
井上が演じる横沢公輔は、新聞記者であり、何かとりんのことを気に掛ける。自分の信念に従い、後先考えずに行動してしまうところがある。
甲斐が演じる小川吾郎は、陸軍二等軍曹。帝都医大病院に入院する友人・陣内清の見舞いに訪れた先で、看護婦として働く直美と出会う。直美の働く姿に感銘を受けた吾郎は、「友人が退院した後も会ってほしい」と直美に懇願。2人は、時折会ってたあいない話をする仲に。直美にますます心ひかれた吾郎は、ついにプロポーズ。結婚を決めた2人は、田之上屋でささやかな結婚披露宴を開く。やがて直美が妊娠。いつ戦地に向かうことになるか分からない吾郎は、我が子に「明」と名づける。やがて出産を待たず出征した吾郎は、戦地で負傷。多江のいる広島の陸軍病院へ後送されるが、もはや手の施しようがない状態だった。
最期は、直美につけてもらった軍服のボタンを多江に託し、息を引き取る。
<甲斐翔真 コメント>
――小川吾郎という役柄はどんな印象ですか。
吾郎のようにまっすぐに人と向き合える人物は今も明治の時代も多くはないのではないかと感じます。現代よりも男女の認識のずれや、日本と海外の考え方の違いなどがある時代で、吾郎は素直に曇りなく人を見ることができる人。美しい人間だなと感じますし、僕もそういう人間でありたいなと思わされました。軍人だから偉いとかお国のために働いているからすごいとかではなく、仕事を自分の居場所にしながら、正直に生きている人というイメージです。
吾郎のキャラクターについては「軍人ぽくなりすぎないように」と演出からのお話もありましたので、軍人であるときと一人の人間であるときの違いは意識したつもりです。
当時の軍人は、国を守ることが家族や大事なものを守ることであると考えている。もちろんそのことは踏まえつつも職業にあまり引っ張られず、まずは一人の人間であるということを大切にしようと思いました。

――直美を演じられた上坂樹里さんの印象は?
初めてお会いしたときはすごく可憐(かれん)でかわいらしい方という印象を受け「この人と夫婦になるのか…。すてきな方だな」と思いました。
そのあと、ご一緒すればするほど、すごく芯がある方という印象が加わっていきました。
僕のなかで直美という役は上坂さんに“当て書き”されているようなイメージ。ご本人は役作りに苦労したと話していましたが、『風、薫る』で直美を演じるべくしてこの世界に入ってきたのではないかと思うくらい、役に説得力があると感じていました。
吾郎の人生の佳境、重い空気をまとったシーンを撮り進めるなか、阿吽(あうん)の呼吸みたいなものができていき、「かけがえのない関係性を築けていた」と感じながら、撮影できました。
上坂さんには役作りの面でとても助けられましたし、撮影の合間のたわいもない会話が演技に生きている感覚がありました。
吾郎は直美という存在に出会い、最初は女性としてというより人としてかっこいいと思った。信念を持った彼女を目の当たりにしたとき、心が素直に動き、どっぷりとほれてしまったのだと思います。

――残された直美そして明に吾郎が伝えたいことは?
明については、生まれる前ですけれども、吾郎は出征するときに「直美を頼んだぞ」くらいのことは思っていたのではないかと想像します。
自分にもし何かあったら、これからは明が直美のことを導いて、居場所を作ってあげてほしいと思っていたでしょうし、直美にとって明という存在が救いになればいいと願っていたはずです。
残された直美に伝えたい言葉はなんだろうな……。やっぱり「怒らないでね」かな(笑)。「帰って来なかったら許さないから」と言われましたし、本編で吾郎も「怒られそうだ……」と言っていますしね。「ごめんね」よりは「怒らないで」という言葉が、直美と吾郎らしいかなと思います。






