
『湯を沸かすほどの熱い愛』以来、10年ぶりの完全オリジナル脚本となる中野量太が監督を務める映画『私はあなたを知らない、』。監督と初タッグとなる主演・坂口健太郎が演じるのは、狂おしいまでに”家族“という幸せの形を追い求め、愛する人を殺めてしまうという重い罪を犯してしまった孤独な青年。あの日一体何があったのか?何を思っていたのか?封印した記憶と真実に触れた時、心が揺らぎはじめるー。愛とは、憎しみとは、そして人を赦すこととは何か。日仏共同製作で描く、感動のヒューマンサスペンス。
このたび解禁されたのは、坂口健太郎演じる主人公・西山夕平の日常を切り取った場面カット3点。
夕平はゴム手袋工場で契約社員として働きながら、東京の片隅で静かな毎日を送る28歳の青年。天涯孤独の身でありながら、自ら決めたルーティンを淡々と繰り返し、誰にも頼らず生きている。決まった時間に起き、いつも同じコーンフレークから始まる朝、近所のコインランドリーに通い、馴染みのパン屋で週に一度、高級食パンを一斤購入する。仕事中の食事は休憩室でいつもひとり、夜は凝った食事を取らずに効率を重視した質素な生活を送る……。たったひとりのその環境を「寂しい」とさえ感じず、粛々と決められたルーティンを繰り返す日々。そんな夕平にとって、買ってきた高級食パンを食べることだけが、唯一の密かな楽しみであり、世界とつながる細い糸だったのかもしれない。
中野量太監督は、夕平という人物について「家族というものを知らず、孤独に淡々と生きている人物を描こうと思っていました。でも彼自身が世の中を恨んでいるわけではなく、社会の片隅で自分のペースで生きながらどこかに寂しさを抱えている。彼の中での幸せや喜びもちゃんと入れたくて、週に一度の高級食パンがちょっとした楽しみになっているシーンも描きました」と語る。劇中では、食パンをきっかけに職場の新しいパート職員・紗月(堀田真由)との距離が縮まっていく。夕平にとって食パンは単なる好物ではなく、閉ざされていた人生が少しずつ変化していく象徴的なモチーフとして描かれている。

主人公・夕平役に坂口健太郎を起用した理由について、中野監督は「僕はちょっと寂しさがあって、憂いがある人が好きなんです。坂口さんはまさにそういう方で、かっこいいんだけど、なさけない感じに見えるところもある。強さと弱さが共存しているように見えるところも夕平にぴったりだと感じてオファーしました」と明かしている。撮影現場では、涙を流すシリアスなシーンの直前まで周囲と談笑し、場を和ませていたという坂口。しかし、「本番!」の掛け声がかかると一瞬で夕平へと入り込む姿に、スタッフ一同は「怖いぐらいの集中力と力量」と驚嘆。決め込んだ芝居をせず、監督と何度も対話を重ねながら答えを探し歩んだ、坂口健太郎。孤独を抱えながらも家族という初めて知った幸せの形を手探りで求める夕平という複雑な人物像を繊細に体現している。解禁された場面カットには、そんな夕平のどこか愛おしく、そして狂おしいほどの切なさを孕んだ日常の表情が切り取られている。家族の温もりを知らずに生きてきた孤独な青年が、初めて手にした幸せによって大きく人生を変えていく――。繊細さと危うさを併せ持つ夕平という難役に挑んだ坂口健太郎が新たな一面を見せる熱演に注目してほしい。







