
1960年9月20日に開業した映画館「丸の内 TOEI」が、東映株式会社本社の入る東映会館の再開発に伴い、2025年7月27日(日)に閉館となる。約65年という長い歴史のグランドフィナーレを彩る「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトとして、5月9日(金)から7月27日(日)まで傑作特集上映が行われている。
そして、7月24日(木)には『相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』の上映前に杉下右京役・水谷豊と亀山薫役・寺脇康文が登壇し、「相棒」の魅力や閉館迫る劇場への思いを語った。17年ぶりに二人揃っての登壇となった“相棒”コンビ。満員のお客様から「右京さん!」「薫ちゃん!」のコールで迎えられると、劇場版はじめシリーズの裏話まで語り尽くし、終始笑顔の絶えない舞台挨拶イベントとなった。
<オフィシャルレポート>
閉館までいよいよ残り3日に迫った丸の内TOEIに、あの“国民的名コンビ”が駆けつけた。
メインテーマをたっぷり堪能したなか、実に17年ぶりとなる水谷 豊と寺脇康文お二人での登壇。会場からは割れんばかりの歓声と拍手が沸き上がった。
水谷は「皆様、ようこそ『相棒』ワールドへ。警視庁特命係の杉下右京です」といきなり観客を「相棒」の世界観へと引き込む最高の挨拶から入るやいなや、観客席から「右京さ~ん!」と待っていたかのように、呼びかけが起こった。
そんな水谷への黄色い呼びかけに「それ、そ~れい!それそれ~い!同じく、亀山薫です!」と寺脇がすかさず反応。
MCが17年ぶりの登壇を歓迎すると、寺脇は「ただいま、そして“さよなら”。いや、本当に懐かしいですね。当時はたしか(客席の)後ろから出てきて、みんなとハイタッチしながら入ったんです」と話した。さらに、当時の舞台挨拶に来た観客が居るか問いかけると、チラホラ手を挙げる観客に思わず二人も笑みがこぼれ、寺脇から「17年前…2008年か~、怖い(笑)」と時の流れの早さに驚く一幕から、舞台挨拶がスタートした。
早速MCが役衣裳での登壇に触れ、“事件が起きるのでは!?”と投げかけると、寺脇が「(劇場から)出ないでください!!まだ!事情聴取してからです!」とコミカルにボケて、会場を和やかな雰囲気に包みこんだ。水谷は「とにかく相棒はですね…(ドラマが)始まりまして、シリーズになってから、我々には“映画を作りたい”という夢と目標があったんですね。ですから17年前、ここに実際に立った時に『本当に実現したんだ、我々の夢が』と思いましたね」と一つ一つの足跡を思い返すように、じっくりと想いを語ると、寺脇も相槌を打ちながら「感動しますよね」と当時の感情を明かした。
そして、今回上映される映画についての話題へ。8年間のドラマ放送を経て満を持しての映画化が決まった当時の心境について問われると、寺脇は「ドラマやってる時から、『これもう、テレビのスケールじゃないよね』って話していて、目標として『映画までいけたらいいですよね!』なんて話をしてたんですよ。それが形になって、こんな大きいスクリーンで観れたんでね、本当に感動しましたね」と明かした。すると、ここで初めて映画を鑑賞するお客様がいるかお二人から“捜査”が入る。寺脇から「今日初めて『相棒 -劇場版-』を観るって方!!」と会場中に問いかけに、最初は少なかった手の数が、次第に増えていく。この光景を見た寺脇が「どんどん増えていく…なぜ、今まで観ていない!」ともツッコみ、笑いが起きた。MCからの「(映画公開当時)生まれてなかったのかも」とフォローが入ると、作品の歴史を感じつつ納得したように頷いた。
