――ここからは家入さんご自身のお話を。歌手になったきっかけを教えてください
漠然と小さい頃から歌う人になりたいという想いはありました。一人っ子だったのと、引越しが多くて、物も持って行けないし、習い事を続けられる環境ではなかったので、自分自身で日々を充足させていかなきゃいけなかったんです。でも、声って自分の体の一部だから、気が向いたらどこでも歌える。あとは両親と離れて色々な人の家で生活をしていた時期があって、各家庭にあるCDやレコードを聞いて真似して遊んでいました。その時「音楽だったらいろんな人格になれるんだ、楽しい」って思って、歌う人になりたいと。
――13歳で音楽塾「ヴォイス」に入塾し、ご両親に反対されながらも単身で上京を決めたのが15歳。東京に行きたいという意志が強くあったんですか?
いえ、ずっと福岡にいるんだろうなって思っていました。たまたま『サブリナ』が今のレコード会社の人に人づてで伝わり、「デビューは決まってないけど一回東京でやってみる気ない?」って言われたんです。その時中高大の一貫校に通っていたんですけど、デビューの保証がないのになんで中退してまで行かなくちゃいけないんだって父にすごく反対されて。でも、想像が出来すぎていたんです自分の人生が。ずっと同じ友達で、大学まで行って……ってあんまり心が躍らなくて。あとはもっと音楽を知りたいっていう気持ちでした。プロフィールを追っていくと意志が強く見えるのか、そう言っていただくことが多いんですけど、ただ行きたい方に行っただけなんです。ただ、出会いの運だけはとてもあって、それで今ここにいるって思っています。
――楽曲制作はどのように行っているんですか?
自分で制作する時はメロディーを先に考えます。メロディーが言葉を呼んで来ると思っているので。でも今は、色々なクリエイターさんやアーティストさんとやり取りをさせていただいていて、自分が作ったかどうかは関係なく、自分が思う良い作品を皆さんにお届けしたいという気持ちです。
――「歌詞が降りてくる」って良く言われますが……
う~ん、降りてくるのを待っているだけじゃ進まないと思います(笑)。皆さん意志を持って書いていると思います。日々のことを書き留めるネタ帳を作ってたりとか……するんじゃないですかね。
――家入さんもネタ帳あるんですか?(笑)
私はネタ帳ではないですけど、日頃から空想がすごく好きなので思ったことは書き留めています。

――今後挑戦したいことはありますか?
表現することが好きなので、もっと幅を広げていきたいです。10代から音楽しかないって生きてきて、その気持ちは変わらないんですけど。エッセイを書いてみたいし、声を使ったお仕事……ナレーションや声優とか、もっともっと体験したいですね。
――2019年の目標は?
「丁寧な生活をする」です。10代から駆け抜けてきましたが、生活が痩せ細ると表現も痩せ細るので、これからは今まで以上に一作品を濃く豊かにしていきたいという思いがあって。なので、ちゃんと生活してますね、最近は。
――具体的に、どのような生活になったんですか?
以前はパパッとしかご飯を作らなかったんですけど、自分でスーパーに行って、食材を選んで、時間をかけて料理したり……。当たり前のことをちゃんと当たり前にする人でありたいなって。あとは、本当の贅沢って何か考えた時にお花が家にあるだけでこんなに空間って明るくなるんだ、と気づいたんです。食べ物や洋服にこだわるってある意味当たり前ですけど、お花は嗜好品な気がしていてそこが良いなって思います。
――最後に、ファンの方々へメッセージをお願いします
これからも自分らしい嘘の無い音楽をやっていこうと思っています。皆さんも……風邪に気を付けてください(笑)


撮影:秋葉巧、文:藤森 大輔・村松 千晶