
2010年の俳優デビュー以来、数々の映画やドラマに出演され、2025年は、主演作『早⼄女カナコの場合は』をはじめ、既に3本の出演映画が公開されている人気俳優の橋本愛と、是枝裕和監督が主宰する映像制作者集団「分福」のメンバーとして、『真実』『ベイビー・ブローカー』『遠い山なみの光』など映像作品のプロデュースを手掛けている福間美由紀が登壇。『女性が導く日本映画のこれから』と題して映画ライター月永理絵の進行にて、トークセッションが開催された。
まず、福間が日本の映画業界における女性の監督、プロデューサー、スタッフの関わり方について、「肌感覚では女性スタッフは増えてはいるが、まだまだ意思決定層における女性の割合は低い」と現状を伝え、それに対して橋本は「私も福間さんと同じで、増えてきているとは思いますが、やはりまだまだ女性のプロデューサーは少ないと感じますし、私自身、女性の監督とご一緒したことがあまりありません。衣装部やメイク部は女性の方が多いという認識です。今後、意識的に女性スタッフを増やしていくようにしていけたら良いなと思います。是枝監督と以前お話させていただいたとき、女性スタッフが増えるような意志をもって現場を作っていらしゃる方がいるのは映画界の希望だな、と感じました」と俳優の目線でコメント。
近年の撮影現場では、労働環境や出産・育児への支援が改善されつつある点をあげた福間は、「以前の映画業界は長時間労働や力仕事が多く、男性向きの環境が続いていた印象があります。現在は映適(日本映画制作適正化機構)によってルールが整備され、デジタル化も進み、身体的な負担が軽減されてきました。女性スタッフにとって働きやすい環境が少しずつ整ってきていると感じます。シッター費用の補助や、女性が悩みや生活について話し合える場もできてきており、大きな変化だと思います」と述べた。また、橋本は「私も映適のルールが適用された現場に参加しましたが、労働時間が決まっていることで心身ともにとても働きやすくなりました。限られた時間で高いクオリティを目指すことで、以前よりも現場にエネルギーが生まれ、作品の質も向上していると感じました」と話していた。
福間は、職場における男女格差について「出産後、仕事に復帰できるか不安で、両⽴に自信が持てなかった時期がありました。男性はそうした不安なく働けるのではと感じ、夢や人生を考える上で、なぜ女性ばかりが選択を迫られるのかと悩みました」と語り、そのうえで「最近は子育てに積極的な男性も増えてきており、社会全体が良い方向に向かっていると感じます」と前向きな変化を述べた。
橋本は「男性同士の方がコミュニケーションが円滑に感じることがあり、自分が壁を感じる場面もありました」とし、女性スタッフの増加を望む気持ちを共有した。
また、福間の最新プロデュース作『遠い山なみの光』、橋本さん出演の『リライト』(6 月13 日公開)についても紹介。撮影現場の国際的な違いについて、福間はフランス・韓国・イギリスでの現場を例に制作環境の違いに触れ、橋本も「昨年ベルリンで撮影を経験し、労働時間が守られ週休二日制という働き方に感動しました。朝食をとる時間もあり、規則正しい生活が保障されていると感じました」と語った。
最後に福間は「作品の内容だけでなく、働く環境の両方をより良くしていきたい」と述べ、橋本も「映画業界にはまだ課題もありますが、希望をもって“映画を一緒に作ろう”と誘える時代になってきました。これからも未来のためにできることを続けていきたいです」と締めくくった。