本作は、山崎育三郎、明日海りお、古川雄大という日本ミュージカル界を牽引するスター3人が、新作オリジナルミュージカルで待望の初共演を果たす。演出は小池修一郎(宝塚歌劇団)が手がけ、強力布陣で、日本発の和物オリジナルミュージカルを力強く立ち上げる。
原作は、雲田はるこによる戦前から平成に至る落語界を舞台に、人々の多彩な生き様を描いた大ヒット漫画。2016・17年にアニメ化、2018年にドラマ化され、いずれも大きな話題となった。

制作発表冒頭では、高座が設けられ1人ずつ挨拶する流れだったが、山崎が「ここらで一席」と古典落語の演目の一つである「野ざらし」を披露するサプライズが。「台本にないことをやらせていただきました。皆さんに楽しんでいただきたいと思っておりまして、このミュージカルの魅力をお伝えできればなと思っています」とユーモアを見せた山崎に続いて、明日海は「私も一席、と思ったんですけど。ちょうど三味線を練習していまして、今日持ってくれば良かった…」と残念そうに話すと、山崎からの無茶振りで日本舞踊を披露、そして最後の古川は落語演目の「死神」を披露するアドリブを見せ、会場から拍手が巻き起こった。

その後、場を整え、改めて3人へ話を伺うことに。
日本発のオリジナルミュージカルを作ることが夢だったと話す山崎は、20代の時に『サ・ビ・タ~雨が運んだ愛~』という韓国のアジアミュージカル作品に出演した際に韓国の役者やスタッフと交流する機会があり、「皆さんが声を揃えて言うのは『僕たちはもちろんブロードウェイ、ロンドン、ウィーンの作品も好きだけれども、この国のオリジナルミュージカルを世界に出したいんだ』という会話をされていて、それが自分の中ですごく衝撃的と言いますか。日本では『ブロードウェイの大作に出たいよね』っていう会話にはなるけど、『日本オリジナルを世界に出そうよ』と話題にはなっていなかった。自分がいつかやりたいと言った時に、人が集まってきてもらうために、自分自身を高めていくんだという想いでやってきました。なのでこういうタイミングで、昔から想っていることが実現できたことはすごく嬉しいです」と語る。

題材となる『昭和元禄落語心中』には、山崎は7年前にNHK制作のドラマで出演。「色んなドラマ作品に携わらせていただいた中で、最も苦しい、つらい思い出の方が多い作品ではありまして。当時助六を演じる以外に古典落語を9演目覚えなければいけないというので、ちょうどクランクインする直前までミュージカル『モーツァルト』をやっていましたので」と当時の苦労を振り返りながら「本当に苦しかったんですけど、色んな作品に携わらせていただく中で、作品自体が役者をその世界に誘ってくれる、引き上げてくれるエネルギーを持っている作品との出会いが何作かあって、この『落語心中』に携わらせていただいた時に、ドラマの撮影現場で自分がどうこうしなくても、この世界が助六にしてくれるという感覚があって。それは僕の中ですごく大きなことで、プラス落語を覚えて、現場で落語を披露する中で、自分の中でこれをいつか舞台にしたいというのが心の中にありまして。その想いをずっと持って7年経つんですけども、このお二人と作品を作るという話になった時に、僕はずっと自分の中で温めていた、日本で八雲をミュージカルで演じられるのは雄大しかないと。そして明日海さんのみよ吉が自分の中でイメージが湧いて、絶対素敵になると思って提案させていただいて、お二人も賛同してくださって、この話がスタートしました。もうとにかく想いがたくさん……良いんですか?まだ喋って」と熱い思いが溢れる山崎。

そんな熱い思いを受け、古川は「新しいものを作っていきたいというお話を元々聞いていたので、やっと実現するんだなという思いです。あとはこの事務所(研音)の3人でできるというのは僕にとっても大きいことですし、もちろん事務所にとっても大きなことになるんじゃないかなと期待しています。日本オリジナル、日本初演を作るということですから。日本の良さがふんだんに詰め込まれているので、ここから世界に発信していく第一歩というのは、そこに携われるのはすごく嬉しいですし、育三郎さんの思いも聞いていたので、力になれたらなという思いです」と頼もしさを見せる。

