――放送も終盤となりますが、1年間二人で走り抜けてきて、俳優としてお互い尊敬できる点や刺激を受けた点はありましたか?
見上愛(以下、見上):樹里ちゃんはとにかく大らかで、周りが安心する空気感を常に持っていて、どんなに現場が大変でも1回も愚痴を言っているところを聞いたことがなくて、ずっと変わらない状態で現場にいてくれたことが、皆もすごく助けられたと思います。お芝居では、ものすごく感受性が豊かで、他の人のお芝居を受けて柔軟に直美を演じている印象があって、だから多分、自分でも想像ができなかったところに直美が行く感覚があったのではないかと思っています。そうやって生まれる化学変化が、作品を作っていく上での良さだったりもするので、色んな直美の表情を一番近くで見せてもらえて、幸せでした。
上坂樹里(以下、上坂):愛さんは、リスペクトすることがたくさんあります。どれだけ1日が長いスケジュールの時や、自分が一番大変な時でも周りを見て、『風、薫る』という作品を毎日先頭で引っ張って照らしてくれたのは、愛さんの力のお陰だなと思っています。お芝居に関しては、感受性が豊かで色んな表情を見せてくれたとおっしゃってくださいましたが、それを引き出してくれたのはりんであり、周りの皆さんの力です。愛さんはリハーサルの段階から、りんがこのシーンで求められていることは何か、監督と細かくお話しされている姿が印象的です。愛さんとりんが切り替わる瞬間が分かるんですけど、その瞬間のりんが私を直美にしてくれたので、ともに1年間走り切ることができて、感謝の気持ちでいっぱいです。
――長い撮影の中で、辛かった時期はありましたか?
見上:年明けですかね。年内はロケも多かったのでゆったりと撮っていましたが、年明けから養成所に入学して、りんや直美が学ぶことを私たちも学びながら撮影していかないといけなかったので、やることの多さと、1日で撮るシーンが急に増えたなとてんやわんやしていました(笑)。ですが、女子校出身ということもあり、同級生として色んな女性陣と一緒に撮影できることがすごく楽しくて。独特な空気感で、仲は良いけど、撮影前に役に集中しているタイミングとかが話さなくても初めからなんとなく分かるメンバーで、それが初めての感覚で不思議だったんですけど、なんとも言えない絶妙なバランスの皆だったからこそ、大変なこともありましたが、かなり楽しい期間でもありました。
上坂:看護学校の日は朝から夜まで一緒で、大変なこともありましたが、皆がいたから乗り越えられました。すごく盛り上がっている時もあれば静かな時もあって、皆が無理しないで自然とその空気に馴染めたと言いますか。看護学校のパートが終わり、人数が少なくなった時に充実していたなと振り返って思います。でも、個人的に辛かったのは吾郎さんの週です。


 

――お二人の仲の良さがひしひしと伝わってきますが、どのように関係性を深めていったのでしょうか?
見上:日々の積み重ねで信頼関係も生まれていき、なんとなくお互いが何を考えているのかテレパシーのように分かってきて、それがりんと直美という関係に通じるところがありました。自分でも1年間同じ人と撮影し続ける経験がないので、新しい感覚でした。自分のことのように分かるわけではないですが、樹里ちゃんが今何を考えているんだろうと考える時間が自然と増えていって、それがすごく幸せなことで、不思議な感覚です。
上坂:家族よりも長い間一緒にいたので、撮影以外のお休みの日とか、例えばスーパーやお菓子屋さんに行った時に、「これ愛さん好きそう……」と自然と考えるようになりました。愛さんも休み明けのリハーサルの時に「これあげる!」と美味しそうなお菓子をいっぱいくれたりして、そういう掛け合いが当たり前のようになっていきました。
見上:会ってない時間も自然と考えちゃって、でもきっとりんと直美もそうだったんじゃないかなと思います。二人がずっと一緒にいたわけではなく、それぞれ違う人生を歩んでいるけれど、なんとなく相手の思考回路が分かってきたのは、二人の関係に近いものだと思います。


 

――役を通して看護師という職業に触れて、どのような印象を持ちましたか?
見上:撮影に入る前や初期の頃は、技術職という印象が強くて、養成所のパートが始まっても、包帯やシーツなど、色んな技術を自分たちも学んでできるようにならないといけない気持ちが強かったですが、イベントや撮影に看護師の方が来てくださっている中でたくさんお話を聞いて、すごく心を使うお仕事なんだなと印象が変わりました。りんも直美も派出看護をする中で、どうやったら患者さんのためになるかを考え続けていましたが、実際の看護師の方々も、マニュアルがない中で一人一人にどう看護していったら良いのか、患者さんが前向きになれるように、これからの人生をより良く生きていけるように考え続ける職業だと分かりました。
上坂:派出看護のシーンを撮っていく中で、訪問看護で大事なことは人の生き方や人生を否定しないこと、より良くなるようにサポートすることだとお聞きして、正解がなくても向き合い続けることや考え続けること、その過程が患者さんのためになるかもしれないし、だからこそ誰かの人生に寄り添って生きるということを、直美を通して感じることができました。
――実際に看護師の方からの反響はありましたか?
上坂:つい最近、SNSで現役の看護師さんから、りんや直美が頑張っている姿を見て、ずっとやりたかった訪問看護の道に進むことにしました、と感想をいただいたことや、直美と吾郎の間に明を授かったタイミングで、ご自身も婚約されたという報告をいただき、すごく感動してしまって。作品を通じて、きっかけを与えられたんだというのは、すごく幸せなことだなと思いました。


 

――今回の経験が、今後の俳優人生にどんなプラスの影響があると思いますか?
見上:まだ想像がつかないところがあって、というのも私はまだ終わった実感が得られていなくて……。その感覚を得るために何も無くなってしまったセットを見に行かせてもらいましたが、何も無い状態になっているのを見ても来週から始まるんじゃないかと、まだ今後のことを考えられずにいます。でも、始まる前から一貫して、豊かな人生を送っていきたいなと思っています。このお仕事がもちろん好きですし、大切に思っていますが、表現の幅を広げていくために、色んな経験をしながら、豊かにのんびりゆったり生きていきたいなという気持ちがあります。
1年間通して、りんという一つの役の人生に向き合い続けた1年だったので、きっと自分の考え方だけでなく、りんの強さや柔軟さ、思考回路に助けられる瞬間がいずれ来るかもしれないなとは思っています。でも今は本当に終わった実感がなく、一人だけ取り残されちゃって恥ずかしいです。とても寂しいです(笑)
上坂:私ももちろん寂しいです!直美という役と出会えて、1年間同じ役を生きて、お芝居以外でも、本当に感謝しきれないぐらいたくさんの方に支えてもらってこの1年間を経験できたからこそ、この先、自分の中で悩みや大変なことにぶつかった時に、この1年が支えになってくれると思います。
――もし、クランクイン前の自分にアドバイスを送るとしたら、どんなことを伝えますか?
見上:「頼れる人がいっぱいいるから大丈夫だよ」と言ってあげたいです。クランクイン前は、今までヒロインをやられていた方の話を聞いたり、姿を見たりしていたので、過剰に色んなものを背負わなきゃという気持ちでした。実際に始まってみたら、樹里ちゃんも、他にもたくさんの方々が支えてくださるし、自分が不得意なことは得意な人が補ってくださるので、一人で抱え込まずに、色んな人の胸を借りる気持ちで飛び込んで、と教えてあげたいです。
上坂:私がクランクイン前の自分にかけたい言葉は、「死ぬ気で頑張れ!」です!