さらに撮影現場での秘話について、水谷から「亀山くん、覚えてますか?」と質問すると、寺脇は「いっぱい覚えてますけど、自分のこととしては、(映画を)観てない方からしたらこれ、ネタバレかもしれないけど…」といきなりネタバレしてしまいそうな一幕に!ネタバレを阻止しようとMCからもフォローするも、寺脇は気にせず「隅田川に飛び込むシーンが僕にはあったんですけど、ボートからね。あの日は寒くて!(川から)出た後ブルブル震えて。暖房バンバン効かせた車の中でお昼ご飯食べようとしたら、割りばしが割れない笑 寒くて。カタカタッてなったのを覚えてます」と大変な撮影があったことを明かし、さらに続けて「豊さんはこのあと…炎の爆発シーンで、後ろからズバーンッ!…あ、すごいネタバレを(笑)」とフルスロットルなトークの途中で盛大なネタバレをしていることに気づくと、会場中が爆笑の渦に包まれた。ただ、こうなってはもう止まれないと悟ったのか「…その寸前に。ジャッキー・チェンがよくNGシーンの時にスタッフが集まるでしょ、あんな感じで『大丈夫ですか!?右京さん!!』って」と寺脇がトークを完走すると、「それ以上は…」と水谷からすかさず牽制が入り、二人の掛け合いを楽しむ観客にも笑顔が溢れた。
水谷にも撮影時の思い出を問いかけるが、「えっと…なんせ17年前ですからね~」とどのエピソードを語るか思いを巡らせながら、MCからのアシストを受けて思い出した水谷は「そうです!実は僕、中学の時に陸上部に引っ張られて、陸上部に入ったことがあったんです。そこが全日本クラスの学校でしたから国立競技場で走ったことがあったんです。そこに『相棒』で、それ以降初めて国立競技場に行ったので、みんなには当時言わなかったけど一人で、『ああ、ここ走ったな』とジーンとしていました」という裏話が初めて水谷の口から語られた。
そんな国立競技場での撮影には、寺脇も思い出すように「お客さんがいっぱいエキストラとして、応募して入ってくれてね」と映画のスケールの大きさを感じた当時を思い返した。
劇場版になってスケールアップした映画に対して水谷は「この大きなスクリーンで、ということはそれだけもうスケールも大きくなります。そしてこの大きな画面で我々も動かないとならない。これは大変なエネルギーなんですね。ただそれを表現する我々としては、『相棒』を映画にしたいという想いが何と言っても強かった」と思いを語った。
すると、突然思い出したように土曜ワイド劇場での2時間ドラマ撮影時のエピソードを思い出す水谷。当時ロケ先のビルの屋上から実際の月を見ながら「これいつか、映画になったらいいね」と言い合ったという秘話を明かし、水谷は「そこで夢物語のようなことを…いいね~」と四半世紀前の現場でのやり取りを感慨深げに振り返った。
そして今回上映される劇場版の封切も、ここ丸の内TOEIでの初日舞台挨拶だった。
17年前に丸の内TOEIに登壇した時の気持ちを問われると、寺脇は「感無量ってこういうことかなって感じでしたね。もちろん試写会とかで観てましたけど、皆さんの前で一緒にその時間を過ごせるのが夢のような。(映画を)やるんだ本当に、という感じでしたね」と目を輝かせた。さらにMCから舞台挨拶で実際に客席から感じる「相棒」ファンの熱量を感じられたのではという問いかけには、水谷も「まったくその通りですね。(熱量の高いお客様を)実際に目の当たりにして、その時は『こんなに相棒を観てくれているんだ』と実感しました」と語った。
そして、会場内には「右京さん」と書かれたファンお手製の団扇も見られ、観客から「右京さん」コールの声が巻き起こると、寺脇が「薫ちゃんは無いのかな?団扇は無いのかな?」と茶目っ気たっぷりに反応。これにはここぞとばかりに、ファンの想いも溢れ、沢山の呼びかけが二人に向けられた。
続いて質問は、『相棒』シリーズの物語に。ドラマの事件がいまやサイバー犯罪へと変化したことについて、水谷は「(時の流れを)感じますね。『相棒』は、思えば“大人がテレビを観なくなった”と言われた時代が始まりだったんです。我々はとにかく“大人を振り向かせたい”という想いを持っていて。それにはまず社会的であること、それとやはりエンターテインメントであること。そこから社会派エンターテインメントっていうことを言い始めたんです。そこにはいつも“今を生きていこう”ってそんな話を二人でしていたことから始まったことを覚えていますね。いつもその社会が後ろにはあって、今に至っている。そう思うと、その時代時代が全部映っているはずなんですね」と当時抱いていた想いを明かし、寺脇は「25年の日本の歴史が、バックボーンにあるということですね」と添えた。
