――本作に出演が決まった時の心境を教えてください
舞台が岡山ということで私の地元でもあり、作品で岡山弁を喋るのは今まで無かったことなので単純に嬉しいです。あと、演出の福原充則さんとご一緒できるのが個人的にすごく嬉しくて。福原さんは演出以外にも脚本も手掛けるなど、経験豊富な方なので、福原さんの声にしっかり自分が応えられるように頑張りたいと思いました。
――台本を読んだ感想は?
すごい会話劇です!舞台でこういう会話劇に挑戦したことが無いので大丈夫だろうかという不安もありつつ……。台本を読んだ感じでは、高校生の頃と大阪に出た頃と、時間軸が行ったり来たりするんですね。これはどうやって転換するんだろうとか、想像がまだ追いついていない感じではあるんですけど。作品的には夢を見ていた高校生たちがそれぞれ人生に折り合いをつけていって、期待していた未来とは違うことになって地元に帰ってくるという。だから青春群像劇と言えど、甘酸っぱい感じではなくすごく酸っぱい作品ですが、観ている方に希望を感じてもらえるような作品にしたいなとも思っています。楽しく酸っぱい感じにしたいです!
――台本から岡山っぽさはどれくらい感じましたか
岡山っぽさ満載です!「~じゃけぇ」とか、東京に出ているとやっぱり忘れちゃうんですけど、実家に帰って母親と喋るともう自然と出てきちゃいますし、今回は蛙亭の中野(周平)さんも岡山の方ということで、多分二人で喋っていたら自然と岡山弁が蘇ってくるんだと思っているので、岡山弁が飛び交う現場も楽しみで仕方ないです。読んでいても愛おしくて岡山に対する愛が深まりそうですし、支えてもらった、大好きな地元のことを皆さんに知ってもらう良い機会にもなると思うので、楽しい舞台にしたいなと思っています。

――桜井さんが演じる韮沢の役どころは?まだ稽古に入る前と伺いましたが(※取材は9月中旬)、現時点でどのように演じようと考えていますか?
誰もが「韮沢は学校のスターだから」というような、しかもそれをまんざらでもない感じで受け入れて、大阪で一花咲かせるぞ!と思っている高校生です。プロのダンサーを目指しているのでダンスシーンもあります。私も高2から仕事をしていて、高3の頃には結構周りからちやほやされていたので、自分で言うのもあれなんですけど(笑)、韮沢のスター感は思い当たる節があるなって。だから自分の経験も思い出しつつ、ダンスは習っていたわけではないですがしっかり魅せていけたらなと思っています。あとは、時間軸が行ったり来たりするんですけど、すごく自信に溢れている高校時代というのを意識したいなと思っていて、そこが楽しく観ている方にも眩しいと思ってもらえるくらいフレッシュに演じられたら、それがボディーブローのように後でじわじわ効いてくると思っています。
――デビュー当時のご自身の想いと韮沢は重なる部分はありますか?
私は元々芸能界をすごく目指していたわけではなかったんです。なんとなく、キャビンアテンダントやアナウンサーといった仕事に憧れていました。なので、高2から事務所に所属しましたが、ラッキーなことにお話をいただいてという感じで、そこから何年か経てこの世界でしっかりやっていきたいという決意が固まったので、韮沢みたいに初めから自分のやりたことが決まっていて、わき目もふらずにそこに向かうという感じではありませんでした。
――韮沢は大阪に出ていくも上手く行かず、地元に戻ってくることになりますが、桜井さんは芸能活動を始めた当初、大変だと思ったことはありましたか
最初は広告の仕事から始まり、舞台で女優デビューさせていただいたんですけど、この世界って、世に出てしまえば、「プロです」と名乗ってしまえばプロというか、例えばお芝居の学校に通ったりプロセスを踏まなくても、仕事をしてしまえばプロでなくてはいけないみたいな感じになると思うんです。そこで生半可な気持ちで表に出てしまったので、周りから期待される自分とそうじゃない私の擦り合わせに時間がかかってしまったんですね。だから最初の頃は、本当は望んでこの世界にいるわけじゃないのにって甘えている自分もいて、それで事務所からお説教されたり「もう辞めたい!」って母親に泣いて電話したこともありました。でも、今考えるとすごく甘かったなって。
――そんな仕事との向き合い方が変わったきっかけは?
デビュー当時からずっと付いてくださっていたマネージャーさんが事務所を辞めることになったのがきっかけです。本当にものすごい愛情で育ててくださったマネージャーさんで、世間に見せる桜井日奈子というのをすごく管理してくださったといいますか。それだけ愛情を持って育ててくれたマネージャーさんですから、今後の活動もきっと見てくれていると思いますし、感謝の気持ちは今後の活動を通して伝えていきたいと思っているので、負けるわけにはいかないという想いになったのはその方とのお別れがあってからです。