明日海は「初めて育様と一緒に取材を受けた時に、『事務所には雄大もいるから、一緒にミュージカルやりましょうよ!』とおっしゃっていただいて。よくそういうのって社交辞令でもあったりするじゃないですか。夢のようだけど、まさかないだろうなと思っていたら、数年経って話が動き出して、私もご一緒させていただけるということだったので、本当に夢のような稽古期間を過ごしております」と喜びを伝える。「『昭和元禄落語心中』という作品は、上演が始まってから、漫画原作やドラマやアニメを見させていただいたんですけど、助六さんと菊比古さんが、全然違う魅力の人の惹きつけ方、全然違う落語をされるお二人というのは育様と古川さんにぴったりで、稽古場にいてもお二人が挑まれていく姿がそれぞれで、本当に素敵でというのがピタッとハマった作品だなといつも感じています」と語ると、「そこは雄大様じゃないんですか?」と山崎から指摘され、「じゃあ雄大様にしますね」と微笑む明日海に「ありがとうございます」と恐縮する古川。
山崎と同い年だが「育様」呼びしている明日海から、山崎と古川の年齢差の話に。「1個差です」と頑なな山崎に対して、「違います。いつも1個って言われるけど学年で言うと2個違うので」と譲らない古川、そしてその間に「すみません、いつもこうなんです」と明日海が仲介に入る一幕が。

落語をミュージカル化しようと思った経緯について、山崎は「ミュージカルを普段やらせていただく中で、ブロードウェイのチームともご一緒させていただいて、その時に海外のスタッフの皆さんが『僕たちの作品をやってくれるのは嬉しいんだけど、日本の、日本人しかできないミュージカルは作らないのか?』とよく言っていただいていたんですね。それは僕もそう思いますし、僕ら日本人だからこそできる作品というのを作りたかった、というところもありました。落語を喋っている中で、落語と歌を歌うことは僕はすごく似ているというか、共通するものがあって。歌は音楽が流れて歌い出すと細い糸がずっと繋がっていくように、気持ちが途切れないように歌っていくのですが、落語も一度喋り始めたらその緊張感だったり、時に早く喋ってみたり引いてみたり、大きい声や小さい声、これはすごく音楽的で、長く落語を喋っていると歌を歌ってるのと同じような感覚になると。この時に落語から歌に自然に合流していくんじゃないかなというのが自分の中であって」と親和性を感じていたとのこと。
「この作品の中でも落語シーンから音楽に行くところももちろんありますし、2人の関係を音楽で表現している部分もあるので、『昭和元禄落語心中』と音楽というのがマッチするなと実際にやってみて実感しています」と想定した通りになっているようだった。

それぞれの役の話になり、演じられる上で大切にしたいことを聞かれ、山崎は「僕は色んな役と出会う中で、助六は一番本来の自分に近いなと思うところがあって」と話し、「すごく前向きでポジティブで、自分は観客のために落語をやっているんだ、お客様のためだと。そして時代と共に変化しなきゃいけないんだ、落語は、と。僕もこの時代と共に、エンターテインメントは変わっていくべきだと思っていますし、すごく助六の言葉に救われる部分があります。すごくパワフルでエネルギッシュに、男臭く、人間臭く、泥臭くいきたいなと思っております」と共感してる部分が多いとのこと。ただ、「一つ違うのは、不潔なところは違います。『臭い』って言われるシーンもあるんですけど、そういうのはちょっと苦手なので。すごく綺麗です」と笑いを誘った。

明日海は、自身が演じるみよ吉を「すごい可愛らしい面があって一途であって、でも腹が座ったところがある女性だなと思います。そして、女のダメな部分や脆い部分というのが味になっている、魅力的に映える女性だなと思っています」という印象を持ち、「そのみよ吉に、舞台版では辰巳芸者風情の、きっぷの良い感じを小池先生が強めに描いていたりしますので、お客様がどんな印象を持たれるのかなと。それが今は一幕を通した段階なので、二幕になった時にどう関係性が動いてくるかなというのは、私自身も今試行錯誤しながら挑戦させていただいております」とコメント。

古川は、「八雲はすごくクールで真面目で、ちょっとプライドが高いですかね。ちょっと影のある感じ。すごいストイックで黙々と稽古をする、真面目すぎる役ですね。彼独特の色気を助六に気づいてもらって、後押しされながらみよ吉と恋愛することで、さらに自分にしかできない落語を見つけていくという役どころですかね」と分析。「色んな人に動かされていく役で、色んな人に嫉妬したり、色んな人の影響を受けて落語を背負ってしまうので、皆さんの力をお借りして作っていけたらなと感じています」と話した。