そんな経緯を経た映画がその後300万人動員を記録した記念で行われた当時の大ヒット御礼舞台挨拶で、お祝いのケーキが壇上にあったことに話が及ぶと、寺脇はすぐさま「覚えています。(舞台の)真ん中にデカい、ウェディングケーキみたいなのがあって二人で挟んで写真撮った覚えがあります」と話し始めると、「…?」と訝しげに寺脇の顔を見る水谷の姿が。さらに、MCから当時のコメントを読み上げるも水谷は「僕がですか?そんなこと言ってましたか笑」と、まったく覚えていない様子。ただすかさず、「…嬉しかったですね」と水谷が話を合わせると、これには会場に集まる全員が大爆笑に襲われた。
そのままの流れで、全国津々浦々35回にわたる舞台挨拶をやったことにも話が及ぶと、水谷は「ええ、回りましたね、やりましたね。…信用されていない笑」と、さきほどの大ヒット御礼舞台挨拶での一幕の記憶がなかったことを受けて、自虐気味に一言。これには寺脇も「覚えてないんじゃないの~?」と、会場の気持ちを代弁するかのように水谷をイジった。
ただ、各地方での盛り上がりについては水谷も「覚えてますね。どこへ行っても温かく迎えてくれて。こんなにも『相棒』が喜ばれているんだって思いました」と力強く話した。「やはり実際、我々撮影と画面の中だけですからね、こういう(お客様とのやり取りは)初めての機会でしたから」と全国の「相棒」ファンの熱量の高さを思い返した。
そして話をしている最中に思い出したのか、シリーズ開始当初のエピソードを話した。「始まったとき右京のキャラクターが嫌な奴だったでしょ。近寄りがたいというか。ですから、ロケ先で『あ!相棒相棒!』って気づかれた時に、みんな寺脇の方へ行くんですよ」一般の方が集まったことを今でも悔しいと嘆いた。
また、水谷の役柄イメージが強いエピソードとして、寺脇は「いまだに周囲から、知り合いから『水谷さんって右京さんみたいなああいう人なの?』って言う人がいるんですよ。それだけ右京という役がね」と水谷に投げかけると、「(自分の中に)居るんですよ」と自信ありげに語り、続けて「かつて『熱中時代』のあの頃を見ていた人はね、『昔はあんな人じゃなかった』って言うんだよ」とまたもや会場を沸かせた。これには寺脇も「(水谷は)やる役やる役がもう、その時の一番をクリアしていて、ヒットヒットヒットヒット(の連続)でね。上回ってくるから」と称賛した。
一方で、水谷は自ら「でも最近は右京もだんだん、普通になってて」と話し、また寺脇も「でも本当に、ロケを見に来てくださった方々にも右京さんは『行こう』と握手したりお話したりしていて、神対応って書かれてました笑」とコンビで親近感をアピールした。二人から語られたエピソードから、世の中にも右京の変化が届いていることが垣間見えた。
ここから水谷の記憶が冴えわたり、現場でのエピソードトークを展開。水谷は「『相棒』って、前後編でやることがあるじゃないですか。あれが始まった頃って顰蹙をかっていたの覚えてる?亀山くんとロケ撮影で遭遇した視聴者の方に『ねえ、こないだ「相棒」観てたらさ、続きだって言うじゃない。ひどいね相棒!もう観ないよ!』って本当にそう言われたんです。そんな方が最初のころは何人かいらして」と、ドラマ放送している当時に事件が2話にまたいで放送されることに対してロケ先に視聴者の方から不満をぶつけられたエピソードを明かし、縦横無尽に壇上で自ら再現し会場中に笑いが巻き起こった。ただ続けて、水谷は「それもだんだんそのことも楽しみにしてくれるように、みなさんがなってくださって」とファンへの感謝の気持ちを語った。
