『water』は、丸山隆平が友人の勧めで観劇した演劇団体マームとジプシーの公演をきっかけに、劇作家・演出家の藤田貴大の作品に興味を持ち、その後、京都で上演された『cocoon』の観劇を通じて藤田本人と出会ったこと、そして時を同じくして、藤田が京都でリサーチを進めていたことが重なり、動き始めた企画となっている。さらに、丸山自身が京都出身であることも結びつき、いくつもの偶然が同時多発的に交差する中で、作品の構想が一気に立ち上がっていったという。

本作の創作にあたり、藤田と丸山は対話を重ねるだけでなく、実際に京都を訪れ、丸山が幼少期から親しんできた場所を共に巡った。当時の風景や記憶を辿りながら、ゆかりのある場所へも赴き取材も実施。そこで語られたのは、特別な出来事ではなく、誰もが持っているような幼少期の記憶や地元での日常だった。本作は、丸山隆平の記憶の断片を散りばめながら、藤田の視点で見つけた京都という土地、そして虚構の世界を織り交ぜて描いた半自伝的作品となっている。

公演初日を前に行われた囲み取材にて、本作が半自伝的ということで自分自身を演じることとなる丸山は、「不思議な追体験でもあるし、マームとジプシーという藤田さんが作られる世界観で、僕に起こったことが戯曲の中に組み上げられていくわけじゃないですか。僕はその組み上げられた自分を1回解体して、もう1回再構築していくという、不思議な役の構築の仕方でした」と、これまでにない役作りだったと振り返る。

藤田も「大変だったと思います。違うものを演じた方がよっぽど楽だったんじゃないかと。僕が描く丸山隆平と、本当の丸山隆平があるから、そこのズレを埋めるのが大変そうだなと」と心配だったようで、丸山は「最初の方にそれを言ってくださったんですけど、僕自身、それがどういうことか分からず、『はい、頑張ります!』って」と明るく返していたものの、「いざ潜っていけば行くほど、藤田さんの描かれる戯曲は色んな角度から読むたびに新鮮で色んな解釈の仕方が川のようにどんどん派生していくんです。このチョイスもあるね、とキャストや制作の方々と持ち寄ったものを藤田さんが全部吸い上げて、じゃあこれは有効にしましょう、って」と、稽古の日々を振り返った。

そんな本作のタイトル『water』に込められた意味を藤田は「丸山さんの出身地の京都の土地を調べていくと、水にどんどん繋がっていったので『water』にしたかったのと、丸山さん自身の幼少期からグループになる流れを描いているので」と説明。

丸山と藤田はともに京都に足を運んでおり、その時のことについて丸山は「地元にお迎えする時に、一応プランは立てていたんです。でもその行く道の間で、脇道に逸れたところにエピソードが散りばめられていて、僕にとっての小さなエピソードにも着目してもらったりもして。幼少期を辿っていく中で思い起こされたりもしたので、僕から見た地元と、藤田さんみたいに僕の地元を初めて歩く人とでは、こんなに色んな発見や視点の違いがあるんだと、とても不思議な体験でした」と語る。「見慣れた景色ではあるんですけど、仕事として組む相手を連れて地元を案内するってプライベートでやらないじゃないですか(笑)。実感のない場所に、実感のない方をお連れするのは不思議で、だからこそ僕には見えないところが藤田さん視点で見えていて」と新たな発見もありながら「きっと、藤田さんの視点から見た京都の町の色んなものが入り混じっている部分や独自性が切り取られていて、フラットに見られて、自分の故郷も思い起こしたりできるようなお話になっていると思います」と期待を見せる。

一緒に行くことは叶わなかった持田は、後日、京都へ足を運んだそうで「稽古終わりに新幹線に乗って京都へ行って、鴨川の辺りを夜中歩き回って、丸山さんの家の近くの場所もうろうろと、言葉だけ言うとちょっとやばいやつなんですけど(笑)、ここのお店とか良いよとか、色んなお話をお伺いしていってきました」と、丸山から事前に場所の情報を得た上で散策していたとのこと。
実際に訪れて、「色んな川が流れていたり、そこに人が集まっているんだなと感じました。鴨川の河川敷に行くと、昼間と夜でいる人の雰囲気が違ったり、色んな目的で川沿いに集まって色んな話をしているんだと、1日中そこを歩くことで見えてきて、人が集まりたくなる場所なんだなと再認識した旅になりました」と充実した様子。

すると藤田が「鴨川で踊ったんだよね?」と持田に確認。パフォーマンスチーム・s**t kingzとして活動している持田は「踊りました!水の音が綺麗だなと思って、歩いていたら真っ暗な場所に辿り着いたんです。周りに人がいなかったので、今だったら誰にも怖がられずに踊れると思って、川の音を聞きながら一人で踊って、川と一体になったような気持ちになって帰ってきました!本当に綺麗な音で、踊りたくなっちゃいましたね」と笑顔。
そんな持田は、丸山の接点について「番組でご一緒していたり、グループ(SUPER EIGHT)の『ハリケーンベイべ』という曲を振り付けさせていただいていて。そういう繋がりはあったんですけど、お芝居は初めてです」と話し、共演を楽しみにしているようだった。

約2ヶ月半の稽古を振り返り、藤田は「楽しかったですね。作家って一人で書くので、皆が楽しんでくれて嬉しくて。ずっと嬉しいです。今日がゲネプロなんですけど、ずっと嬉しいです」と嬉しさを噛み締めつつ、「皆からの提案もいっぱいあって、毎日やっているから、もはや寂しいんです。丸山さんとの時間は4年ぐらいあったから、4年間ずっと考えてたことが京都の公演で終わっちゃうとなると寂しいなと思っているから、もう再演してくれって思ってます」と既に名残惜しさを感じているようだった。

会見の最後に丸山は「これは僕だけの物語でもないし、きっと皆さんの物語でもあると思います。ぜひ見に来ていただけると何か持って帰っていただけると思いますので、色んな視点で楽しんで、たくさん呟いていただいて、あーだこーだ言って楽しんでいただければなと。それが作品の楽しみ方、醍醐味だと思います。ぜひともこの機会に、劇場の方へ足を運んでいただければなと思います!」とメッセージを送った。

舞台『water』は9月27日(日)から10月25日(日)まで東京グローブ座、11月7日(土)から10日(火)まで京都劇場で上演される。