歌唱シーンのボリュームも多いという本作だが、明日海は「たくさんナンバーがあるんですけど、全部演歌風かというとそうでもなくて、ノリノリのナンバーがあったり、ちょっとタンゴっぽいアレンジのものがあったり、あとはジャパニーズの祭りみたいな感じのテンポのものもありますし、本当にバラエティに富んでいるなと思っています。私は小唄だったり、女性なので演歌っぽく聞こえるようなものも歌わせていただいているので、色々研究しているところです」と話す。
山崎も「この三人がメインで話が進んでいくので、割と繊細な、例えば海外作品のようにイエスorノーみたいな部分じゃない、日本人ならではの、こう思っているけど言えない歯痒さみたいなものがメロディーになって、すごく哀愁のある楽曲ができていたりします。今回アンサンブルの皆もすごいパワフルで、大舞台で華やかに伝わるシーンを小池先生が作ってくださっていて、その振り幅もすごくあるので、大劇場でも楽しめるものになっています」と力強く語る。役によって使われる楽器も異なるそうで、「助六だったら、彼のエネルギッシュさをロックサウンドで表現してみたり、八雲は繊細なので、バラードで楽器も少なめで弦楽器だったり、みよ吉が出てくる時は和楽器も出てきたり、本当に色んな楽器が出てきます」と注目のポイントとなる。

前日に一幕の通し稽古が行われたそうで、感想を聞かれ明日海は「ドラマの育様を拝見させていただいているんで、助六がそこに生きてるって感じで。本当に自由自在で、お歌の時も落語をしていらっしゃる時も、他の役の方と絡んでいる時も本当に生き生きされていて、育様だけ、いつ初日でも大丈夫っていう」と話すと、「まだ二幕通してません!」と山崎からツッコミが。「早く見ていただきたいという気持ちでいっぱいです」と早る思いの明日海だった。

10巻まで出ている原作のどの部分がミュージカル化されるのかも楽しみの一つになっているが、初めての一幕の通し稽古を経て「一幕は『レ・ミゼラブル』より長かったんですよ。大作になってしまいまして。ちょっと稽古で詰めていかなきゃいけないなというところはあるんですけど、でも上手く音楽とともに落語のように流れていっているので、とっても良くできています」と手応えを感じているようだった。

SNSで落語を見たと報告していた古川は「初めて生で観劇させていただきました。志の輔師匠の志の輔落語を見させていただいたんですけど、初めての体験で。話を聞く3時間ってやったことがなかったので、どうなんだろうと少し不安で見にいったんですけど、一幕終わって1時間50分くらい経っていたんですけど、一瞬で終わりまして。どの舞台を見てもそんな感覚がなかったんですけど、体感が秒だったというのをすごく感じて、真っ暗な空間の中で最高のパフォーマンスを見て、頭の中で自分でドラマを展開していきながら見られるというのが、生で見る落語の良さなんだなというのをすごく感じました。すごく良い経験をさせていただいて、その後なんと対談までさせていただいて。貴重なお話をさせていただいて、それがパンフレットに載るので、ぜひ来てくださる方はパンフレットを買っていただきたいなと」とアピールしていた。

繊細な間柄になっていく3人だが、どう演じようと考えているか聞かれ、山崎は「2人の間に流れてるのは親友でも家族でも恋人でもないような、もっと深い魂の繋がりみたいなものを感じておりまして、その辺りは、雄大とは昔からずっとミュージカル界で一緒に戦ってきた中で、プライベートでも一緒にゴルフ行って」と交友関係を明かすと、「連れていっていただきました」と恐縮する古川に「やめて、その連れてっていただきましたって。1歳しか変わらないんだから」と制する山崎、そして古川の「いや、学年で言うと2個違うんで」と先ほども見たやり取りが再び勃発。「この2人の積み重ねた関係性というところから役に入れているので。お芝居の中でも、お別れするシーンなんかも出てくるんですけども、ぐっと泣けちゃうような」と話す山崎に、古川も「薄々このシーンぐっとくるなと思って我慢しながらやっていたんですけど、昨日も初めて通してぐっときちゃったんですよ。あ、やべ、ってなったんですよ。それを堪えて八雲としてパッと見たら(山崎も)うるうるしてて。2人の関係性が見えました。瞬間でわかるお互いへの励ましみたいなものが」と同じ気持ちだったよう。

