本作は、『恋はつづくよどこまでも』(TBS)、『着飾る恋には理由があって』(TBS)など、近年の人気ドラマの脚本を手掛け、数々の大ヒット作を生み出してきた脚本家の金子ありさと、青年座公演のほか、翻訳劇・古典・ミュージカルやオペラなど多種多様な作品を手掛け、緻密な演出で評価の高い、日本の演劇界を代表する演出家の宮田慶子が手掛ける心温まる地方再生の物語。

主演を務めるのは、12年ぶりの舞台出演となる相葉雅紀。

相葉雅紀が演じる湊孝成(みなとたかなり)が非常勤の教師として赴任した、とある山あいにある町・日永(ひなが)町が物語の舞台となる。
湊をとりまく町の住民たちを演じるのは、診療所の医師・高梨由佳子役に、アイドル活動を経て、現在は女優としてだけでなくテレビ番組のMCなど多方面で活躍する秋元才加、日永小・中学校の校長・及川太一役に、出演する作品ごとに多彩な演技で印象を残し続ける忍成修吾、町で生まれ育った青年・野村伊吹役に、子役としてキャリアをスタートし、「ウルトラマンジード」の主人公などヒーロー役もこなす濱田龍臣、校長の妻・及川美樹役に、シリアスからコメディーまでどんな役どころも演じ分ける演技派 須藤理彩、喫茶店の自称看板娘・難波さつき役に、近年舞台を中心に女優として目覚ましい活躍を見せる青木さやか、日永町の町長・本田太一役に、「阿佐ヶ谷スパイダース」メンバーで、外部作品にも多数出演する中山祐一朗、そして、町はずれに住む老人・植村久志役に、時代劇などで魅せる重厚な演技から、昨年末の紅白歌合戦を筆頭に様々なジャンルで異彩を放つ松平健といった、それぞれ演技派の顔ぶれが揃った。

フォトコール後に行われた取材会には、相葉、松平、脚本の金子、演出の宮田が出席した。

開幕を目前に控え、相葉は「ずっとやりたいと思っていた舞台をこんなに素敵な皆さんに囲まれて出来ることを幸せに思いながら毎日吸収出来ることを吸収しようという想いでこの1ヶ月稽古をしてきて、ようやく今日が来ました。本当に楽しんでいただけるように精一杯やるのは大前提なんですけど、個人的にもお客様の前に立つっていうことをすごくしたかったので、ちょっと緊張はしてるんですけど、楽しんでやりたいと思います」と、念願の舞台出演に喜びを語る。

12年ぶりの舞台出演で、稽古期間を振り返ると、「つらかったです(苦笑)」と一言。
「結構しごいていただいたので、12年間分のダメ出しをされたみたいで、なかなかハードな期間でした。けど今日を迎えられて本当に良かったです。あんまり言いすぎると後で怖いので……(笑)」と宮田の顔色を伺いながら、今回はかなり難しい役柄だったようで、「結構ハードな役なので、そこに自分を持っていくって作業が、自分に寄せちゃダメなので、そこの作業は大変でしたね」と話す。

宮田から稽古中に何かアドバイスは?といった質問には、「手取り足取り、12年前もそうでしたけど愛のあるしごきをしていただいて。たまに金子さんが稽古場に見に来られていたんですけど、その時は本当に褒めていただいてすごく嬉しかったです」と、明かした。

12年ぶりのタッグとなった宮田は、「稽古の途中で『ごめんね、12年分のダメだししてるよね。そりゃ消化できないよね』って反省したんですけど(笑)」と振り返りながら、「やはりこの12年間、相葉さんご自身が本当にたくさんのすごい経験をなさって、ものすごく当たり前ですけど素敵な大人の男性になられて、ものすごく中身が充実なさったって実感しまして……。その分、今回金子先生が書いてくださった本がすごくハードルが高くて、とても真摯に受け止めてきちっと重ねていかないと出来ない役柄設定なので、そこにきちっと向かい合っている時に中身が充実した分苦しんでいたっていう感じでした。これをどう受け止めてどう表現したらいいんだろうっていうことが、しごいたというより日々ご自分の中で探しながら深めていくような。もちろん稽古場としては一番ハードだけど、ここは楽しいと是非とも思ってほしいと思いながらしごいてました(笑)」と、役と向き合う相葉に愛のあるしごきを行っていた模様。

さらに金子も、「お二人の師弟関係が出来上がっていて、そこに信頼してお預けするだけなんですけども、相葉さんは12年ぶりに会って、何回か言ってるんですけど、かっこよくなったなあと、男前だなと頼もしく思ってまして。そして演劇界のレジェンドの松平さんを今回迎えられることの光栄さが、12年間頑張って良かったなって感じがしております」と語った。

