんが成長して孫までできて、さらに直美が家にやってきて、直美がまた赤ちゃんを産んでという……。安も子どもを産みましたしね。脈々と時代が変わって命が受け継がれていく感覚。そんな実感を持ちながら演じさせていただきました。
東京パートになり思ったことは、美津はもともと好奇心旺盛で対応力のある人だったのだろうということ。時代の流れや価値観の変化などを察知する能力も高く、目の前のことを受け入れ柔軟に対応していける人。
旦那さんが生きているときは旦那さんが“姫君扱い”をしてくれるので、そういられるようにしたいと思っていたでしょうし、もしかしたら、旦那さんの思いを汲(く)んでいたのかもしれないですよね。
子供たちに幸せになって欲しいし、育て上げるのが生きがいということは芯としてあると思います。そのなかで自分の娘・りんが新しい時代に自分とはまったく別の人生を歩もうとしていることを受け入れる許容量もあった。
多分美津が現代に生まれていたら、たくましく働きながら子供を育てるいいお母さんになれる人なんじゃないかと感じましたね。
私も美津と同様で好奇心旺盛だし、適応力がある方だと思うので、同調する部分も多く、楽しく演じさせていただきました。
――― これからのりんと直美にエールを送るとしたら?
現代でも通じるような、女性だけで家を切り盛りしていく生活になってきているので、これから先も続くなら2人で力を合わせてたくましく生きていってほしいなと思います。この時代に、男性に頼らず女だけで生き抜くってすごいことだと思いますので。最後まで2人らしく生きる姿を見せてもらいたいなと願っています。もちろんいいお相手がいればそれはそれで迷わず進んでほしいです。