――ドラマ『滅相も無い』出演が決まった時の心境や作品の題材を聞いた感想を教えてください
最初は加藤(拓也)さんの作品をもう1回やることが決まったと連絡をいただいて、前回ご一緒したのが2年前ぐらいで、その時から本当に素晴らしい監督兼脚本家兼演出家さんですし、出る場合に誰からも羨ましがられるような作品だったので、機会があればもう1回ご一緒したいと思っていましたが、自分が想像するよりも早く実現したことがすごく嬉しかったですし頑張らなきゃと思いました。その後に脚本をいただいて、また難解なものを作ろうとしているなと思ったのを覚えています。
――日本に巨大な“穴”が現れるというテーマが珍しいと言いますか
穴が開いたことは大きい出来事ですがそれが主ではなくて、穴が開いたことで作用された日本に生きている小さな街にいる人間たちがどういう判断をしていくのかが面白い作品というか、どういう過去を過ごしてきたのかが分かる話になっているので、話題性のある“穴”というものを加藤さんやプロデューサーさんたちが設定したのはすごく面白いことで、でも実際深堀していくと色んな意味で入口に過ぎないというか。だからそこもすごく考えられているなと思いました。

――既に撮影は終えられているとのことですが、手ごたえはいかがでしたか?(取材は4月上旬)
撮影期間でいうと4、5日で、キャストの皆さんが忙しい方々ばかりなので皆さんとご一緒する日はぎゅっと撮影したんですが、監督は親交がある加藤さんで、キャストの中にも元々友だちである(上白石)萌歌ちゃんがいたので、キャストやストーリーだけ見たらすごく気負いしてしまいそうでしたが、知り合いがいたので少しだけラフに、でも緊張もしましたし難しさもある、やりがいのある現場でした。
――森田さんが演じるのは帰国生の青山役ですが、どんな印象を持ちましたか?
年齢的にも 21歳の設定で自分と近い役で、加藤さんは演じられる役者さん本人に近い役をお渡ししていることが多いと会話の中で受け取ったことがあって。確かに青山は自分と離れた人間ではないというか、好きな物や習っているもの、出身は違いますが特別作り込むみたいなものではなかったので、青山という役が好きでした。私は普段お喋りなんですけど、青山は喋ることに対して悩んできたことや傷づいてきたことも多いという役なので、その辺の塩梅を調整するというか、考えがいがあるなとは思いました。
――自分に近しいところはありましたか?
人の顔色を窺いすぎるみたいな青山が持っている繊細な部分というか、家庭環境や生活環境の中で備わってしまった、仕方なくそれをしないと他の人とコミュニケーションを取れなかったという部分が自分も共感できるところでもありました。セリフの中で聞き覚えがあるとまでは行きませんが、あの話がここまで延長していたらこういうことを言われていたかなとか、身近に例えられるセリフが多かったです。

――役を演じる中で意識していたことはありましたか?
加藤さんの作品でよくあることですが、語尾とか喋りのテンポなど自分の喋り方が加藤さん寄りに変わっていくので、そこだけ脱線しないようにというか、加藤さんの色を潰さないようにセリフを言えるかは一つ一つ緊張しました。何気ない一文でも何回もやり直すことがあるので、セリフの言い回しが難しいし、気をつけたところです。
――親交のある加藤監督のことは、森田さんにはどのように映っていますか?
哺乳類で1番強い人間です……(笑)。すごく賢いし、頭がいいし、あまり喋らないと思いきやすごくたくさんの人に信頼も得ているし、作品も人柄も愛されている人なんだなというのは、今回色んなスタッフさんやキャストさんとの関わりの上で実感して、羨ましいなと思いました。そんなに才能があって、そんな態度で、そんな人気出ることある?みたいな(笑)。監督さんですし特段に仲が良いというわけではないですがご一緒できる機会が早くにあって、『わたし達はおとな』という映画でご一緒した時に、役が仲良し女の子4人グループの一員だったんですけど、その皆が加藤さんと仲が良かったんですよ。だから私も、年齢は下ですけど同じノリでコミュニケーションを始めていったので、友だちみたいな雰囲気でついつい話すことがあります。すごく脚光を浴びるべき人だなと思いますし、もっともっと面白い作品を作る人なんだなと思って憧れています。
――中川大志さんや染谷将太さん、古舘寛治さんといった幅広い役者の方々との共演で、お芝居をする中で刺激を受けたことや学んだことはありましたか?
刺激だらけでした。全員とご一緒できたのは1日だけで、その中ですごく打ち解けることは期間が短いので物理的には無理ですが、皆さん本当に色んなところで活躍されているので、気を遣ってくださって優しかったですし、ご自身がメインの時に集中されている姿勢ややり方を全員分1日で見られたのがすごく贅沢でした。皆さんが本番前をどう過ごしているのかなかなか見られることがないと思うので、しかも今第一線で活躍されている方々だったので、私にとっては贅沢な時間で、楽しかったです。

――撮影現場で印象に残っている出来事はありましたか?
台本をすごく読む人や全然読まない人、スマホで読む人とかスタイルの違いみたいなのは印象に残っています。あとは、席が平原テツさんと古舘寛治さんが近かったのでその二人と話していました。最初は当たり障りのない話から、後半はセリフの覚え方の話だったり、1日の中で関係性が変わっていくのが顕著で面白かったです。テツさんや古舘さんはセリフを自分色に変えるのがあまりに達者で、ただただ演劇を見ている気持ちでした。
――本作は映像と演劇の手法を組み合わせて作り上げられていますが、普段のドラマ撮影との違いや驚きはありましたか?
ドラマを撮っている感覚がそもそもなかったです。撮り方とか美術とか、スタジオで撮影しているというのもあって何かしらのアート作品を撮っているみたいな気持ちで。撮影セットの中に劇中音楽を担当されているUNCHAINさんが映り込んでいたり、私で言うと真横で爆音でドラムを演奏されたりしていたんですね。それはすごく新鮮で面白い試みだと思うのですが、たまたま私は生演奏の中で演技することに慣れていまして、『アイスと雨音』という映画でアーティストのMOROHAさんが歌を歌っている横で演技したことがあって。他の方だったら興奮したりしたかもしれませんが、私はデジャブだなと思いながら芝居をしていたのは面白かったです(笑)。あとは、映像の中でカフェ用の壁のセットを組み立てるところから始めようとか、そういう発想が生まれるのも面白かったところです。