1971年にアメリカで公開された映画『ハロルドとモード』は、ブラックユーモアを随所にちりばめながら、年齢差のあるちょっと変わった二人のラブストーリーと生きることの楽しさをコメディータッチに描き、世界中で熱狂的な支持を得た。
ストレートプレイからドラマリーディング、ミュージカルと、キャストや上演形態を変え幾度となく上演され続けており、映画の公開から約半世紀経った現在に至っても多くのファンを魅了している。

この『ハロルドとモード』が、2020年9月に、これまで数多くの舞台作品の脚本・翻訳・演出を手掛けてきた G2 によって新たに脚本が書き下ろされ、朗読劇として上演。簡素なセットで役者が台本を読み上げるというものではなく、舞台セット、衣裳、照明、ピアノの生演奏など意匠を凝らし、朗読劇という枠組みを超えた作品創りで話題となり、好評を博した。

今年で 3 度目の上演となる本作で、79歳のチャーミングな女性モードを演じるのは、長きにわたり海外コメディ・シリーズで主演を務めてきた黒柳徹子。黒柳演じるモードに恋する19歳のやんちゃな少年ハロルドを演じるのは、昨年上演された『ブライトン・ビーチ回顧録』で初めてストレートプレイに挑み好評を博したSexy Zoneの佐藤勝利。本作で黒柳と初共演を果たす。
更に、北乃きい、文学座の林田一高、近藤芳正、常盤貴子と若手からベテランまで豪華キャストが顔を揃え、型破りな二人の生き様と恋模様を送る。

東京公演の開幕に先駆け、公開ゲネプロ及び取材会が開催され、取材会には黒柳徹子と佐藤勝利が出席。

初日を翌日に控えた気持ちを聞かれた黒柳は、「何回かやっていますけど、いつの若い人が一番良いかとかって言えないけど、本当に勝利くんはハンサムで。前の方から見ると顔が“国宝”と言われてるそうですけど、いつも横からしか見ていなかったんです。前から見ることは滅多に無いんですけど、見たらなるほど“国宝”と思います。でもそういう方とご一緒に素晴らしい作品が出来て、本当に良かったなとつくづく思っています」と、”顔面人間国宝”とも謳われる佐藤の容姿に触れ、その言葉に恐縮しながら嬉しそうにする佐藤の姿が。

佐藤とは本作が初共演となったが、印象については「本当に穏やかで一生懸命で、そして日増しにセリフも上手になっていくし、物が落ちたりするとすぐ拾ったり、そういうことにとっても気が付く方で、もう何とも言いようがないですね。この頃の若い方でこういう方少ないと思います。普段は知らないんですけど」と話すと、「やんちゃな面もあります」とニヤリと笑う佐藤。

一方佐藤は「朗読劇が初めてですし、『ハロルドとモード』っていう本当に素敵な作品、そしてハロルドとして作品の中で生きられることにすごく喜びを感じていますし、明日から本番ですけれど、その分プレッシャーというか、そういうのも少し感じている部分はあります。徹子さんから僕に対して“国宝”と言ってもらいましたけど、前回のハロルドをやった藤井流星くん(ジャニーズWEST)と番組で一緒になった時とかにちょっと話したりするんですけど、流星くんが『徹子さんは本当に国宝の人だから』『一緒に居られるだけですごい経験だったよ』と言っていたので、“国宝”と“国宝”で(笑)。素晴らしい黒柳さんとこんなに貴重な経験をさせていただけることは無いと思いますので、楽しんで明日からの本番、一回一回をちゃんと大事に朗読していけたらいいなと思っています」と、コメント。

前回、ハロルド役を演じた藤井流星からは何かアドバイスがあったのかという問いかけに、「ちょこちょこ話すんですけど、流星くんが結構ちょっかいを出してくるんですよ!どこが緊張するかを知ってるじゃないですか。もう演じてるから。『勝利、最後の方ギター出てくるだろ。あれドキドキするよな?』とか言ってくるんですよ!「あれ緊張するよな」とかわざとちょっかい出してくるんで、もう相手にしないです(笑)。僕として僕が出来るハロルドを一生懸命出来たらなと思っています」と、エピソードを明かした。

ハロルドとモードは60歳差の恋人ということで、役を演じた感想について佐藤は「物語としてそれがすごい面白い部分ではあるんですけれど、60歳差という日常だとなかなか聞かないようなことで、それだから物語になると思うんですけど」と物語の見どころとしながら、「(年齢差について)最初見た時は疑問をお客さんが抱くこともあると思うんですけど、だんだん見ていくうちに、60歳差を感じさせないというか、『こんなに素敵なモードだったら、それはもう本当に好きになるよね』って思ってもらえるように、そういう部分を僕は大事にしているので。俯瞰で見るとすごいことだなと思うんですけど、ハロルドとしては、逆に60歳差とかを考えないということを大事にしています」と、年齢差を意識させないように演じることに心がけていると語る。

