佐々木蔵之介がプロデュースする“Team申”にとって、11年ぶりの本公演となる『君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』は、2020年に放送されたテレビドキュメンタリー番組『中国王朝 英雄たちの伝説』にて、佐々木蔵之介による中国ロケが発端となり上演することが決まった。

「緊急事態宣言中、集まっていただき本当に感謝しております」と挨拶した佐々木。
本作品を上演するにあたり、雍正帝の魅力として「雍正帝の生き様を見ていると、暴君だけどもなんともユニークな独裁政治をしていて、これは演じてみるのも面白いと思いました」と話し、「中国では広い国土でたった一人の皇帝が全てを決める独裁政治。雍正帝は頂点にいながら、地方の末端の役人と手紙のやり取りで1日20時間かけて、13年で過労死して死んだ。そして趣味がコスプレ。手紙のやり取りもずっと本ばかり読んでいたから言葉が汚い、でもユニークだったと、色々聞いていると面白くて、ただの独裁ではなくすごいことやっているなと思ったのがきっかけです」と熱く語る。

前述のドキュメンタリー番組のディレクターであり、今回初めて戯曲に挑戦することとなった阿部修英は、当初「演劇にしようなんて微塵にも思ってなくて、ロケの最後に声をいただいた時は腰が抜けるぐらい驚きました」と明かした。

演出の東憲司は、「この作品は現代の日本とマッチしている」とし、「コロナ禍においてもリーダー論とかが問われている中で、もし実際に今の日本に雍正帝がいたらどうなるかを考えながら稽古をしてきた」とコメント。

佐々木と舞台では初タッグとなる中村蒼が演じるのは、雍正帝と直接対峙する地方官・オルク。難しい役どころではあるが、「蔵之介さんは目の奥に鋭いものを持っていて、勝手に試されているような感じがしています。雍正帝とオルクの関係性は、蔵之介さんの眼力のお陰で自然と作っていけたかなと思っています」と告げると、「パワハラやん!」と思わずツッコむ佐々木の姿があった。

これまで様々な役柄を演じてきた佐々木だが、中国の皇帝を演じるのは初めてとなる。役作りについても、普段とは異なり、役が決まってからその人物についての情報を得てキャラクター造形をするのではなく、ドキュメンタリー番組のロケを通して雍正帝に関する現場を既に全部見て回っている。「(ロケの経験が)血肉になっていて、今までと違う感覚です」と話した。

最後に、お客様へのメッセージとして、中村は「僕は雍正帝という人物はどんな人なんだろうというところから入って、自分の目で見てこういう人だったんだって最終的にたどり着きました。お客さんも同じような目線で舞台を見ると思いますので、オルクと共に雍正帝の謎や魅力に迫って歴史の目撃者になってもらえればいいなと思います」とコメント。

佐々木は「タイトルが『君子無朋』で、皇帝には兄弟家族がいないと言っているんですね。彼がそれを掲げて一国の未来を切り開いていくその覚悟と孤独をぜひご覧いただければと思っております。そしてその彼の覚悟に付いてきた、今を見つめて先をどうしたらいいか戦い抜いた役人たちの話です」とし、「演劇を観に劇場に来るのは日常ではなく非日常を観に来ていると思います。愉快なお芝居が出来ましたので楽しんでいただけたらと思います」と会見を締めくくった。

東京公演は7月17日より東京芸術劇場 シアターウエストで開幕となり、その後、仙台、石川、広島、福岡、長野、新潟、京都と、各地で上演される。

<あらすじ>
18世紀の中国。主人公は歴代約200人の皇帝の中で最も勤勉、4時起床、24時まで1日20時間働き続け、「過労死」したと言われる清の雍正帝(1678-1735、在位1723-1735)。その駆け抜けた13年の治世、紫禁城に暮らした皇帝で 唯一玉座に座ろうとせず、執務室に籠って、中央のエリート役人を無視して、地方の末端役人223人と2万通におよぶ手紙をやり取りし続けた。手紙にあふれる、およそ皇帝には相応しく無い罵詈雑言と叱咤激励の嵐。パワハラなどという概念を吹き飛ばすユーモア。
彼ほど生々しく国を導いた皇帝はいない。彼と役人とのスリリングでスピード感あるやりとりを再現し、さらになぜ雍正帝は過労死するほど働いたのか、人生の鎖となった「謎」も解き明かしていく。