――ドラマ9『能面検事』への出演オファーをもらった時の率直なお気持ちを教えてください
まさか23歳の自分に検事もの、事務官の役をいただけるなんてという驚きと、大西流星でもやっていいんだという嬉しさはありました。学生役はたくさんやってきたんですけど、だんだん大人になっていく中で、お仕事ドラマをやらせていただく機会が増えてきて、成長してきたんだな、大人になってきたんだなという実感がありました。
――原作や台本を読んだ感想はどうでしたか?
『能面検事』というワードがすごく強くて、一体どういうことなんだろう?というところから読み始めたんですけど、その名の通り、上川(隆也)さん演じる不破検事が、表情一つ変えずに、誰に対しても感情を動かさずに事件に向き合っている姿がすごくかっこよくて。周りから、それこそ新人の事務官からは不思議そうな目で見られていると思うんですけど、事件を解決するためにそういった表情をしているのは、プロフェッショナルなのかなとも思います。ただただ事件を解決するドラマではなく、一癖あるような、面白い新鮮味のある作品だなと思いました。
――大西さんが演じる前田拓海の印象を教えてください
今回は関西弁でお芝居をするということで、今まで関西弁を前に出すような役柄はなかなか無かったので自分の中でも新鮮というか、持ち前の関西弁を活かせるという嬉しさもありながら、事件を扱う内容なので難しい用語がたくさん出てきて、撮影の中で苦戦はしているんですけど、その中で自分も成長できるのかなと感じています。
――事務官役を演じるにあたり、役作りとして行ったことはありますか?
今まで平和なドラマや恋愛系を見ることが多かったので、なかなか知識量が無い中で、検事ものや色んな事件を扱うドラマを見て、その中で若手事務官がどういう立ち回りをしているのか、先輩にずっとくっついている姿勢などは勉強しました。
――役を演じている際に気をつけていることはありますか?
普段は関西弁なんですけど、お芝居となると標準語しか話してこなかったこともあり、リハーサルをしている時に監督から「さっきこのワード、標準語になってたよ」と言われて、関西人としてなんてことをしているんだ!と自分で自分を叩きたいぐらいでした(笑)。それ以降は、マシマシの関西弁でいかないと、と思って、始まる前にアンミカさんみたいな関西弁ゲキ強タレントの方を1回、自分の中に召喚させて台詞を読ませる、というのをやっていて、台詞をコテコテの関西弁に変換しています。もしかしたら「大西、いつもより関西弁強くない?」と思われるかもしれませんが、多分そのせいです(笑)。あとは、役柄的にはすごく明るいキャラクターなので、自分の中でテンションを上げながら、お芝居に向き合っています。
――ご自身と役で似ているところはありますか?
先輩の背中を見て色々吸収したいという姿は、自分の立場的にはすごく似ていて、前向きに色々取り入れていこう精神も似ているのかなと思います。
――大人になってきた実感があるとおっしゃっていますが、大人っぽく見せようと意識している部分はあるのでしょうか
関西弁でお芝居をしてみると、役柄や内容の影響もあると思うんですけど、自然と声が低くなっている感じがします。“コテコテの関西弁”ってお父さんや先輩方もそうなんですけど、声が低い方が多いイメージなんです。もちろんキャピキャピした関西弁もありますが、今回、自分の中では低い関西弁になっています。明るい関西弁だと普段の自分みたいになる気がして、スイッチを切り替えるためにも、言葉が響きやすいように低くなっている感じがします。難しい言葉も出てきて、スーツも相まって、声帯まで締まっているのかもしれません。
――これまでは標準語の方がお芝居に入るスイッチになっていたのでしょうか?
台本を読んでいると、自然と標準語で頭の中で復唱されている感じがあります。今回の台本も、最初にいただいた仮の台本では関西弁ではなかったので、監督やプロデューサーさんとお会いするまでは標準語の役かと思っていて、標準語で読んでいました。なので、これは関西弁に変えないと!と、自分なりにこの関西弁だったら語尾が変わるな、と頭の中で変換したりして。お芝居=標準語という感覚がこびりついていたので、今回の役は自分の役者としての幅も広がるなと思いました。
――スーツでドラマに出られるのも新鮮かと思いますが、衣装面で普段のドラマとの違いはありますか?
スーツを着ると、ちょっと背筋が伸びるというか、キリッとした表情をしないと、と思いますし、髪の毛もセンター分けでさらっと爽やかな感じの役柄になっているので、自分の中では“ザ・爽やか公務員”という感じを意識しています。若手の事務官ですし、爽やかでいないと、と。普段スーツを着る機会が少ない分、あとはスーツのCMをしているので、しっかり着こなさないと、という気持ちです。
――大西さんのセンター分けも珍しいと思うのですが、ヘアメイクのポイントはありますか?
メイクさんと話し合って、こういう髪型もありだよね、と。普段の自分の感じとまた違い、表情も見えやすいし、よりスーツが似合う髪型かなとは思っています。
――リーガルミステリーということで、専門用語も出てくるかと思います。難しい用語を覚える工夫は何かされていますか?
台本にはふりがなが振られているわけではないので、スマホで辞書を引いて調べて、を繰り返しています。意味を調べて台本にメモ書きしないとパッと入ってこないですし、相手の台詞でも(難しい用語が)たくさん出てくるので、そこも全部調べないと内容がだんだん噛み合わなくなってくるなと。あとは、読み方やイントネーションは現場に行ってみないと分からない部分が多いので、そこは皆さんと話しながら確認しています。関西弁の講師の方もいらっしゃるので、確認の連続です。
――関西弁の講師の方がいらっしゃるんですね
観月ありささんは東京の方なので、関西弁をカットがかかるたびに確認されていて、自分よりももっと大変なことをされていると思って、関西出身者としてはリードしないとなという気持ちになりました。
――観月さんから関西弁のことでアドバイスを求められることはありますか?
あります。関西弁の講師の方もいるんですけど、その方よりも先に「こうですよ」と言っている自分がいて、仕事奪っちゃってる感じがして申し訳ないなと思いながら(笑)。でも、自分の地元の言葉でもあるから、そこは誇りを持ちながら、アドバイスみたいなことをさせていただいています。

