本作の舞台は江戸の幕末から大転換期を迎えた明治黎明期。とある浮世絵師とそれを取り巻く人々がひょんなことから事件に巻き込まれ珍道中に繰り出す。
作・演出は、近年歌舞伎の新作書き下ろしや、劇団四季などの大規模作品を手掛け、目覚ましい活躍を見せる青木豪。緻密な人間描写と卓越した発想力で、ジャンルにとらわれず、常に演劇界の第一線を走り続ける青木が、先行き不透明でどこに向かっているのかさえ分からないご時世に、足が地につかない人々が戸惑い、彷徨いながらも自分の道を切り開いていく様子を爽快感あるエンターテインメントへと昇華させる。

主演を務めるのは、アーティストとしてはもちろん、俳優としてもドラマ・映画・舞台で活躍する安田章大。今作では明治初期を生きる架空の浮世絵師を演じ、舞台『マニアック』以来5年ぶりに青木とタッグを組む。
共演は、宝塚歌劇団元トップ娘役で、今作が退団後初舞台となる潤花、先日発表された第31回読売演劇大賞で最優秀女優賞を受賞した池谷のぶえ、子役時代から培われた演技力で活躍する落合モトキ、劇団イキウメに所属し複雑な役どころを見事に体現する大窪人衛、劇団☆新感線作品に多数出演する村木仁、俳優だけでなくアクション監督としても活躍する南誉士広、劇団青年座に所属しその演技力を磨く三浦拓真と、クセの強い実力派俳優陣が顔を揃えました。 さらに、滲み出る愛嬌と味のある芝居でパルコ・プロデュース公演に幾度となく登場する市川しんぺー、舞台のみならず、映画・ドラマにて時代劇から現代劇まで幅広い話題作に多数出演し、その柔軟な演技で引く手あまたな中村梅雀と、物語の土台をしっかりと支えるベテラン俳優も結集。

公開ゲネプロを前に初日前会見が行われ、安田章大、潤花、中村梅雀、作・演出の青木豪が出席した。

明日の初日を控え、安田は「コロナが長いこと続きましたんで、そこを経て今、改めて演劇というものが皆様の心に近づいてきている時代になったのかなと思いますので、ただただ来ていただいて、席に座って頭を空っぽにしていただける時間を提供できたらなと思い、皆で力を合わせてエンターテイメントを作った次第です。なので、楽しみです」と期待を寄せる。安田が演じる演じる浮世絵師・刺爪秋斎については「秋斎を当て書いてくれたんですよね、安田章大というキャラクターに。豪さんは『明るくてヤスがいることでポジティブになったり前向きになる』というところにエネルギーを置いてくださったんだなと実感していまして、ありがたい見てくれ方をしてるなと思っているのと同時に、稽古を踏んでいくと秋斎というのはかなりせっかちでして、豪さんそっくりなんだなと。その話は豪さんともしたんですけど『あれ、これ意外と僕だなって』って言ってました(笑)」と、青木の性格も投影されているようだが、「人がいっぱい混ざり合った、人の癖というものもちゃんと出てくるので、それが今回のエンターテイメント性にも詰まっているのかなと。自分のキャラクターとして稽古を踏んでいく上で面白かったです」と笑顔。

潤花は「初めましての皆様と約1ヶ月ほど、心いっぱい通わせて心いっぱい動かして形になったものが、明日お客様とお会いしてどんな幕開けになるのか、今から私自身もとても楽しみにしております」と話し、秋斎の前に現れる女性・ミツという役柄には「私自身もミツのような役を初めて生きるなと毎日感じておりまして、色んなものを抱えながらも生きる情熱に溢れたすごく魅力的な女性だなとも感じていて。安田さんが演じられる秋斎さんと二人の場面があるんですけれども、色んなミツがある中で、そこがすごく良い意味で力が入っていなくて色々そぎ落とされて本心の部分が出たりとか、それはきっと秋斎さんに引っ張っていただいて、そして私自身も共鳴し合えるような場面にしたいなと思いながら生きているんですけれども、またお客様が入って新たな感情も芽生えると思うので、ちゃんと吸収しながら生きていきたいなと思っております」と気合を入れる。

中村は「私が今まで舞台ではやったことのない種類の役を演じています。初っ端から奇想天外、予想をはるかに上回る登場の仕方をしますので。お客様の反応が楽しみです」と観客の反応に期待し、邏卒の組頭・山路守隆という役については「珍しくとっても悪い役なんですけど、このお芝居におけるメッセージ性をすごく含んでいて、どこかの国をずっと支配してきた権力の象徴みたいな存在で、ラストにメッセージを叫んでいますので、それがどういう風になるのかが楽しみです」とコメント。

