■豊臣兄弟との関係性の変化について
仲野(太賀)さんや池松(壮亮)さんと、お芝居について細かく話し合うことはほとんどありませんでした。話し合わなくても、自然に豊臣兄弟との関係性を演じられる感覚があったので。第31回(8月16日放送)で小一郎(仲野太賀)が市に会いに北庄城へやってくる場面は、もちろん楽しく話ができる状況ではありません。でも、本当に小一郎たちを憎んでいるわけでもない。立場を超えて、1人の人間として小一郎に抱いている友情なのか、それとも別の純粋な感情なのかわからないけれど、そうした思いが自然とこぼれ出る気持ちで演じていたように思います。その中でも、常に自分の中に信長(小栗旬)を置いていました。織田家を背負い、信長の思いも背負って生きている市の中には、今も兄が生き続けていると思うので、見てくださる方にその面影を少しでも感じていただけたら嬉しいです。

■茶々に重ねる思い
茶々を演じる井上和さんは21歳で、私も「篤姫」の撮影をしていたときが21歳でした。当時の自分と同じ年齢の井上さんを見ていると、いろいろと感じることがありましたね。茶々たち三姉妹を目の前にすると自然と母の気持ちになりましたし、彼女たちが私を母にしてくれたように思います。井上さんとお話ししての印象は、とても前向きに物事を捉え、何事も楽しみながら向き合える方だということです。そうした姿勢は本当に大切だと私も感じています。これからさまざまなことに挑戦されていくと思いますが、その成長を勝手ながら楽しみにしています。

■最後の夫・柴田勝家への思い
勝家さん(山口馬木也)は少女漫画のヒーローみたいでかっこよくて、本当にキュンとさせてくれる存在です。嫁いでからは、これまでのライオンのような勝家さんとはまた違った、市にだけ見せてくれるかわいらしさがあって、改めていとおしい人だなと思いました。きっとそんな勝家さんだからこそ、市も彼と人生を共にする覚悟を心の底から決めることができたのだと思います。山口馬木也さんご自身はすごく優しい方。真面目で一生懸命で、一緒にいてとても楽しかったです。現場には穏やかな時間が流れていて、ひとつひとつのシーンを一緒に積み重ねながら、みんなで作品をつくっている感覚があり、とても幸せな時間でした。

■今後の「豊臣兄弟!」について
仲野さんが最後まで走り抜ける姿を見届けたいです。長い期間、一つの役を演じていると、「どう演じようか」「こう見せた方がいいかな」と悩むことがあります。でも、感情の部分で迷うことはだんだんなくなっていくんです。仲野さんも「今はまったくないです」とおっしゃっていました。感情は自然に動いていくし、ご自身と小一郎の境目がなくなってきている、ともお話していて、私もその感覚は本当によくわかります。テレビで見ていても、仲野さんは小一郎そのものですし、池松さんも秀吉そのもの。感情がボロボロとあふれ出る演技は本当にすごいなと思いますし、同時に少しうらやましくも感じます。
「豊臣兄弟!」では、大河ドラマでしかみられない役者の特別な瞬間が、これからもたくさんあると思います。ぜひ最後まで温かく見守っていただけたらうれしいです。

大河ドラマ第65作で描くのは、戦国時代のど真ん中。強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡、夢と希望の下剋上サクセスストーリー。仲野太賀演じる主人公は天下人の弟・豊臣秀長(とよとみ・ひでなが)。歴史にif(もしも)はないものの『秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった』とまでいわしめた天下一の補佐役・秀長の目線で戦国時代がダイナミックに描かれる。