会場内も当時の熱気に包まれる中、続いては17年ぶりにコンビ復活となったお二人へ心境の変化を伺うと、寺脇は「いやもうそれ以前に、俺が亀山で帰ってくるとは微塵も思ってないですから。その時に豊さんからお電話でそのお話をいただいたときにびっくりして青天の霹靂ってこういうことかとなりましたし、『これ(サルウィンから)帰る?亀山としてですか?(電話口の向こうにいる水谷に)あなた本当に豊さん?もう60歳になりますけど大丈夫ですか?』」と復帰の話が来た時の逸話を明かした。さらに、寺脇が亀山を若々しく演じているというマネージャーからのタレコミに対して「なんか亀山が下りてきていて『お前、身体鍛えろ!このやろう!こんなんじゃ使えないじゃないか』」と自身を鼓舞していることを明かし、「あと、20年くらい(一緒に)やってください」と水谷に頭を下げるアツい展開に、拍手が沸き上がった。
そんな亀山の復帰には、水谷も「14年ぶりの出会いの回が『どんな出会いするんだろう』と思っていたんですよ。そしたら、脚本がね大げさでもなくて、14年ぶりの再会なんてドラマティックにしたがるじゃないですか。だけど全然ドラマティックじゃなくてサラッと会うんですよ。これがもう素晴らしい脚本で」と絶賛。寺脇も「普通でしたもんね、しかも割と早い段階で『右京さん!亀山薫です!』ってね」と亀山を演じると、水谷も応えるように『分かってますよ』と右京を実演。これには、客席から歓声が沸き上がった。
舞台挨拶も終わりの時間が迫る中、寺脇は昨年亡くなった西田敏行とのエピソードにも触れ「右京さんとの二人のシーンがすごい良かった。僕撮影現場で見ていて、すっごい覚えています」とグッと想いを伝え、水谷も「西田さんは長い間存じ上げていたんですがカメラの前で二人で立ったということがずっと無かったんですけど、この『相棒』の劇場版で初めて二人でお芝居をして、1回だけでしたけどもとてもご一緒できてよかったですし、またこれを今日みなさんに観ていただけるというのがとても嬉しいですね」と思いを馳せた。
最後の質問として改めてお二人へ「相棒」の魅力を伺うと、寺脇は「そりゃもう、右京さんですよ。それに尽きますよまずは。僕は豊さんに憧れて役者になったんですから。その方とこうやって共演できている嬉しさと驚きがあります」と気持ちを水谷に伝えると、水谷は、寺脇が三宅裕司主宰の劇団への入団オーディションで自身のモノマネをしたエピソードに触れ、寺脇も「はい、三宅さんの前で『あ~らららら、校長先生!』ってモノマネをして、それで受かったんです。ありがとうございます!!」と一礼。これに水谷は「良かったです、お役に立てて」とリアクション。さらに「相棒はバディもので、それまでにもいろいろとあったけれども、(寺脇と)初めて仕事をしたのが『刑事貴族』でね」と振り返り、寺脇も同じ記憶を辿るように「僕、正確に覚えてます。『7年くらいしたら、また一緒にやればいいじゃない』って豊さんと別れて。それで『相棒』が始まったのが7年後なんです」と逸話を明かした。水谷は「本当にそうなんです。二人でバディものをやろうと思った時に、二人の中では杉下右京と亀山薫というイメージがもうあって、そして脚本が見事だったんです。もう一回したいね、と思っている中で脚本、演出、監督、キャスト、皆が揃った中で始まれた作品だった」と語った。さらに寺脇も「豊さんがいつも仰るんですけど、『誰とやるか、何をやるか。この二つが大事だよ』と。その時はビシッと揃いましたね」と大人気シリーズの誕生秘話を明かした。
そしてトーク後に行われたフォトセッションでは、水谷が後ろ手を組み寺脇がサムズアップでお決まりのポーズで応える。さらに閉館が迫る劇場へ“さよなら”の意味合いを込めて、手を振る仕草で写真撮影を行っていると、観客から「右京さん!」コールが続出!コール&レスポンスが飛び交う、熱量の高いフォトセッションとなった。
最後に、閉館する丸の内TOEIへの想いを問われると、寺脇は「この劇場は、公開してから実はこっそり一人でも来たことがあって。そんな思い出のある劇場で今日、また最後にみなさんに観ていただけるということで、最後までごゆっくりお楽しみください!本日はありがとうございました!」と述べ、水谷は「どなたかが仰った名言に『記録よりも、記憶に残る』という言葉がありますけれども、この丸の内TOEIそして『相棒』がみなさんの記録よりも記憶に残っていただけたらと思います。今日はありがとうございました!」で締めくくり、ファンとの一体感に包まれながらイベントは盛大に幕を閉じた。
提供:東映株式会社