また、黒柳は昨年の藤井とは実年齢で60歳差、今回の佐藤とは64歳差と記録更新となったが、「あんまり年のことは考えないので、それを思ったらやりにくくなると思うので」と年齢は関係ないと話し、「これはお芝居ですけどもこういうことって世の中にもしかしたらあるかもしれないと思うんですよね。人間がぴったり感じるところが全部一緒になって、周りからすごく反対されるかもしれないし、普通は男が上で女が下って決まっているみたいだけどそうじゃなくて、こういう人たちもいるかもしれないと思って観ると、人間っていうのはなかなか素晴らしいものなんだなと思いながら稽古を致しておりました」と振り返った。

稽古場での佐藤の姿について黒柳は、「とっても一生懸命で、ちょっとどこかでダメなところが出たとすると、それを必ず次の時にはきちんと直して進歩してるっていうのが分かるので偉いなと思って見ています。そういった意味ではこれから俳優としても本当に素晴らしくなるだろうと思って、楽しみにしております」とべた褒め。すると佐藤が「これは放送してください!全国で!」と身を乗り出して喜ぶ一幕もあった。

舞台やミュージカルの出演経験がある佐藤だが、朗読劇は今回が初めてとなる。朗読劇ならではの面白さや難しさについて聞かれると「朗読じゃなければ台本を持つとか台本に目を落とすのはしてはいけないことというか、稽古で台本を持って確認して芝居をする時もあるじゃないですか。そういう時ってあんまり目線を落とさずにやるもので。でも朗読だとそれが逆で、本を読んでます、そういう世界ですよっていうのが新鮮で」と、他の作品との違いに触れ、「最初の通し稽古では本を見るっていうのがダメだと思っちゃってちょっと役の目線で見てたら『朗読劇なのでまずは本に目線を送って』とか言われました」と明かしながら、「でも伝える事とか何か表現することとかそういう意味では同じものだと思うので、アプローチが全く逆っていうのは新鮮だなと思いました」と語った。

物語の中で自由に生きているハロルドとモードにちなみ、この約3年間コロナ禍でなかなか自由な生活が出来ない中ではあるが、もし少し自由に生きられるようになったらやりたいことは?という問いかけに対して、黒柳は「今、何も出来ないのでね。この3年間というものは外でご飯を食べたこともないですので。それこそアイスクリームのいっぱいあるお店に行って、アイスクリームをいっぱい食べてみたりとか、色んな食べ物屋さんにも行ってみたいと思うし、それから銀ブラみたいに色んな売っているものを見たりなんかして。あとは誰かと歩きながら話したり、そういうことをこの3年間ずっとやってこなかったので、仕事が終わったら家へ帰るっていう生活でしたので、そういうことをやってみたいなと思います」と茶目っ気を見せる。

佐藤も「自由にして良いよって言われたら、もし行けたら海外に行きたいなと思いますね。ニューヨークとか。演劇だったりミュージカルが好きなのでブロードウェイとか、ロンドンのウエスト・エンドも大好きですけど、演劇を見に行きたいし、僕もニューヨークとかでアイスクリームをいっぱい……やっぱりアイスクリームって良いですよね。夢です」と続けた。

さらに、佐藤が「小学校4年生の時に、担任の先生が毎朝朗読をしてくれていて、その作品が『窓際のトットちゃん』」と、”朗読”と”黒柳徹子”との繋がりを明かすと、「良い先生!」と声を上げ嬉しそうに笑う黒柳。
「トットちゃんの中で描かれているのは実際の徹子さんだと思うんですけど、すごく自由で、ある意味モ―ドの様な感じもして、小学生の頃から素敵な人だな、素敵な生き方だなと思っていたので、まさか仕事を始めてお仕事として“朗読劇”に“徹子さんと”というのは想像してなかったので、すごい奇跡の交差をしたなと思っています」と感慨深げに語った。

最後に二人からメッセージが。
佐藤は「こういう状況の中で劇場に足を運んでくださることを本当に感謝していますし、演劇っていうのはすごく心を広げてくれたり、外になかなか出られなかったり自由じゃない世界にはなっていますけど、演劇の中ではすごく自由を感じられると思います。それが演劇というものだと思うので。そしてこの作品のテーマのすごく自由に生きている人っていうのが心の奥まで届いたらいいなと思いますので、ぜひ劇場にお越しいただけたらと思います」とコメント。

黒柳は「この何年間か、芝居を見に行くチャンスが無かった方も多いと思いますので、ぜひその一番最初に観る作品として『ハロルドとモード』を選んでいただければ大変ありがたいと思います。そして純粋な少年とどういう生活をしてきたか分からないようなおばあさんとの話ですけど、お互いに純粋なんだと思いますが、ちょっとありえないみたいだけど、本当は実生活でもあるかもしれない、皆が割と我慢しているようなことが実際に行われているお話かもしれないので、本当に素晴らしく出来ている本なので、ぜひ皆様に見ていただきたいと思っています」と会見を締めくくった。

『ハロルドとモード』は、9月29日(木)より東京・EXシアター六本木、10月15日(土)より大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。