音楽劇『浅草キッド』は、ビートたけしがかつて師匠・深見千三郎と出会い、浅草・フランス座で下積み生活を過ごした青春時代と、苦楽を共にした芸人たちとの生き様を描く自伝小説「浅草キッド」(講談社刊)を原作とする舞台作品。
演劇界のみならず映像の世界でも時代を牽引する福原充則が脚本・演出を手掛け、名曲「浅草キッド」や本作オリジナルの楽曲により、芸に生きようとする人々の心情を音楽劇としてより濃く表現する。

主演・武役を務めるのは、本作で初の音楽劇に挑む林遣都。青年・武の人生を決定づける師匠・深見千三郎役を務めるのは山本耕史。更に、武の先輩芸人で裏の顔を持つ高山役に松下優也、上昇志向が強いが憎めない性格でのちのビートきよしとなる兼子二郎役に今野浩喜、後輩芸人で、コンビを組むも武へのコンプレックスから次第に悲劇へ突き進むことになるマーキー役に稲葉友、作家志望でフランス座の人々を俯瞰で見守る井上役に森永悠希、人情味溢れる深見の妻・亜矢役に紺野まひる、武が深見に弟子入りするきっかけを作るフランス座のチケット売り場で働く塚原役にあめくみちこと、豪華出演者が結集した。

公演初日を前に行われた取材会には、林遣都、松下優也、今野浩喜、稲葉友、森永悠希、紺野まひる、あめくみちこ、山本耕史が出席。

意気込みを聞かれた林は「1ヶ月半ほどの稽古を重ねてきましていよいよ明日初日を迎えるんですけども、福原さん率いるカンパニーの皆と力を合わせて、信じて、助け合ってやるしかないかなという思いです。頑張ります」と気合を入れた。

松下は「めちゃくちゃ楽しみで、出演していないところも稽古で見させてもらって本当に面白いシーンばっかりなので、お客さんがどういう反応をしてくださるのかが今一番楽しみです!」とコメント。

「林くんについていきます、ということでやらせていただこうかなと思っています」と語った今野は、続けて「本日は、ちょっと寒くなってきましたね?皆さん寒い中本当に寒暖差が急に…だっていつまで夏が続くんだろうと思ってたら急にね、寒くなってきて……」と話が脱線すると記者によって途中で遮られる一幕が。

「このあと話しづらい」と笑いながら困惑していた稲葉だったが「武さんを演じる遣都くんの稽古場での姿を見て、僕は後輩芸人の役なんですけど、どんどん惹かれていく瞬間があって。良いものが皆さんと一緒にお届けできればなと思っています」と語った。

森永は「僕は舞台に立つのがすごく久々なので、とにかく皆さんの作り出す波に必死について行こうと思っております。食いついていきながら、楽しんでいけたらなと」と笑顔を見せる。

紺野は「出演者は20数名なんですが、50人ぐらい出てるんじゃないかなっていうくらい常に舞台が賑やかで、一人一人が濃く演じてらっしゃって、瞬きの時間も惜しいくらい、幕が降りるまで注視して楽しんでいただけたら嬉しいなと思っています」と見どころを明かす。

あめくは「キャストで最年長だと思うんですが、皆さんが大変パワフルなので、おばちゃんも必死でついていきながら、当時の浅草を楽しく作っていけたら良いなと思っております」とユーモアを交えながらコメント。

そして山本は、「まだ全貌がまだわかっていなくて、断片的に舞台稽古をしてこれから初めて通すということで、そういった意味で僕らも楽しみと同時に、あそこは大丈夫かな、ここはどう見えるのかなってはっきりしてない状態なので、要はちょっと稽古が足りてなかったってことなんですけど」と会場の笑いを誘う。

「そういうのって意外と皆が一致団結してわくわくするんですよ。そこにキュッと皆で力を込めて闘魂するんで、良いものになるんじゃないかなって。あとはどのくらいのスピードでやれば、どのくらいの体感とどのくらいの全体の時間になるのかなとか、トライしながら。衣装チェンジがものすごく多いので、そこも見どころではあります」とアピールした。

およそ1ヶ月半の稽古期間について、林は「皆やることが沢山あって、やってもやっても稽古時間が足らなくて。この1ヶ月半は本当にひたすら黙々と集中して、気づいたら終わる時間になってて、集中し続けたなっていう稽古場でした」と振り返る。
すると山本が今野に向かって「一番稽古足りてなかったよね?」と呼びかけると「人並みです」とタジタジになる今野の姿が。