原作者の雲田氏も稽古場を見学し、感想を聞いた山崎は「雲田先生にこの『昭和元禄落語心中』という作品を作っていただいて、そこから僕はドラマから携わらせていただいて、本当にこの作品が大好きで、どうにかミュージカル化したいというところから、雲田先生がそれを受け入れてくださって、同じ思いでこの作品に挑んでくださっているのが本当に嬉しいですし、先生の期待を超えるような、こんなミュージカルがあるんだというものを見せたい思いで、今皆頑張っています」と気合を入れた。

豪華キャストが出演している本作。師匠(七代目八雲)役の中村梅雀について山崎は「いろんなことを教えていただきますね。江戸弁だったり所作だったり、お着物も梅雀さんは一人で着替えられるんですよ。まさに師匠という関係性です」と話す。
与太郎役の黒羽麻璃央について、共演経験もある古川は「何度もご一緒させてもらっていますけど、彼らしい与太郎をしっかり作ってくれているので、周りに素晴らしい方が揃っていると安心できるので、胸を借りて、自由にやれたらなと思っています」とコメント。

助六とみよ吉の間に生まれる娘、小夏を演じる水谷果穂のことを、明日海は「純粋な感性で、ミュージカル初挑戦なんですけど、無駄なものが何もないピュアな状態で一生懸命お芝居に向かう姿というのが、小夏の熱さと冷静さと両方持っているところにリンクして、プラス彼女のピュアな魅力が重なって、私たちも良い刺激をいただいているなと思います」と話し、山崎も「果穂ちゃんは素敵ですね。新しいミュージカル女優が誕生した」と絶賛し、「本当に良い声で、歌声もセリフもすごく通る声で、僕らの間に生まれた小夏として、本当に魅力的に演じてくれています」と語った。

そして、松田を演じる金井について、山崎は「金井さんもミュージカル2作目なんですけど、本当に魅力的に演じてくださっていて、松田さんと与太郎がストーリーテラーのようにお客さまにこの物語を伝えていくという役割なんですけども、原作にもドラマにもない新しい松田さんを作ってくださっていて、とてもお茶目でチャーミングになっています」とコメント。

最後に、お客様に向け山崎は「12歳の頃にミュージカルデビューして、その時に小椋佳さんにオーディションで選んでいただきまして。小椋佳さんが日本のオリジナルミュージカルを作りたいという思いでスタートしたチームで、そこでゼロからミュージカルを作るというものを見て育って、それが自分の原点になっていまして。20代ではブロードウェイやロンドン、ウィーンミュージカルと色んな作品に出させていただいておりましたけど、自分の中ではいつかオリジナルミュージカルを日本でやりたい、そして日本人の自分たちが演じる作品で海外にも持っていきたい、そんな夢をずっと持ってやってきました。ようやくこの2025年、この夢が叶いまして、第一歩となりました。ミュージカル界に新しい風が吹くような、そんな作品になっております。ぜひ皆さん、この日本発のミュージカル、楽しみにしていてください。劇場でお待ちしております」とメッセージを送る。

明日海は「原作ファンの方にも、落語ファンの方にも、ミュージカルを見るの初めてだよという方にも、どんな方にも必ず楽しんでいただける作品になること間違いなしだと思っております。本当に素晴らしい先輩方と、演出の小池先生にもお世話になっておりますので、ご一緒させていただける機会に感謝して、本当に繊細なドラマ、役どころではありますので、丁寧に丁寧に描き出していて、素敵なみよ吉になれるよう、頑張ります」と意気込んだ。

そして古川は、「あまりこんなことを言うタイプじゃないんですけども、面白いんですよね。見せかけの面白いじゃなく、滲み出る面白いなんですよ」と自信ありげに話し、「それは原作のパワーが強いというのももちろんあるですけれども、天才小池修一郎先生、そして天才小沢さん、そしてそれを歌うのが日本を代表するスターお二人ということで、色んな魅力が詰まっている作品だと思いますし、日本ならではのものに仕上がると思いますので、ここから世界に向けての第一歩、初演をぜひ皆様に観劇していただきたいなと思います。それぐらいパワーのある作品だと思いますので、この機会を逃さないでください。よろしくお願い致します」と力強く語った。

ミュージカル『昭和元禄落語心中』は、2月28日(金)より東京・東急シアターオーブにて、3月29日(土)より大阪・フェスティバルホール、4月14日(月)より福岡・福岡市民ホールにて上演される。