――まずは、「ゆうばり国際ファンタスティック思い出映画祭」ヌーヴェル・エトワール賞 ベル・アクトル賞受賞おめでとうございます!トロフィーを手にしていかがでしたか?
ずっしりとしていましたね。グループ活動をしていていただいたトロフィーはありますが、自分に向けての賞は初めてなので、特別な1回目になりました。評価してくださった方がいるということは自信に繋がりますよね。あの時に役に向き合ったこととか、皆で作り上げた時間が、このトロフィーに思い出として凝縮されている感じです。しっかりと家に飾りたいと思います。
――映画『初恋芸人』で原さんが演じられたのは、売れないピン芸人・佐藤賢治です。どのように売れてない感じを表現されていたのか、お芝居の際に意識していたことはありますか?
自分に自信がなく、コミュニケーションがあまり上手くないんだろうなと思い、目をずっと見て話ができないとか、背中を丸めるような自信のない歩き方をするとか、嘘をつくと瞬きが多くなるとかは意識していました。漫才面では、猛練習でしたね。ハニトラの梅木さんが一緒に漫才をやる相手で、芸人さんなので「多分、賢治はこういう間の取り方はしないんだと思う」といただいたアドバイスを叩き込みました。そうすると、ちょっとずつ賢治の感覚が分かってきて、全部逆に行くというか、ツッコミが鋭く来てほしいところを全然鋭く行かなかったりして、計算して、梅木さんの力を借りてやっていました。
――賢治が実家に帰った時の走り方も役作りの一つだったのでしょうか?
そうですね。いつ転んでもおかしくないような、あまり手を振らない、つま先で蹴らず地面をべたべたと走る感じは意識していました。3パターンぐらい一人で練習として走った気がします。姿勢とかも鏡を見ながら考えました。
――夏目大一朗監督とのやり取りで印象に残っていることはありますか?
2、3回、監督と沢口愛華さんと本読みをやったんですけど、1回目は僕が思う賢治の声でやったら、僕は声が低い方なので、どこか自信があるように、どっしりとした賢治に見えるという話になって、じゃあ作り直してきます、となりました。声の高さでこんなにも見え方が変わるんだなと、役作りの一番最初だったので、一番印象に残っています。
――普段役作りをされる際は、最初からたくさん作って現場に入るほうですか?
できることは全部やります。でも共演者の方の雰囲気や、あとは賢治の部屋に実際に入ってみて、こんな汚い部屋で生活しているのかとか、どんどん自分で作る以外の外的要因で役が固められていく部分ももちろんあるので、撮影が進めば進むほどという感じです。
――予告でも感情が揺さぶられて涙するシーンも映っていますが、撮影を振り返っていかがでしたか?
「嘘ついてたじゃないですか」っていう理沙とのシーンですよね。あれは、監督にワガママを言わせてもらい、頑張って長回しでお願いしました。その台詞だけでは涙は流せなくて、目薬とかは差したくないので(笑)。1、2分前の台詞からちゃんとやりたいんですと話しました。1度リハをやって、リハからもう涙が出てしまったので、まずいと思って。何回もやるのは無理なので、何とか集中して、次の本番でOKテイクとなりました。その後もまたサイズを変えて撮って、という感じで、全部無事に泣けました。泣くことが正解とは限らないんですけど、この場合は、賢治は泣いても良いなと思って泣きました。
――俳優さんの中には涙を流すことが得意なタイプもいらっしゃると思いますが、ご自身としてはどうですか?
世間的には得意そうだと思われているんですけどね。タイプロ(timelesz project)の時もそうでしたけど、原はすぐ泣く、みたいな(笑)。得意なわけではなくて、感情がグッと入っちゃえばグッといきますね。タイプロは自分の人生がかかっているのでそうなるわけで、それぐらいグッとなる感覚を役でもやらなきゃいけないと思うと、僕はそこまでの準備をやらないと涙に繋がらないです。

©「初恋芸人」フィルムパートナーズ

 

――撮影の中で印象に残っているエピソードはありますか?
賢治が感情を表す時に怪獣になりきるんですよね。着ぐるみに入るのは別の方で、そのシーン自体は立ち会っていないんですけど、声はオンリーで録っていて、監督と話し合いながら録りましたが、「うわー!の違うパターンをちょうだい」と、その声の出し方は一番難しかったです。「もうちょっと苦しい感じに」とか。その箇所がたくさんあったので、1箇所で5個ぐらい録ったと思います。
――撮影では原作者の中沢健さんとも共演もありましたが、中沢さんはどのような方でしたか?
怪獣について語るシーンがあって、その熱量と説得力は誰よりもありましたね。作られていない、内側から出る熱量みたいなものがすごくて、さすがだなと思って見ていました。
――撮影中で嬉しかった出来事などありましたか?
因島で撮影が行われたのですが、撮影の最後のほうだったので割と時間がたっぷりあって、一人で銭湯に行けて、因島を堪能できましたね。因島はすごく派手な観光地というより、街、っていう感じがするんです。商店街のおばあちゃんの声や学校のチャイム、港の工事の作業音を肌で感じられて、賢治の実家がそこにある設定だったので、こういうところで育ったんだろうなというのを原として感じられたのは良かったですね。
――作品の中で好きなシーンはありますか?
ハニトラの梅木さんにベンチに座りながら相談するシーンがあるんですけど、同僚だからちょっと気を許せる瞬間みたいな、そこは賢治のギャップを見せられるシーンだと思っていました。同じ仲間には強く出られるような、人間らしさが良かったです。
――大変だったシーンがあれば教えてください
手に当たっちゃってカップラーメンをこぼすシーンがあるんですけど、あれをいかにわざとらしくなくこぼすか、そこは何テイクか撮り直しましたね。NGカットになったら絨毯がラーメンだらけになっちゃうので、まずは空にしてやってみたりして、緊張感のある一瞬でした。
――本作で描かれる賢治の初恋はもどかしさもありますが、キュンとするポイントはどういうところに感じましたか?
賢治にはもどかしさを感じつつ、ピュアが故の一面だったりもするので、気持ちを素直に伝えられなかったり、それでも必死にデートにこぎつけようとしたり、人に相談したりする感じが、経験が無いながらにピュアに恋をしている感じがキュンとしました。

