―――第4話では逃走している狩山と高架下で待ち合わせし、会話を交わす重要なシーンもありました
- あそこのシーンも大変でした(苦笑)。高速道路の高架下なので車の音が大きくて、その都合で声を張らなければいけなかったんですよ。でも近くに釣りをしている人たちがいるからバレないように、話の内容が聞こえないように喋らなくてはいけない、でも少し離れたところに座っている狩山さんには届かなきゃいけないというところで……。元々提示したお芝居もテンションとしてはやっぱり低くて、そうすると声が届かないので張るんですけど、映像にした時には騒音は入っていないわけだから、なんで大声を出しているんだろう?とならないか心配なシーンではありました。しかもそこに葛藤もだいぶ乗っかっていましたし、声を大きく出すと感情の機微が出しづらくなるので、そこも難しかったなと思います。
―――演じながら一ノ瀬さんご自身も葛藤を抱えていたんですね
- でもあのシーンはすごく大事で、南雲は償いの意味を込めて会いに来ていて、でもどうするべきか迷っていて、しかももう(大切なデータを)渡しちゃっているけどそれは狩山さんには教えないという、話しているうちに罪悪感がどんどん大きくなっていく、苦しいシーンでした。その後に絵里菜と話して、狩山さんが美味しそうにサンドイッチを食べているところに絶望の電話をかけるというのも心苦しかったです。
―――高架下のシーンで木村さんとお芝居に付いて何かお話しをされましたか?
- こういう風にしようという話は特にしませんでした。座る位置などに関しては話したりしましたが、木村さんもその場で生まれるものを大事にしているタイプの役者さんだと思うので、僕の芝居がどうとか、自分はこうやって言うからという擦り合わせは基本的には無くて。テストを重ねていくにつれて、共通認識みたいなものができあがっていった感覚でした。
―――実際に木村さんと共演してみた感想はどうでしたか
- まさかご一緒できるとは思っていなかったので、最初にお聞きした時はびっくりしました。取材の時に初めてお会いしたのですが、すごい優しく気さくに話しかけてくださって、早いうちに「颯」と呼んでくださいました。撮影の最初が地方だったというのも大きくて、2泊ぐらいしたので木村さんと竹内(涼真)さんとご飯を食べさせていただいて、その時にプライベートの話もできたので、変に緊張しすぎずに、良い関係性になれたのかなと思っています。この機会が無かったらまだ緊張がここまでほぐれてなかったかもしれません。南雲が狩山さんに対して発する言葉が結構フランクなところがあるなと感じ、その関係性を劇中で表すのも大事だと思っていたので、最初に打ち解けることができて良かったなって思います。
―――このインタビューが公開されるのは最終回目前となります。見どころや楽しみにしてほしいところを教えてください
- 毎話どんでん返しの繰り返しで、最終的に狩山さんは誰を信じるのか、誰が狩山さんを助けてくれようとするのか。狩山さんは真相を世の中に伝えることができるのかどうか、そこも含めて僕もまだ全く分かりませんし、楽しみにしているところです。全ての人間が白なのか黒なのかというところがまだはっきりしていない状態だと思うので、予想しながら楽しんでいただけたらなと思います。南雲もベッドから起き上がっているのか、笑顔が見られるのか、楽しみです。
―――ここからは一ノ瀬さんご自身についても。前回インタビューに登場したのが2019年6月でしたが、約5年経ちご自身で成長を感じる部分はありますか?
- 自分が合っているのかどうなのかという時に寄り添ってくださる監督やスタッフ、視聴者の方々に支えられて、少しずつ堂々と演じられるようになってきたかなと思います。自分がやったことが認められるかどうかという不安はありつつも、とにかくまずはやってみようっていう思い切りがだんだんついてきて、変な緊張というのは少しずつ取れてきている気がします。
―――当時は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で俳優デビューした直後でもありました
- 戦隊の時は、めちゃくちゃ緊張していてそれがマイナスな方に行っているなと感じて、自分らしさがあまり出せていないかなと思うこともありました。それが色々な作品に出演させていただくうちに、良い意味で緊張に慣れて度胸がついて、自分らしさを出せるようになったかなと思います。最初はめちゃくちゃ緊張していて、緊張しているように見えるところから始まって、隠すのが上手くなっている状況から、色々経験して良い緊張感を持って仕事ができるようになりました。
―――ありがとうございます。最後にファンの方々へメッセージをお願いします
- いつも応援してくださってありがとうございます。6年目にして色々な役をやらせていただきましたが、本当に色んな作品で知ってくださって、でもいつから知ったとかは関係なく、僕に興味を持ってくれて応援してくれているというのはすごくありがたいなと思います。この6年間、一つ一つやってきたことがそれぞれ意味のあることで、そのお陰で皆さんと出会えたということがすごく嬉しく感じます。いつも皆さんからのコメントやお手紙に本当に救われていますし、お会いするたびに皆さんからお力をもらっています。ファンの方々に応援してもらえる、励ましのお言葉をいただけるということが、このお仕事のやりがいの結構な割合を占めているんですよ!だから、皆さんは僕がこの活動を続けていく上で欠かせない存在なので、これからも応援していただけるとすごく嬉しいです。僕自身も皆さんに会える機会をできる限り作れたら良いなと思っていて、8月にはファンイベントも開催するのでぜひ会いに来てください!会いに来られなくても、僕は気持ちを伝えていくので、皆さんも気持ちを伝えてください。これからもよろしくお願いします。
撮影:秋葉巧