「芝居はやっぱりお客さんに育てられてどんどん良くなるものなので、始まってお客さんの笑い声が涙などに支えられて、どんどんこの芝居が進化していけばいいなと思ってます」と話す作・演出の青木は、それぞれのキャストへの印象を聞かれ、まず安田には「エレベーターに乗って、(安田は)押し忘れてそのままずっといることがあって、僕の場合は乗ったら階を押すより早く閉まるを押して早押しクイズかってぐらいのものすごい勢いで押すので、そこはせっかちとおっとりの差ではないかなと思ってまして。だから稽古場でもヤスはぽーっとしながら芝居全体の空気を見てたり『豪さん、こここういう風にやったらええ?』みたいな感じで、俺なんかはとにかく巻いて巻いて!とか言って、そこは随分違うんだなと思っているんですけど、ただやっぱり彼が中心にいてくれることでこの場がすごく良くなっていると思うので、芝居にもそれが表れると良いなと思っています」と人柄に触れる。

潤花については「とにかく明るいです。ずっと笑っててくださって、今1番心配なのは、稽古場で潤花さんがとにかく笑ってくれるんで、皆とても気持ちよく芝居の稽古ができたんですね。これがいざ本番が始まった時に誰も笑わなかったらどうしようと思ってて。潤花さんが多分二人ぐらいここ(客席)にいてくれると、会場が満たされるぐらいの笑い声になると思うんですけど。皆をいつも素敵な感じに導いてくれてるなと思います」と朗らかな様子を語り、中村については「親戚に一人いてほしいお兄さん。すごく皆と遊んでくれるという感じが、初めてご一緒させていただいて、若手の男の子とかの所作だったり、刀の扱い方、三味線が出てくるシーンとかもあるんですけど、そういうところで決して先輩ぶらずにとても楽しく教えてくださって、いつも皆と楽しく遊んでくれる方だなって」とベテラン俳優の頼もしさを述べた。

安田と青木は2019年上演した『マニアック』以来、5年ぶりのタッグとなる。青木の演出を安田は「豪さんは最初は様子を見ながら何となく皆に動いてもらう感じなんですけど、全部自分の中でルール決まってるなっていうのは改めて実感しました。こういう演出をしたい、こういう音がなってほしい、こういうテンポ感で行ってほしい、全てにおいてちゃんと自分の中のプランがあって。そう役者さんがやってくれると考えつつ、多分台本を書かれてるんだなというのを今回5年ぶりにご一緒させていただいて、曲げれないこと、自分が心の中でちゃんと思ってることは本当に真摯に時間をかけて追求していく。そこは5年前より輪郭がはっきりしました」と話し、「今回は今までできてなかった部分をもう一度足し算をしてよくできるようにやってくてるんだなと感じましたし、だから僕はその分、豪さんに対して自分が謎に想うことは遠慮せずに質問をしましたし、そういうちゃんと心と心が通い合うやり取り、演出家だからとか俳優部だからとか関係なく、人がちゃんと対話をするということを今回の現場で改めて5年ぶりにしました」とやり取りを明かすと、青木も「この5年間で時々彼の芝居を見に行ったり連絡をしたりして、共通の言葉というか、長い時間をかけることでこの言葉はお互いにちゃんと共有できているなというものが出てきてると思うんですね。だから稽古場でも、前の作品よりも色んなことを言えるようになったのは、そういう共通言語を持てるようになったからじゃないかなと思います」と5年ぶりだったが信頼関係はより深まっているとのこと。

「今回の役は安田くんのある部分をうんと誇張していると思うんですね。周りをどんどん翻弄して自分のペースに巻き込んでいくという感じの役で、そういうところは一緒にいてみるとむしろおっとりと周りを自分のペースに巻き込んでいるのかなと」と安田の周囲を巻き込む力が役に反映されているよう。実際の安田はおっとりしているイメージだが、秋斎はせっかちなシーンがたくさんあり、安田は「自分の人生半分ぐらい命使ってるんちゃうかなってぐらい急いでいます。こんないっぺんに喋らないなって」と笑いながら語り、青木も「最初の稽古の頃よりスピードがすごい上がったよね?途中で『もっと速く!もっと速く!』って言って。台本を読んだイメージと僕が考えてたイメージとはだいぶ違ったんじゃないかなと」と稽古中に役を擦り合わせていったようで、安田は「自分の私生活の速度は捨てておいて、この世界を楽しんでもらいたいので」と作品へ真摯に向き合っているようだった。
続けて安田は、「この世界を自分たちで一緒に作っていくというのは、僕一人じゃ話は回らないので、皆で一緒に大きなものを作っていくという意味では、僕の一人相撲じゃないなと実感しています。それが楽しいんですよ、演劇って。皆さんがそれぞれの目を使ってクローズアップしていくというのは、皆で空気を作れたらできることであって、だから今体感していますし、一つ言葉を残すのであれば“日本に演劇を”ということで」と演劇への想いを力強く語った。

