9月25日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールで既に開幕している本作は、これまで、実際に起きた事件やその時々の世相を題材にしながら、時に無様で、時に滑稽な、世の中にうまく馴染めない人間たちの機微を独自の観点で描き、あたかも登場人物たちの日常を観客が覗き見しているような不思議な空間へと誘う作風で高い評価を得てきた赤堀雅秋の最新作。
救いようのない詐欺グループの男たちの栄枯盛衰の物語。一見豊かで、平和ぼけしているかのような東京を舞台に、社会の底辺で蠢く男たちが刹那的な幸福を求め、破滅を予期しながらも走り続ける様を、赤堀ならではの俯瞰した視点から描く。

主演を務めるのは、今作がシアターコクーン初登場となる関ジャニ∞の丸山隆平。以前から大ファンだという赤堀との初タッグとなる。自身のもつ明るいキャラクターから、おおらかで天真爛漫な役を演じることが多い印象の丸山が、赤堀の描く“底辺でもがく男”をどう演じるのか期待が高まる。
そして共演には、シリアスからコメディまで硬軟自在な演技で幅広く活躍する八嶋智人、独特の存在感で映像業界から熱い視線を集める毎熊克哉、『世界』では観客の共感を一身に集め赤堀作品の世界を見事に体現した梅沢昌代、映像のみならず舞台にも意欲的に取り組み各方面から高い評価を集め続ける坂井真紀、圧倒的な存在感であらゆる作品世界を牽引する西岡德馬と、若手の注目株からベテランまで、個性あふれる顔合わせが実現した。

東京公演の開幕に先駆け、プレスコール及び取材会が開催され、取材会には、作・演出・出演の赤堀と主演の丸山が出席した。

東京公演初日を迎える心境を聞かれた丸山は「これから幕が開くわけですけども、昨日ゲネをやらさせていただきまして、会場も変わるとだいぶと印象が変わったりするもので。実際にお客様が入られてからの初コクーンっていうのは本当にまだなので、わくわくという気持ちとどんなふうな反応が来るのが楽しみだなという気持ちでいっぱいでございます」と初めてシアターコクーンの舞台に立つということで期待が高まっている様子。

赤堀は、「大阪が実質の開幕だったので、このコクーンでまた改めてっていう。今、丸山さんが言ったように劇場が変わるとこんなに伝わり方が違うんだなっていうことは実感しているので、今プレスコールで見ていただきまして、多分よく分からない芝居だったと思いますけど、全編通してもきっとよく分からないかもしれませんけど、そのよく分かんなさを、多分演劇慣れしてない方々も見ていただけると思うんですが、あまり深く考えずに何かあの感じていただければ、嬉しいなと思います」と、取材会前のプレスコールにも触れながらコメント。

丸山は赤堀のファンだったことを公言していたが、「元々は映像だったんです。映画の方で。 で、そこから演劇を何本か見させていただきまして『なんか好きやなあ』って思ってたら、雑誌で言ってたものを見てくださったみたいで、言っとくもんだなっていう(笑)。すごく嬉しいです単純に」と笑顔を見せる。

そんな丸山から見た、赤堀作品の魅力については「色んな解釈とか切り取り方はあると思うんですけど、何より今この世の中を生きる人たちに対して今を実感していただけるような舞台だったりというか。だから(本作は)2年前に本来は公演するはずだったんですけど、あの時からテーマも変わって、ここ2年で世界もそうですけど日本も色んなことが変わったりとか。肌で感じる実感みたいなものを皆生きてて持ってると思うんですね。そういう部分というのを改めて見直すことも出来たり、家族や会社のことを考えたり、本当に普遍的で日常的なものっていうのを改めて考え直せるようなところが僕は好きで魅力だなと思います。一口で語るのはあれなんですけどお時間もありますので。本当だったら一晩中語りたいんですけれどもこの辺で……」と熱く語る。

ファンだった作家の作品に出演するという心持ちを聞かれると、「観客として観てて好きっていうのと、好きな作家さんの作品の世界観に飛び込むっていうのはこれほどまでに怖かったりとか……その怖いっていうのは作り上げるものを壊してしまう可能性もあるわけじゃないですか。だから幸福さと恐怖っていうのは同時にあるもんだなと思いながら、でも『こうやって作られていくんだ!』っていうのは中に入ってみて実感としてめちゃくちゃ苦しいし楽しいです」と話す。

