本作は、数々の映画音楽を手がけてきた作曲家岩代太郎が、これまでの活動と一線を画し、新たなフィールドでクリエーションを行いたいという想いのもとに発案されたプロジェクトの第二弾の公演となる。

「演劇」と「演奏」で、ひとつの空間に「言葉」を創り出したい。音楽が雄弁に言葉を語り、そして台詞がその音となり、岩代が描いた音楽と共に一つの物語の世界を観客に届ける、そんな舞台芸術のカタチを『奏劇』と名づけた。
「人には誰にも音があり、私は相手の印象をハーモニーで感じ取ろうとすることがある」と語った岩代太郎の言葉から発想を得た本作。

本作は、孤児院で共に育った三人を中心とする物語。
原案の岩代太郎と同じく、人の心の模様を「音」で感じとる才能を持ち、ピアノを通して人の心を描写することができるサム役に三宅健、心理カウンセラーとなり、サムと共にカウンセリングを生業とするトムを藤木直人。そしてこの二人をから孤立し、突如として二人の前に舞い戻ったキムを、今や成長著しい大鶴佐助が演じる。

そして演奏はバンドネオン界の新風・三浦一馬、そしてバッハからジャズ、タンゴ、ポップス、自作自演までジャンルを超えた演奏活動を展開するチェリストの西谷牧人ともに岩代太郎が自ら作曲した楽曲を彼らとともにピアノで参戦。
三者三様の個性がそれぞれの音を放ち、そして3人の音楽家が生演奏で物語を「音楽」で語っていく。

公演初日を前に、行われたフォトコール及び取材会。取材会には、三宅、藤木、大鶴、原案・作曲の岩代が出席した。

まず、「奏劇」のコンセプトについて問われると、「極めて簡単に申し上げるとですね、あんまり僕はオペラが好きじゃないんですよ。キャリアを重ねるとよく作曲家のもとにはもうそろそろオペラを書きませんかという依頼のお話が来るんですけども、オペラに興味ない代わりに何か新しい文学や音楽を総合したような、総合芸術の作品を何か自分なりに模索したいなというところからこういう企画を思いついて、少しずつ始めています」と語る岩代。

役者は台本を持ちながら物語を進めていくが、朗読劇ともまた違った内容となっており、「一言で言えば、音楽がなければやっぱりもう成立しないんだっていう必然性を見出したいというような思いです。これからある程度コンスタントに私のライフワークとして続けていきたいと思っています」と展望を述べる。

普通の舞台とはまた違った本作について、三宅は「僕自身は朗読劇も経験したことがなかったので、朗読劇でもなくて演劇でもなく、その中間が奏劇というものなんだと思いますけど。演奏家の方々が奏でてくださる音楽に役者人が寄り添い、役者人が発する言葉に音楽家の方たちが寄り添ってくださって、お互い奏でるハーモニーでひとつの役になっていくっていう感覚は初めての経験でした」と特徴を語る。

台本を持ちながら演じることについては「大変です。肩が凝ります」と素直な感想が。
セリフを丸暗記するわけではないので、楽ではないか?という質問には「演出の深作(健太)さんから言われたのは、『覚えてしまって腹に落ちてしまうとまたそれは違う』ということなので、完全に覚え切らないでやらなきゃいけないっていうのも……何度も読んでいて、だんだん気づかないところで覚えていっちゃうんで。でも、あくまでも僕たちは、音楽家の方たちのようにスコアを見ながらセリフを発するっていうような感覚で台本を持っているっていうことなのでそれは結構難しいです」とこの作品ならではの難しさがあることを明かした。

藤木は、「岩代太郎さんとは20年以上前から面識があって、いつか一緒に何かやりたいねって言ってくださっていたので、今回こうやって形になって、しかも太郎さんがステージ上でピアノを引いてくださるっていう。めちゃくちゃ豪華だなと思って毎回贅沢を味わっています」と感慨にふける。

大鶴も「僕も朗読劇をやったことがなくて、しかもこの奏劇はちょうど中間に位置するような作品なんで、すごい新鮮みもあります」と話し、「あと最初お話を聞いて三宅さんと藤木さんちょうど十個ずつぐらい(年齢が)違うんですけど、その三人が幼なじみって聞いて、最初『え?』って……」と戸惑っていたことを振り返ると、「いやいやいや。どういうこと?」と気になる様子の藤木。
大鶴は「違います!全然イメージ湧かなかったんですけど、稽古場で蓋開けたら幼馴染にしか考えられないです」と言い切った。

岩代もキャスティングの時に年齢差のことは検討したと話し、「特にキム役は若くてもそれなりに態度がでかいやつが良いっていうことで選ばせてもらったんですけど、意外と実際お会いしたらとても謙虚な方でした」と称賛した。

3人の中で一番年上にあたる藤木は「精神年齢が幼いのでちょうどいいんじゃないですか(笑)」と笑いながら、「佐助くんが、やっぱり一番年下だけどめちゃくちゃしっかりしてるっていうか、上手なので、僕はもう佐助くんのファンになりましたね」と大絶賛。
それには大鶴も「嬉しい!」と笑顔を見せ、「本当に壁を作らず、受け入れてくださって感謝しかないです」と恐縮する姿があった。

三宅も「稽古期間は短かったんですけど、ちゃんと幼馴染になれてるんじゃないかなって」と3人の関係性が築き上げられているようだった。

出演者たちについて、岩代は「この3人以外にも黒田アーサーさんとサヘル・ローズさんにもご出演いただいているんですけど、先ほど申し上げたように奏劇っていうのは僕が思いついただけで結局のところまだゴールラインがちゃんと見えてないんで、そのゴールラインが見えてない新しいカテゴリの手探りの作品にも関わらず、本当に出演者の皆さんは真摯に作品と向き合って、懸命になって努力していただいて、その姿勢を見るだけで頭が下がる思い出。まだ初日は開けていませんけど、感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝を伝える。

12月も半ばとなり、2022年はどのような1年となったか問われた三宅は「充実した1年です」と振り返り、「コロナっていう環境の中で、ファンの方々と直接会える機会をたくさん設けてもらったことはすごく自分にとっては幸せなことで、今日もそうですけど、観にきてくださるお客様たちと、こうやって『奏劇』でお会いできるっていうのはすごく自分にとっては嬉しいです」とファンへの想いを語った。

最後に初日へ向けてキャストからメッセージ。

三宅は「今回結構キャパの問題もあってなかなか激戦で、あの観に来られる方の方が少ないかもしれないですけど、ぜひともチケットをゲットした方々にはこの新しい奏劇という芸術の形を贅沢な音楽と共に楽しんでいただけたらなと思っております」

藤木は「このクリスマスシーズンにはちょっとヘビーすぎるお話ですけれども、やっぱり太郎さんをはじめ、素晴らしいミュージシャンの方が演奏してくださるんで、来てくれた方は素敵な時間を過ごしてもらえたら嬉しいです」

大鶴は「三宅さんの台詞であるように、『音楽を聞く人がいなかったらノイズ』っていうセリフがあるように、お客さんが入って聞いてくださって見てくださってこの作品が完成すると思うので、ぜひ一緒に作品を作り上げていただけたら幸せです」

奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』は、 2022年12月15日(木)から12月24日(土)までよみうり大手町ホール(読売新聞社ビル)にて上演される。