――連続テレビ小説『風、薫る』の撮影がクランクアップを迎えられたとのことで、お疲れさまでした。撮影を終えて、今一番したいことはありますか?
見上愛(以下、見上):私は旅行に行きたいです。ここ数年、毎年旅行に行く機会を取れていたので、今年もどこかで行けたら良いなと思います。温泉が好きで、ちょうど1年前、那須でクランクインした時に、毎日那須の温泉に入れるのがすごく幸せだったので、那須に戻って、温泉旅行ができたら一番幸せだなと思っています。
上坂樹里(以下、上坂):何をしたいかな……何もしないです!(笑)。撮影が終わってから、何か大きなものを終えてぽっかり心に穴ができて、それは寂しい気持ちもあるけれど、達成感ややり切った実感も混ざっている不思議な感覚があったので、まずはゆったり過ごしたいです。
――これまで様々な登場人物が出演していますが、りんは、第104回(8月20日放送)で別れることになってしまったシマケン(佐野晶哉さん)と再会します。こちらはどのような気持ちで演じられましたか?
見上:シマケンさんが恵風看護婦会を訪ねてきたシーンは、7、8年ぶりに会ったと思うんですけど、自分でもどんな表情をしているのか分からないくらい、なんとも言えない気持ちになりました。ものすごく気まずい気持ちもあるし、それと同時に生きていて良かったという安心感と、そもそも何でいなくなったんだろうと不思議に思ったこと、モヤモヤしていたけどなかったことにしていたことが、一気に頭の中を駆け巡る感覚で、りんも私自身も、すごく胸がざわつくようなシーンだったのを覚えています。
二人で話すシーンもありましたが、遠い場所に行ったとしても、色々な方法で何かしら連絡が取れることが多いと思います。その上で連絡を取らなかったということは、もうその人との人生とは交わらないんだと整理がつくと思います。シマケンさんも手紙一つぐらいくれれば良かったのですが(笑)。何もないと自分の中で整理がついていたけど、いざ二人で話すと、気まずさの中に、あの頃の想いや、恋愛感情とはまた別の軸でお互いを思いやる気持ちが出てきていたなと思っています。


 

――虎太郎(小林虎之介さん)も戦地から帰ってきましたが、りんにとって虎太郎はどんな存在だと考えていましたか?
見上:虎太郎は初恋の人ではありましたが、りんは結婚して子どもができた段階で自分が恋をする発想がなくて、とにかく環を養っていかないと、生活のためにも看護婦にならなければ、という気持ちが強かったなと思っています。
りんが好きだったおっとりして優しい虎太郎から、15週あたりから上昇志向が強くなって、人と比べて自分が上に上がるとか、努力した人が上に行けるという発想を持ち始めていて、その辺からりんの考え方とズレが生じていったのではないかなと思います。とはいえ、自分を古くから知っていて信頼している人には変わらないと思っていて、だからこそ、そういう思考になっている虎太郎を、りんも歯がゆく感じていたと言いますか。
虎太郎が戦争から帰ってきて、監督からは「15週でのりんの心の状況と今の虎太郎を重ねるような視点でいてほしい。あの頃の自分みたいだなと思ってほしい」と言われて、意識していました。東京に来てから上を目指そうとしていた虎太郎が、傷ついた経験があったからこそ大事なことに気づいたのが二人で喋るシーンだと思っています。りんとしては、戦争から帰ってきておかえりという気持ちもありますが、昔の虎太郎の心が戻ってきてくれたことが安心だったと思います。
――直美は、吾郎(甲斐翔真さん)の死を受け入れ、遺品の軍服にボタンを縫い付けるシーンは、多くの視聴者の胸を打ちました。撮影にはどのような心境で臨まれましたか?
上坂:吾郎さんとのシーンは、幸せな新婚生活から最後に直美が一人でボタンをつけるところまで、短期間で順番に撮ったので、この先の展開が分かっているからこそ、吾郎さんがご飯を作って何気ない会話をしているシーンが余計に辛くなってしまい、その撮影期間は、とにかく泣くことを我慢するのにすごく苦労しました。それぐらい直美と自分が重なっていましたし、直美にとって一番愛した人で、強さも弱さも教えてくれた大事な人が亡くなってしまったことを受け入れがたくて、苦しくてたまらなくて。でも、ボタンが取れていたのも、直美がボタンをつけている姿を見たいからという理由も吾郎さんらしくて、許したくないけど、そんなところを好きになったんだよなと、二人らしい最後だったなと思います。