松平とは初共演となる相葉。松平の演技を間近で見て、「すごいですね。対峙して感じました。目の力もそうだし、放って来るパワーもセリフの言葉以上のものが伝わってくるので、それを勉強させてもらっています」とコメント。

そんな松平からは「日々変化していく相葉さんを見ているとすごく頼もしかったです」という言葉を受け、嬉しそうにする相葉だった。

本作は金子の書き下ろし作品となっているが、相葉とタッグを組む上でどのような物語にしようと思ったのかという問いかけに、「私の持っている相葉さんのイメージが“ファンタジーとリアリティの融合”っていうテーマがありまして、居そうで居ない方、身近に感じるんだけど存在しないような、そこをすごく意識して、またさらにドラマや映画では出来ない舞台ならではの役柄、表現方法を意識して書きました」と答えた金子。

“ファンタジーとリアリティの融合”というイメージに相葉は「嬉しいです。結構『商店街に居そうだね』って言われるので……」と返すと、「絶対いないと思います!」と即答する金子の姿があった。

相葉と宮田の初タッグは2005年に上演された舞台『燕のいる駅』。
その当時の相葉について宮田は、「20代前半で、舞台もほとんどやったことがなくて、もう追っかけまわしてダメだししてました(笑)。『皆まで言うな』みたいな顔をしながら逃げるんです!「もうキャパオーバーです!」って言いながら「もう一個!ちょっと聞いて!」って、そういうことがあったなって懐かしく思い出すぐらい今回はすごく大人になったので、だから歳月は素晴らしいなと(笑)」と、時の流れを感じながら、「もちろんとんでもなく色んな経験なさって、色んなことを感じて考えていらしたんだなと実感して、とても嬉しかったです。でも、同時に欲も出ちゃいました」と稽古を思い返していた。

今回も稽古中に追いかけまわしたのか?という問いかけに、「ちょっとしたね」と答えた宮谷に、相葉も「ちょっと帰ろうとしたときに捕まえられて」と振り返りながら、ダメだしをもらえるのはありがたいこととして、「徐々にそういう機会って減ってくるので、本当にこの期間は吸収出来るだけしようって思って入ったんですけど、予想以上につらかったですね(苦笑)」と話した。

そんな相葉にとって宮田は「お母さんみたいな存在」として、「稽古入ってない時とかにお会いしたりご飯食べたりする時は本当に優しい顔をしているし……。稽古の時は鬼の顔ですけど(笑)、僕のお母さんです」とコメント。

相葉にとって、舞台をやることの意味については「身体一つでの勝負になってくるので、厳しいし甘くないんですけど、やっぱり自分がお芝居とかをやっていく上で、宮田先生の指導はすごく大きいので、だから定期的に受けたいなっていうのは本心であったんですけど、なかなかタイミングと時間とかかって……。その分吸収しようって想いで、全力で取り組んでいます」と語る。

今回の役柄が学校の先生役だが、記者からの「先生役が似合っている」という声には、「あんまり考えたことなかった……でも小学校の先生をやってみたいなって思った時期はあります」と返す相葉。
「もしやるなら何の教科?」と質問されると、「なんですかね……体育ですかね(笑)」と笑顔を見せた。

また、本作の大きなテーマに”再生”とあるが、相葉が今、再生したいものは?という質問には「こうやってお客様の前に立てるっていうのが、ずっと待ってたので。そこが再生してくれてすごい嬉しいです」と、舞台に立つ喜びをかみしめているようだった。

そして、同日に舞台の初日を迎えた親友・風間俊介との話となり、先日の会見で風間が「(相葉と)連絡を取り合ってる」と発言していたことについて聞かれると、「風間くんも今日初日なのでさっきLINEしました!」と話しながら、「返ってきません(笑)。忙しいんでしょうね」と、取材会時にはまだ返信がなかった模様。「すごい嬉しい反面、見に行かれないし来てももらえないのが寂しいですけど、個人的に風間くんが家に来た時にちょっと長ゼリフを披露します!」と、笑いを誘った。

さらに、久しぶりの舞台出演に嵐のメンバーからの反応はあったのかという問いかけには、「松本くんは『ちょっと時間見つけて来るから』って言ってくれてるんですけど、皆忙しいので。リーダー来てくれてもいいんだけどな……。連絡してみます!」と笑みを見せる。
メンバーとは頻繁に連絡を取っているようで、「二宮くんとは今度ご飯行こうって話はしてるし、翔くんともご飯行ってるし、結構皆繋がりありますね」と、変わらない仲の良さを伺わせた。

最後に舞台への意気込みを聞かれ、「全力で皆で作ってきた舞台なので、来ていただけるという方は本当に楽しみにしててください。頑張ります」と力強く締めくくった。

東京公演は、6月4日(土)から6月19日(日)まで新国立劇場 中劇場、大阪公演は6月29日(水)から7月3日(日)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演される。