宝塚歌劇団退団後、初舞台となった潤花は青木の演出で1番感じたところは「青木さんが作られている現場の空気感と言いますか、安田さんも常におっしゃってますけれども、皆で作っている環境にしてくださってるというのと、だからこそ皆さんが同じ方向を向いてそれぞれ真摯に向きあっている姿が、毎日の稽古場で一瞬一瞬、この瞬間が宝物だという瞬間が私の中でパンパンに詰まっておりまして、こういう方々に出会えて、この素敵な作品の役に向き合える時間が本当に貴重だなと毎日思っていて、なので今日も明日も楽しみです」と嬉しそうに語る。

青木の作品に初参加となった中村は、「すごく奇想天外な世界観で、でもしっかりした芯がずっと通っていて、それを飽きさせないためにびっくりさせる展開がすごくたくさん散りばめられていて、それを毎回稽古のたびに思いつかれてやってみて、『違う!これは元に戻しますね』『やっぱりさっきの』って何度も何度も『もう1回いいですか?』『もう1回!』と、好きなんだなと。でもほんの0.何秒の差にすごいこだわっている、独特の世界が確固としてあるんだなと感じて、演じる側は責任を持ってやらないといけないと実感しました」と気を引き締めたとのこと。

秋斎に引っ張られたと話した潤花は、座長として安田に引っ張られた部分を「常です」と即答し、「初めましての方でしたし、初めての感情だったので自分自身すごく緊張もあったんですけれども、初めての稽古が安田さんとの二人のシーンで、すごく緊張するかなって思っていたんですけどこの温かな人柄ですので、変な緊張もなくお芝居に真っすぐ集中できましたし、人としても芸事に関してもたくさん学ばせていただいているので、ありがとうございます」とお互いにお辞儀し合う一幕があり、「日頃から対相手とのコミュニケーションを大切にされている方で、一日の始めの『おはようございます』から始まって、役を生きる上ですごく大切なものだなと思いましたし、一言一言言ってくださるお言葉に温かみがすごくあるので、だからこそより多く学べるんだなと思いましたし、私が一番感じているのは『皆で作っているから』と、だからこそ皆さんが一つになる感覚を中にいる私も強く感じるんだなと思いました」と話す。

また、中村から見た座長・安田の姿は「座長として皆の一体感を高めるということと、あとは繊細に色々感じていて、それに反応しながら、でも即座に言うのではなくてなんとかするために空気感を作ってるという、そういうものがちゃんと身についていらっしゃって大したものだなと。どうしたらいいかというノウハウがちゃんと心得ているなと」と絶賛。

今回は殺陣のシーンも見どころの一つとなる。久しぶりの立ち回りとなった安田は「やはり男の子って好きなんだなって実感はありました。幼少期から遊んでたりしましたから。自分自身が楽しくて仕方がないなという想いに掻き立てられました」と楽しさを滲ませながら、「殺陣をつけてくださる方によって型やこだわる角度が違うことが絶対あると思うので、僕が経験したことのないちゃんとした形で教えていただけたので、1からちゃんと学ばせていただけたので。楽しかったです」と話した。

さらに、普段から色付きのメガネを着用している安田に合わせ、物語の中でもメガネが登場する。そのことについて安田は、「上手にやってくださったんです。体のこと大事だよっていうことを本当に考えてくださって、明治初期の時代にメガネとか色メガネがどうだったのか、色々頭使っていただいて」と青木に感謝する一幕が。
青木は「これは新たに作った小道具で。小道具のスタッフさんと安田くんのメガネを絶えず作ってくれているスタッフさんと色んな微調整を図ってちょうど良いのを作ってくれたので、だから安心して舞台に立ってもらえるんじゃないかなと思います」と安田を思いやる。物語の中でメガネが重要なアイテムとなっているので、ぜひ注目してもらいたい。

そして、SUPER EIGHTのメンバーは舞台を観に来るか?という質問には「来てくれるんじゃないですか?だって“SUPER”になったんですから。皆SUPERの気持ちを持ってますから、空飛んで来るんちゃいます?」と冗談交じりに答えた。

最後に安田から公演を楽しみにしている方へ向けて「舞台上では色んな役者さんが、そして舞台裏では色んな部署の方々が一丸となって物語を紡いでいます。なので、その現場で起きているリアルな状況をぜひあなたの肌を使って、五感を使って感じていっていただけたらなと思います。なのに、エンターテイメント。そこが楽しいと思います。ぜひお越しください。ありがとうございます」とメッセージを送った。

PARCO PRODUCE 2024『あのよこのよ』は、2024年4月8日(月)から29日(月祝)まで東京・PARCO 劇場、5月3日(金祝)から10日(金)まで大阪・東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて上演される。