©2026『男ともだち』製作委員会

『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞した千早 茜のロングセラー小説『男ともだち』(文春文庫)が著者作品初の映像化。30歳目前、人生に行き詰まるイラストレーター・神名(かんな)と“男ともだち”・ハセオの曖昧で確かな関係性をつづった傑作が、主演に松岡茉優、共演に成田凌を迎え、国内外で高い評価を得る三島有紀子監督(『幼な子われらに生まれ』)最新作として、11月6日(金)より全国ロードショーとなる。

主人公の神名(かんな)を演じるのは『勝手にふるえてろ』(17/大九明子監督)『万引き家族』(18/是枝裕和監督)の松岡茉優。才能はあるが、身勝手で人間関係に不器用なクリエイターの孤独や不安定な心情を繊細に体現し、30歳を目前に人生に行き詰まるキャラクターをリアルに演じ切る。出会ったころからなぜか神名を深く理解している男ともだち・ハセオには『愛がなんだ』(19/今泉力哉監督)や『窮鼠はチーズの夢を見る』(20/行定勲監督)の成田 凌。ぶっきらぼうに見えるが、松岡演じる神名に対しては独特の距離感で接する“男ともだち”として唯一無二の存在感を放つ。7年ぶりに再会を果たす神名とハセオと同じく、松岡と成田も7年ぶりの共演が実現した。主人公・神名の恋人で同棲相手・彰人役は、着実に演技のキャリアを積み上げている井上祐貴。恋人同士の気持ちが冷めていく様を痛々しく絶妙なトーンで好演。妻子ある身だが神名と関係を持っている医師・真司役に、話題作への出演が相次ぐ中島 歩。本作でも印象深く、キャラクターの存在感を植え付ける。神名の大学時代のともだち・美穂には、宝塚歌劇団出身で女優・歌手として活躍の場を広げる咲妃みゆ、神名とハセオの先輩でライブハウスのオーナー・岩佐に三浦貴大、各々がキーパーソンとしての役目を担い、神名が通う映画館の映写技師の女役の余 貴美子、美術館のキュレーター・楢崎役の池畑慎之介が作品に深みを与える。

この度、松岡茉優演じる主人公のイラストレーター・神名の創作する姿を捉えた場面写真が解禁となった。
恋人と京都の町家に暮らす29歳の神名は、仕事もプライベートも順調に見えるが、実はクリエイターとしての描きたいものを見失い、人生に静かな行き詰まりを感じていた。絵本で賞を獲り脚光を浴びたのは何年も前、最近は無茶なクライアントワークに神経をすり減らし、惰性や不毛な恋愛に逃げる日々を送っている。そんなある日、 “男ともだち”ハセオからの思いがけない電話をきっかけに、二人は7年ぶりに再会、神名の人生が大きく動いていく…。

そんな神名が、数年前、雑誌に掲載され評価を得た絵画も合わせて解禁となった。この「グリム童話特集 赤ずきん」の挿絵は、本作で絵画の監修、提供、指導を務めた画家・田中千智氏が本作のために描きおろしたもの。挑発的にこちらを見つめるオオカミと、その隣に佇む赤ずきんの複雑な表情は、神名の心の奥底にある揺らぎや葛藤を感じさせる。
田中氏は、福岡県在住の画家。アクリル絵具を使ったフラットな漆黒の背景に、鮮やかな油彩で前景を描くという独自の手法を開拓、笑みとも怒りともとれる人物の表情、漆黒の中にきらめく風景など、相反する要素が組み合わされ、観るものに強い印象を与え、その想像力をかきたてる。国内外で多数の個展・グループ展のほか、書籍の装丁画や壁画など、幅広い活動を行っている。
本作の原作者・千早茜氏の著書「正しい女たち」の装丁作画も手掛けているが、田中氏が描く人物の眼差しと黒く塗りつぶされた背景に強烈なインスピレーションを得たプロデューサーと三島監督が熱烈にオファー、本作への参加が実現した。田中氏は映画本編鑑賞後「映画も絵画も、すべてを描き切ることはできないからこそ、心に残るものがあるのだと思います。表現は違っても、その余白が見る人の中で時間をかけて育っていくところには、どこか通じるものがあります。」とコメント。映画と絵画、異なるカルチャーの中に宿る共通点を語った。
撮影前には、神名を演じる松岡が能古島(福岡)にある田中氏のアトリエを訪問し、筆やコンテの使い方や水彩画の描き方なども実際に手を動かして練習。絵画が生み出されるリアルな場所での体験を経て、本番に臨んだという。劇中でそれぞれのシーンに登場する絵画は神名の感情に寄り添い、強い印象を与える。

(C)CHISATO TANAKA

さらには、映画本編を鑑賞した原作者 千早 茜氏からコメントも到着。奇しくも「京都での撮影を見学させてもらったとき、神名と彰人が暮らす京町家から、かつて私が住んでいた町家が見えました。デビュー作を書いていたときに暮らしていた家で、京町家の土間の匂いと共に二十代の自分がよみがえりました。」というから驚きだ。続けて、千早氏は「誰もが身に覚えのある、強くなりたいと願う弱さも、勘違いの不幸も、生きにくさも、情けなさも、苛立ちも、まるで三島監督はすべてを知っているかのように、鮮やかに残酷に描いていました。孤独で、無様で、それでも、なにかを掴もうと足掻いていた人。今も、足掻いている人。そんな人たちの救いになる映画だと思います。何者でもなかった私の二十代も、救われた気がしました。」と語る。

<田中 千智(たなか ちさと):絵画制作・指導・監修 コメント>
映画の中で描かれる絵の制作に参加させていただき、とても光栄でした。
普段は一人で制作することが多いので、多くの方と一つの作品をつくり上げる映画の現場は、新鮮で刺激的な経験でした。撮影では、監督や俳優、スタッフの皆さんが、それぞれの表現に真摯に向き合い、作品を作り出していく姿がとても印象に残っています。
映画も絵画も、すべてを描き切ることはできないからこそ、心に残るものがあるのだと思います。表現は違っても、その余白が見る人の中で時間をかけて育っていくところには、どこか通じるものがあります。この映画は、描かれたものだけでなく、描かれなかったものや、その先にある時間まで思いを巡らせたくなる作品です。時間が経っても静かに心に残り、何度でも向き合いたくなります。

photo by Miyuki Toudou

<原作:千早 茜 コメント>
京都での撮影を見学させてもらったとき、神名と彰人が暮らす京町家から、かつて私が住んでいた町家が見えました。デビュー作を書いていたときに暮らしていた家で、京町家の土間の匂いと共に二十代の自分がよみがえりました。
空気の匂いも、肌触りも、痛みもある映画だと思いました。
他人事とは思えない映画だと。
でも、それは私が原作者だからではなく、三島有紀子監督をはじめ、俳優さん、スタッフさんたちが細やかに映画の世界を創りあげているからだと思います。誰もが身に覚えのある、強くなりたいと願う弱さも、勘違いの不幸も、生きにくさも、情けなさも、苛立ちも、まるで三島監督はすべてを知っているかのように、鮮やかに残酷に描いていました。
 孤独で、無様で、それでも、なにかを掴もうと足掻いていた人。今も、足掻いている人。そんな人たちの救いになる映画だと思います。何者でもなかった私の二十代も、救われた気がしました。ありがとうございます。