
鬼才・佐藤二朗が映画にすべく執筆するがその過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、お蔵入り寸前となっていたオリジナル脚本が編集者の目に留まり、永田諒の作画によって漫画化した「名無し」。数奇な運命を背負い“名前のない怪物”と化した男の希望と絶望、そして狂気を描破するこのサイコバイオレンスは好評を博し、“映像化不可能”の烙印を覆し昨年10月、瞬く間に映画化が決定した。
自ら生み出したキャラクター“名無し”を演じるのは、『爆弾』(25)で冴えない中年男の皮を被った知能犯・スズキタゴサク役を怪演し、第49回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞受賞をはじめ、様々な映画賞を席巻している佐藤二朗。共演には、近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平、タレントの枠を超え女優、プロデューサー、実業家としても活躍するMEGUMI、同じ演劇畑出身の佐藤の熱望に応えて駆けつけた佐々木蔵之介が名を連ねた。そして『悪い夏』『嗤う蟲』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫監督が劇中に仕掛けられた謎とタブーに潜む深い闇をえぐり出す。見えない刃が光るとき、切り裂かれたスクリーンの向こうから、名もなき怪物の魂の叫びが日本を震撼させる。
5月22日に封切られ、公開以降2週間を経た現在も全国各地で満席回が続出するなど、熱狂的な盛り上がりを見せている本作。SNS上では、「今年一番ヤバい映画」「観た後に誰かと語らずにはいられない」「佐藤二朗のキャリア史上最恐」「こんな邦画は見たことがない」など絶賛と衝撃の声や、込められたメッセージへの考察が相次ぎ、映画ファンのみならず幅広い観客層へと波及。連日SNSを中心に口コミが拡散され続けており、大きな話題を呼んでいる。
昨日、一人でTOHOシネマズ川崎に本作を見に行ったと話す佐藤は「実は『爆弾』という映画の公開時期も3回ほど見に行って、爆弾のスズキタゴサクは人を直接殺めないので、見終わった後に見つかっても良いかと、実際に何人かにバレてしまったんですけど、今回の話は何がなんでもバレないで帰ろうと思いまして」とひっそりと劇場を後にしようしたことを話す。
かなりの反響を目にしながら「賛否あっていいと、遠慮なくSNSに書いてくださいと行ったんですけど、本当に賛と否が二分してて。書いた本人でさえ気づかないような考察とか、そんなつもりで脚本を書いてないんだけど、確かにそう取れるかっていう考察とかもあって。僕や監督の手を完全に離れて生き物のようにどんどん育っている感じがして、それはそれで作品としては幸せなことなんだなと」と、嬉しそうに語る。
興行収入2億円を突破する大ヒットに、佐藤は「小規模の公開にしては異例のヒットで、個人的には日本映画界に言葉にできないほどの光を見ます。ヒットするだろうなってテイストとは違うし、SNSでも賛もあり否もあり考察もありという中で、たくさんの人に見ていただいているこのオリジナル作品が、すごい希望の光だなと」と心境を明かし、「日本映画、原作ものばっかりになっちゃうのも寂しいので、オリジナル頑張らなきゃなという思いは日本映画の関係者は皆思っていて、その光になればいいなと思っています」と期待を寄せた。

丸山は「映画は元々は余白の芸術だと思うんです。考察したり、ラストで何かピースが欠けているとか、そういうのが詰まった作品だし。どちらかというとエンタメ的なものが見やすくて最後にちゃんと解決するものがたくさん見られている中で、こういう映画が多くの方々に届いているこの現状は、エンタメだけじゃなく、何か自分たちの中で鬱々と抱えている人たちが多い世の中で、この映画を見ることで浄化してくれたり、どこかしら自分の救いを、物語自体は圧倒的な絶望の部分もあるんですけど、どうにかしたい、どうにかしなきゃと思っている人がいるのが、多くの方に届いている一つの指標のような感じがするので、出演している側ですけど嬉しく思います」と熱く語り、「こういった作品が今後どんどん排出されて、皆さんの心を癒したり潤したりしていってほしいなと」と笑顔を見せた。

また、会場にいる観客へ何回見に行ったかのかを問いかける場面もあり、回数を増すごとに「癖になってるね!ラーメン二郎みたいになってきてるんじゃない!?」と声をかける丸山の姿も。
そこで佐藤から、作品について言及しようとするも「初めて見る方もいらっしゃるか…」と躊躇し、話していいか丸山に相談する一幕が。「初めて見る方にはなるべくまっさらで見ていただきたいので…」と呼びかけた上で、「山田太郎が名前を考えるところがございます。この名前にしようって左で書くんですけど、城定監督によると何を書いたかちゃんと見てれば分かる、と。私も昨日川崎でよく見たら、分かったんです」と注目ポイントを明かすと、何回か鑑賞した観客は分かっていることが判明し、その観察眼に「すげえ!」と驚く二人だった。

3人の子役たちとの共演エピソードを、丸山は「本当にお芝居が好きな御三方なんだなと思ったし、オフの時はそこらへんにいるような子どもなんです。健康的な健全な子どもで、自由に楽しんでいて、お芝居になったらバシッと切り替わって。俺、もっと頑張らなあかんなと思わされるぐらいのプロっぷりで、今後どんな俳優さんになっていくのか楽しみな子たちです」と絶賛。「女の子を動物園で抱きかけるシーンがあるんですけど、キリンに餌をやるシーンで、何テイクかあったんですけど、キリンが女の子のここ(顔)をベローン舐めちゃって、うわーん!って泣いて、可愛くて。大丈夫大丈夫、って言って、その後のOKが使われているんですけど、頑張りました、彼女」と、ハプニングを語った。