Ⓒ「能面検事」製作委員会

 

――現場の雰囲気はどうですか?今回の現場は上の世代の方が多い印象がありますが、いつもより緊張するなどはありますか?
現場の雰囲気はすごく良いです。年上の方と話すのがすごく好きで、同世代と話す時も話は合うんですけど、やっぱり年上の方からはお芝居のこともそうですし、学ぶことが多いです。あとは、話していて聞き上手な方が多いのかなとも思うので、緊張ももちろんしますが、打ち解けるスピードは同世代より早いのかなと思っています。
――具体的にどういうお話をされているんでしょうか?
何気ない日常の会話もたくさんしますし、ロケ現場で犬が通ったら好きな犬の話が始まったり(笑)。オフの時はゆるい話ばかりしてます。ドラマではすごくシリアスな内容も出てくるので、そのギャップは激しいかもしれないです。
――上川隆也さん、吉谷彩子さんはどのような方ですか?
上川さんがすごくフレンドリーに色々話しかけてくださるんですけど、カメラが回り始めたら一気に表情が変わらなくなるのでびっくりするというか、どっちが本当の上川さんなんだろう?と思っちゃうぐらい、すぐ役に入られるので、すごい役者さんなんだなというのを改めて感じました。吉谷さんとはフランクに会話をする機会が多く、初めからお芝居がしやすく、優しく話しかけてくださって、息はぴったりだと思います!

Ⓒ「能面検事」製作委員会

 

――前田くんは不破検事の隠れファンという設定となりますが、どういったところに惹かれていると思いますか?
前田くんなりに、不破さんなら大丈夫、みたいな絶対的な信頼感がすごくあると思っていて、それって本当にすごいことだと思います。あとは自分も何か見透かされるんじゃないかと、不破さんに対して恐れる部分も少しあるのかなと思うので、そういった面白い上下関係が前田くんとしては背筋が伸びるポイントかなと思います。
――不破検事と前田くんが今後どのように絡んでくるのか、楽しみな部分ですね
前田くんも自分なりに動こうとしていたり、自分にできることはあるのかな?と考えたりするんですけど、不破さんは視野が広すぎて、360度以上あると思っていて、見えないものまで見えているんじゃないかという方なので、もしかしたら前田くんの行動を本能的に察知しているかもしれないですし、そういった部分ではすごく関わりが出てくるのかな?という印象です。
――上川さんとお芝居をする中で、印象に残っているエピソードはありますか?
シーン数で言うとまだ1シーンしか一緒になっていなくて(※取材は6月上旬)。でも、上川さんから「検事を扱う作品だから固くなりがちなんだけど、前田くんや仁科先輩(観月ありささん)の2人が関西弁で話すシーンは、少し作品として和むような、ちょっと力を抜いて見れる面白いシーンだと思うから、そこは頼みますよ」と言ってくださって。検事ものだからしっかり筋を通していかないと、と思っていたんですけど、コメディで楽しんでやってくださいと、その言葉があったからこそ、よりリラックスして面白いお芝居ができる気がして、嬉しかったです。
――今後の展開が気になります
現状では、まだ事件現場とかに足を運べていなくて、初めのほうでは感想を聞いたり、吉谷さん演じる惣領さんから「不破検事ってこういう人なんですよ」と話を聞いたりするシーンが多いんですが、だんだん話が進むにつれて、事件との距離感が縮まってくると思いますし、すごく楽しみで、ワクワクの方が大きいです。その世界により濃く入れると思うと、1つちょっと大人になった感覚になるのかなと思います。
Ⓒ「能面検事」製作委員会