 

――寛太(藤原季節さん)も再登場しますが、こちらの再会はいかがでしたか?
上坂:17週の直美の母・文さん(内田慈さん)の時以来だったので、寛太も良い人なんだな、という終わり方から、まさかまだ詐欺をしていて、しかも直美に関係のある派出看護婦会を掲げていて、なぜ!?と(笑)。でも、そこがブレないのが寛太らしさでもあり、怒りももちろんありますが、そこで初めて寛太がなぜそんな人生を生きているのか、今までに無かった気持ちを抱くきっかけにもなります。
直美が偽の派出看護婦会を無くすために、自分たちが正式だと信じてもらうにはどうすべきかという問題に寛太も重要な人物としてかかわってきます。境遇も似ていて、大きく分けたら同志だった二人が、年も経験も重ねて変わっていってしまった部分が現れると思います。
――恵風看護婦会を立ち上げ、りんも直美もそれぞれの患者さんと向き合うこととなりました。りんが派出看護を担当した宮川佳枝を演じた相田翔子さんとの共演はいかがでしたか?
見上:相田さんはすごく可愛らしくてキュートで、ものすごく品のある方で、この役にぴったりな方だなと思いました。脚本を読んで想像していたより、自分自身でできることが減っていく恐怖や迷いを少しずつ前向きに捉えながら、自分の人生がどうしたら豊かになって、病気と一緒に生きていくにはどうしたら良いか考えていく姿が、よりリアルに感じました。派出看護は普通の病院での看護とは違うと、りんも直美も劇中で言っていて、自分たちのやり方を押し付けずに、患者さんの人生にどう寄り添っていくのかが大事だと考えているので、それぞれが悩みながら、“看護とは何か”を考え続ける場面を、今後も楽しみにしていただきたいです。
――直美が担当したのは太田光さん演じる遠藤平蔵でした。太田さんはどのような方でしたか?
上坂:まず最初に言わないといけないことがあって……太田さんが撮影現場にすごく美味しいふわふわのドーナツを差し入れてくださって、それをいただいたんですけど、太田さんに「ごちそうさまでした。美味しかったです」と伝えたら「俺が全部おごって差し入れしたことを、まず初めに公の場で言ってくれ」と言われたので、この場を借りて感謝を伝えたいです!(笑)。
太田さんはとても大らかで、控室でもずっとお話ししてくださって、優しくて心地の良い方です。平蔵さんは、お金がないから医者に行かないという、直美がもっとも看護を届けたいと考えていた人でした。だからこそ看護ができて嬉しいけど、「体は弱いけど、弱い人間じゃない」と核心を突かれることを言われ、平蔵さんとの出会いによって、直美がしたい看護はもしかしたらきれいごとかもしれないし、原点に戻って“看護とは何か”にも繋がってくると思います。
平蔵さんの長屋と宮川さんのお家が真逆で、全く違う環境ではあるけど、それぞれ派出看護に行くことによって得られるものがあり、それが今の訪問看護に繋がると思うので、引き続き注目していただけたらと思います。


 

――本作は二人の主人公のバディドラマとなりました。撮影中、二人で良かったと感じた瞬間はありましたか?
見上:まず、自分だけではなく同じものを背負ってくれる人が横にいてくれるのが、1年間を走り抜ける上で本当にありがたかったです。りんと直美の関係性においても、ずっと二人で同じ速度で成長していくのが、今までにない朝ドラになったのではないかなと思います。常に片方に何かあれば、もう片方が手を差し伸べて引っ張り上げるという関係性で、二人だからこそできる温かさのある、前に進む力のあるドラマになったのではないかなと思います。
上坂:直美もりんも、同じ問題に二人で悩む時もあれば、一人の人生しか生きていなかったら触れることのできないところまでお互いに触れて、りんのことで直美も悩んで、直美のことでりんも悩んで、肯定も否定もできて、自分の人生に入り込んでくれる存在がいてくれることも大事で、だからこそ人生が豊かになると感じました。
私は一人暮らしで、家に一人でいる時間の方が長いのですが、愛さんを含めて、隣に誰かいてくれることの大事さを感じて、改めて1年間、隣にいてくださって心強かったなと思っています。