©「初恋芸人」フィルムパートナーズ

 

――原さんご自身が最近もどかしいと思ったことは何かありましたか?
timeleszのメンバーの特に年下2人、橋本(将生)、猪俣(周杜)がお芝居に挑戦しているので、もっと聞いてきてくれよ!って思いました。
――アドバイスをしたかったんでしょうか?
したい自分がいますね。そこはガツガツ来てほしいですね。サクサクぐらいで終わっちゃったので、またチャンスがあれば伝えたいと思います。
――これまで多くの作品に出演している中で、演技のお仕事で大切にしていることはありますか?
役者をやる上で、その場に存在する、生きる、というのを目標にしています。それをやるためには、台詞が入っていて状況を理解している程度じゃ無理なことで、台詞が自分の中にちゃんと落ち切っていて、関係性も完璧に整理できていないといけないなと。僕は元々舞台畑だったので、1か月ほど稽古期間がありますが、映像では特にその日初めての役者さんとお芝居をしないといけない状況で、相手の出方も分からないまま役を作って現場に持って行かなきゃいけないという作業にまだ慣れない部分があります。でもそこを逃したくなくて、映像の中でもそこに存在しているような俳優さんはたくさんいらっしゃるじゃないですか。そういう人のほうが、見ている側もすごくのめり込めるので、そういう役者を目指しています。好きな俳優さんは杉咲花さんです。その場に存在できている方が好きで、お会いしたことはありませんが、杉咲さんの前に立って、台詞を交わすと、中途半端で行ったら一発でバレるんだろうなと思っています。
――過去に共演者の方に言われて、原さんの中で大きな意味を持つ言葉は何かありますか?
お芝居を始めた頃は、舞台がきっかけだったんですけど、最初は言い方とか外側とか演じるので、かっこつけちゃうんですよ。それを尾上松也さんと2人でご飯に行った時に「もっと自由にやってみれば?」とか「もっと振り切って良いよ」と言っていただいたことがあって。それは劇団新感線の舞台(劇団☆新感線『メタルマクベス』disc2)で一緒だった時で、特に新感線みたいなエンタメ色が強い舞台は、もっと振り切らなきゃというのをおっしゃってくださったのは、すごく印象に残っています。
大原櫻子さんとも俳優として仲が良く、映像も観てくれていて、半年前ぐらいに「もっと何もしなくて良いんじゃない?」と言われて、確かにな、と思いました。何かをしようとすると“演じ色”が出てしまうので、何もしなくて良いぐらい、それって落とし込んで行かなきゃできないことなので、そういう仲間たちからも刺激を受けて、まだまだ成長したいなと思っています。
――STARTO ENTERTAINMENTにも様々な先輩方がいらっしゃいますが、原さんの中で目指している人物像はどなたかいらっしゃいますか?
松岡昌宏くん。共演もしていますし、たまにプライベートでもお世話になっているので、あの等身大の感じがかっこいいなと思います。男気がすごくて、知らない分野が無いんじゃないかってぐらい頭も切れて、プロフェッショナルな感じで、皆が“兄貴”と慕いたくなるような存在はめっちゃ憧れます。
――松岡さんとは親交は深いのでしょうか?
3年前ぐらいに舞台に共演させていただきました。その時は俳優一本だったのですが、「年末の事務所のコンサートとか出たいんですよ」とか「コンサートやりたいんですよ」と相談していて、今思えば、唯一そういうことを話していた先輩かもしれないです。できないと思っているのに、本当はやりたいんですって弱みを見せた先輩です。
――初主演映画の経験が、timeleszのメンバーとしての活動にどのように繋がると思いますか?
主演映画で真ん中を張るというのは初めてですが、メンバーになってすぐのタイミングで、世の中には「timeleszで主演をやる人がいるんだ」と少なからず思ってくださった方も多いと思うので、それはグループに還元できる一つのことだと思います。撮影当時は俳優一本でやっていくと覚悟もしていた時期でした。でも、こうしてtimeleszのメンバーになれたことで、おそらく本来よりも何倍ものお客さまに届けられる作品になったことは嬉しいなと思います。