2年越しに叶った上演ということで「本当に色んな演劇だったりとかエンターテイメントされている方も同じ気持ちだと思うんですけど、それこそ待ってくださる観客の方とも同じように、僕もとても嬉しく思っています」と話す丸山。
役どころが詐欺グループのリーダーだが、「どっか吹っ飛んでるのかなとかって思ったりするかもしれないですけど、僕としては普通の人間を演じているつもりではいるので。そういう部分を自分を通して別の人物としてやるっていうのはとても楽しいんで、皆さんが『本当に悪い奴やな』と思って帰られるのか『結構普通の人でそういう集団をやってたりとかするんだ』とか、色んな受け取り方できると思うので、あんまりひと口には言いづらいですけど。だからお芝居で向き合う時にそういう部分は難しかったりとか楽しかったり、面白みがあったりとかしますので。もし観劇される方は色んな見方していただければ。それこそ他の人物たちにも物語があったりするので『この人の人生に近いな』とか、色んな見方をしていただければなと」と作品の楽しみ方を語る。

赤堀から見た丸山の演技や稽古での姿勢については、「とっても素敵な俳優だと思います」と話すと、「正直ジャニーズかっていうところでちょっと斜に構えていた部分もあるんですけど、でも一俳優としてとっても素敵だなって稽古の段階から。それはお芝居に取り組む姿勢だったりとか、その感性だったりとか、そういうものは本当に何のお世辞でもなんでもなくて、とても素晴らしいなと思いますし、この座組を引っ張っていってくれているなという実感は大阪公演の時からあります」と太鼓判を押した。

普段コメディのイメージの強い丸山と八嶋が揃うと、笑いを取りに行きたくならないのか?という記者からの問いかけには、「作・演出の赤堀さんがそれでいけっておっしゃるんであれば全力でやります」と赤堀の方を伺う丸山。
「じゃあ一発ギャグをお願いします」と返した赤堀に応えようと一歩踏み出すも「嘘です!」と即座に止められる一幕があった。

一か月近くある東京公演、体調管理やストレッチなど何か対策はするのか聞かれると「毎日不安です!いきなり昨日から冷えましたでしょう?あれ、大丈夫かなと思って古傷がうずきだしたりするので、ストレッチも発声もやりつつ万全の状態でお客様を迎えられたらと思いながら、最後まで頑張りたいと思います」と力強くコメント。

関ジャニ∞のメンバーは見に来る予定があるのか?という質問には「全く聞いてないです!僕自身も聞かないようにしてます。それぞれのスケジュール感もあるので!『来てくれよ』って言うとプレッシャーになっちゃうから、そこはそれぞれのスケジュールで心に余裕のある時に来てもらえればと。でも毎回来てくれているので、期待はしてます」と笑顔を見せる。そして、「僕ヤスくん(安田章大)のは見に行きました」と、同じ時期に上演している安田の舞台『閃光ばなし』は既に観劇済みということを明かした。

丸山から見た本作の見どころを聞かれると「言っちゃっていいんですか?言っちゃいますよ?」と焦らしつつ「それはチケットを買ってくれた人の特権だと思います」と返答。
「どこが見どころか、もしかしたら僕じゃなくて、八嶋さんを見て、「ここが見どころや!」っていう人もいらっしゃるでしょうし、個性的で素敵な出演者の皆さんなので、見どころは僕は一口では言えないので、チケットを持った人だけが持って帰っていただければなと思います。それぞれの見どころを。本当に見どころめちゃくちゃあるんですよ!自分でもここってなかなか見つけられないぐらい色んなところでピークがあるので。目まぐるしく動いている人の感情だったり、そういうものを楽しんでいただければ。それぞれの感情なんかに見どころはたくさんあると思いますので、ぜひともそのあたりを見どころとして来ていただればと◎$♪×△¥○&?#$!」と最後の最後で噛んでしまうお茶目な姿もあった。

最後にお客様へのメッセージとして、赤堀は「丸山さんのファンに向けては、あまり見たことない表情の丸山隆平が見れるんじゃないかなと。ただ、わからないですけど演出家としてはもちろん見に来る目的は人それぞれで構いませんけど、物語全体を楽しんでいただけると助かります。なかなかこういう種類のお芝居も無いと思うので、物珍しさでも何でも構いませんので、丸山さんをきっかけでも構いませんので、観に来て何か感じていただければ幸いです」とコメント。

そして丸山は「赤堀さんもおっしゃったように、多分なかなか目にすることのない世界だと思うんですけど、年齢を重ねていくとそういう機会に恵まれることって少なかったりするので、初体験の気持ちで見に来てくださる方もいらっしゃっても良いと思うし。こういう演劇が好きな方は存分に隅から隅まで楽しんでいってほしいなと思います。11月3日まで、しっかりと楽しい良いものをお届けしますので是非とも皆さん、劇場でお待ちしております」と、会見を締めくくった。

舞台『パラダイス』の東京公演は、10月7日(金)から11月3日(木・祝)までBunkamuraシアターコクーンにて上演される。