――福原さんの作品に出られて嬉しいとおっしゃっていましたが、以前から福原さんの作品を観たり興味を持っていたのでしょうか
『あなたの番です』など一世風靡したドラマを手掛けていらっしゃるので、それを知った時に「ご一緒できるの……!」って驚きと、あとはビジュアル撮影の時に福原さんにお会いできたんですけど「これから球場で舞台やるんだよね」っていう話をされていて、球場を借りてお芝居をするんだって、びっくりしませんか?そういうワクワクするようなことを考えていらっしゃる方なんだっていうのを知って、より楽しみという感じです。
――実際に福原さんの台本を読み、どのようなところが面白いと感じましたか?
ものすごい会話劇なんですけど、クスッとできるようなポイントがいくつもあるんです。福原さんご自身は高校時代の思い出なんてすごく遠いはずなのに、確かにこういう会話してたなっていうような、ギャルい会話というのも書かれていたりするので、脚本家さんの思考もあり、演出家さんの思考もあって、常に色んな視点で考えながら生きていらっしゃるんだろうなというのがこの脚本を読んでいても伝わるので、どういった演出をされるのか本当に楽しみで仕方ないんですけど、怒鳴られたらどうしようと思って……(笑)。女優デビューした舞台が厳しい現場だったんです。すごく熱血的に演出なさる演出家さんだったから、お芝居が初めてということもあって本当に毎日泣いていたし、自分の感情がガーって高まって鼻血なんかも出してしまうみたいな……でもそういう熱い経験をまたしたいなと、ちょっとMな部分があるんだと思うんですけど(笑)。福原さんがどういうタイプの演出家さんか分からないですけど、どうなっても楽しみでしかないです。

――ダンスシーンもありますが、稽古に向けて準備や練習は?
一度、今回振付を担当される方と、どれぐらい皆が踊れるのかという擦り合わせの時間があって、私ともう二人、高校時代に仲が良かった仲間役のメンバーと踊ったんですけど「覚えが速いね、じゃあしっかり目のハードなやつを作っても大丈夫そうだ」と言っていただけて。「運動神経も自信ありますし、体力も自信あります。稽古さえすれば応えられると思います」と私も言ってしまったがためにどれぐらいのものが来るのか分からないんですけど(笑)、でも頑張れる自信はあります。
――主演を務める作間龍斗さんはどのような方ですか
作間さんは年齢は下ですけど早くからお仕事をされていてすごく達観されている感じがあったので、年齢偽ってますか?というぐらいとても落ち着いていらっしゃったのがすごく印象的でした。まだたくさんお話はできていませんが、話している感じも優しそうでコミュニケーションをしっかり取っていけそうだなと、私が人見知りなのですが、不安は無いと思っています。韮沢と小渕は二人ともスターというか、小渕も“映画”という自分の好きなものがはっきりしていて、好きなものを貫き通して東京に上京するわけですが、二人とも高校時代の夢見ている時間がキラキラすればするほど物語は渋くなっていくので、二人ですごくキラキラしたいなと思っています。
――稽古に入る前は緊張しますか?
しますね。まだビジュアル撮影しかできていないのですが、稽古は今回1ヶ月半くらいしっかりあるので、その中で仲良くなれるとは思います。ちょっとずつですね。