
鬼才・佐藤二朗が映画にすべく執筆するがその過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、お蔵入り寸前となっていたオリジナル脚本が編集者の目に留まり、永田諒の作画によって漫画化した「名無し」。数奇な運命を背負い“名前のない怪物”と化した男の希望と絶望、そして狂気を描破するこのサイコバイオレンスは好評を博し、“映像化不可能”の烙印を覆し昨年10月、瞬く間に映画化が決定した。
自ら生み出したキャラクター“名無し”を演じるのは、『爆弾』(25)で冴えない中年男の皮を被った知能犯・スズキタゴサク役を怪演し、第49回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞受賞をはじめ、様々な映画賞を席巻している佐藤二朗。共演には、近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平、タレントの枠を超え女優、プロデューサー、実業家としても活躍するMEGUMI、同じ演劇畑出身の佐藤の熱望に応えて駆けつけた佐々木蔵之介が名を連ねた。そして『悪い夏』『嗤う蟲』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫監督が劇中に仕掛けられた謎とタブーに潜む深い闇をえぐり出す。見えない刃が光るとき、切り裂かれたスクリーンの向こうから、名もなき怪物の魂の叫びが日本を震撼させる。
本作で原作・脚本・主演を務めた佐藤が挨拶で口を開くと、「かわいい…」と呟いた観客に対して、「あんた、自分ちのリビングじゃないのよ」とツッコミながら、「昨日から公開になって、ありがたいことにたくさんお客さんが入ってくださっているみたいで」と喜びを語り、「5年前、二子玉に家族3人で行って、妻と息子がラーメン食ってる間、ダイエット中の僕はラーメンを食べれず、公園で家族や皆が遊んでいるのをボーッと見ているときに思いついた話なんですけど。一人でうじうじ考えてこしらえた作品が、たくさんのプロの人たちの力を借りて皆さんに見ていただける日が来たのが感慨深いです。今日はもうふざけません!ふざけたくなったら、(足を)抓ります!」と笑いを誘う。

公開を迎え、周りの人の反応を聞かれた佐藤は「“#映画名無し”で本当に濃密な感想がたくさん上がっていて、自分で言うのもアレなんだけど、本当にお褒めの言葉が多くて」と、反響の大きさに喜びが隠せない様子。「今日、Xで書いてきたんだけど、「山田太郎の凶行や周りのパニックを、対岸の火事に集まる野次馬のように楽しんでいた』という文があって、不謹慎を恐れずに言うとそれで良いんじゃないかなと思います。でも映画を見終わって劇場を後にした時に、大切なものに早く触れたい、抱きしめたいと思って家路についていただけたらなという思いでこの作品に携わりました」と話すも「うわ、これ完全に最後の挨拶だったな!」と後悔。
続く丸山は「人によって育った環境的なものは違いますが、重なる部分がある方も、何か感じてくださっている声はあったので、嬉しいです。この作品が皆さんに見ていただけるようになった意味が、そういうところに現れたので、僕も嬉しかったです」とコメント。

MEGUMIは「邦画史上、最も不細工なラブシーンにしよう」と臨んだ佐藤とのラブシーンの反響を「本当に汚かったと感想をいただきまして、私たちの願いが届いたんだと、とても嬉しく思いました。汚いって言われて初めて嬉しいです」と笑顔を見せる。

そして佐々木は「始まる前に色んな話を聞いて、『二朗さん、今回怖い役やられるんですね。『爆弾』も怖かったし、狂気ですね』と聞きながら、俺は今更何言ってんの?って思ってて。俺は25年前から、二朗は面白いけど狂気をもった芝居はやってるし、俺は知ってるぞ!と。その時から良い役者やなと思っていたので、というのを勝手に沸々と思って、そういう噂を聞いていました」と、佐藤の評判についてマウントを取っていたようだった。

作品にちなみ、自身の中に潜んでいる怪物についてを聞かれた佐藤が「2年前に戯曲『そのいのち』を書いた際に、「それを見に来た鴻上尚史さんが、Xに『(佐藤)二朗さんの芝居を見て、蜷川幸雄さんの言葉を思い出しました。蜷川さんは若い俳優たちに“心に怪物を飼え。決して安住するな”と言い続けました。でも、二朗さんの心の中には怪物がいて、それが暴れ出てこないように始終、ふざけているんだと思ったんです』と。自分では意識して無いんですけど、そうなのかな?と思ったという、今日一番まともな発言ですね!」と回答。
すると丸山が「確かに、劇中の何ものか分からない表情がバーンとスクリーンに映る瞬間があって、あれが大好きなシーンなんです。何か一つプツって切れた瞬間の目の奥が洞窟というか、怪物がいるからこそできた表現なのかな」と、劇中での佐藤の芝居の魅力を熱弁。

また、今回はほとんどセリフの無い役に挑戦している佐藤は、「『爆弾』でたくさんお褒めに預かって、公開時期も割と近く、両方ともたくさん人が死ぬ、そしてスズキタゴサクは喋りまくるので、どう差別化するかは監督やプロデューサーと打ち合わせをして、帰る車の中で、喋らないのはどうだろうと」と思いついたことを明かす。「それまでいくつか喋っていたところを全て“・・・”にして、どうしても言いたいセリフは長い間、人と会話してないから声帯が退化したようなイメージでおどろおどろしいような感じでやったんです。あとは『名無し』の世界観で、山田太郎は喋らない方が良いなと思った」と、喋らない役どころに手応えを感じたようだった。