師弟関係となる林と山本は今作が初共演となり、二人でタップダンスを披露するシーンも見どころの一つとなっている。
「人生で踊ったりしたことはほとんどなかったので、リズム感というところから教わらなきゃということで時間をかけて、全体稽古の前からタップと歌をやらせていただいて」と、1年半くらい前から作品の準備をしていた林は「稽古に入って耕史さんにお会いした時に僕が何ヶ月もかけてできるようになったステップを普通にできるようになっていて…。本当にタップ以外でも身体の部分で毎日感動させられたり。色々沢山教わりました」と語る。
山本も「すごいです、稽古中もどんどん上手くなっていくのが目に見えて」と絶賛。「曲中ももちろん一緒にやるところもあるんですけど、稽古場でやるのとバンドの音が入ってやるのはまた違うので、そこの微調整もできたら」と語った。

製作発表ではこの作品の話を聞いて一度企画書を置いた、と話していた林に「この役を引き受けて良かったか?」という質問が投げかけられると「もちろん」と即答し、「本番初日が近づく中で、(ビート)たけしさんを演じるって、よしこれでいいって思える瞬間って無くて、やってもやっても足りなくて。そういった存在ですので、そんな心境の中で、緊張感を楽しむことができる人ばかりの心強い皆さんと一緒にいることで勇気をもらってプレッシャーとか余計なものを背負わずにやっていけそうだなっていう気持ちでいます」と述べる。

さらに「今、(ビートたけしに)見てもらいという思いは?」と聞かれるも「全くないです(苦笑)。そんなに自信満々ではないので、たけしさんをやることに対して」と自信なさげ。しかし「でも福原さんが描く『浅草キッド』は見てもらいたいなと思います。たけしさんに対して、当時の浅草に対しての敬意や愛を感じる作品ですので。耕史さんの深見師匠はたけしさんに見てもらいたいなって稽古を見て思います」と話した。
そんな山本は「たけしさんは今でも大活躍されていますけど、深見さんはある意味ちょっと歴史上の人物ぐらいの存在なので、僕としては時代劇で実際の人を演じることに近いところはって僕の方はある程度エンターテイメントができるんですけど、林くんの武は、エンターテイメントも必要だけど、やっぱり”あのたけしさんなんだ”って見ると思うので、そこはすごい難しいしきっとプレッシャーになるだろうけど、僕が見てる分には今回の『浅草キッド』の中の武”っていう存在なので、考え直してみたら「たけしさんなんだ」っていう瞬間はあるのかもしれないけど、だんだん見ているうちに忘れていく感じがするので」と熱く語る。

改めて作品について、稽古を終えた手応えについて「すごく良い作品になっていると思います」と話す山本は「稽古が足りないというのはやってもやっても追いつかないっていうのが、それこそタップなんてじゃあ何年やってた人の役をやるんだろうと思うと足りるわけがないというか。日々変わっていくテンポ感やアイデアとかが日々出てくるから、アイデアが出てくるようなシチュエーションなんですよね。だからいくらやっても完成しない」と未だ未完成だと明かす。「本番でもいろんなことを試すだろうし、そういった意味ではいつになっても完成しないという意味で良い作品なんだと思います。完成しない作品って見てる方たちもそうだし僕らも色んなことを想像したり、その先を意識できるので、そういった意味でも良い作品になっていると思います」と期待を寄せていた。

製作発表で山本のことを師匠と挙げていた松下に、今回の稽古を通して教えをもらったことや盗んだことについての質問があがると「本当に耕史さんは稽古場で色々試されるので、スタッフさんも含め皆「今日は何言うんやろう」ってすごく楽しみにしているところもあって、耕史さんもおっしゃっていたように、大きな流れはあるんですけど、一つ一つの細かい部分は日によって自分も色々とアイデアが出たら試したいなって思う部分もあって、なのでそう言うところはすごい学ばせていただきました」と師匠・山本の影響を受けていたようだった。

最後に代表して林が「時間を取って見に来ていただいた方には、良い1日になったなって思ってもらえるように全身全霊でかましてやります!」と力強く宣言し、会見を締め括った。

音楽劇『浅草キッド』は、10月8日(日)から22日(日)まで東京・明治座にて上演され、その後10月30日(月)から11月5日(日)まで大阪・新歌舞伎座、11月25日(土)・26日(日)に名古屋・愛知県芸術劇場 大ホールで上演される。