――ドラマ『付き合ってあげてもいいかな』へ出演が決まり、原作や台本を読まれてこの作品のどのようなところに魅力を感じましたか?
- 鞘師里保(以下、鞘師):人間関係が深まっていく中で起こるかけ違いや、相手に近づきたいと自分が行動すればするほど、その欲と同時に自分の見たくない部分が現れてしまって、そこに葛藤している主人公たちの描写が丁寧に描かれている印象でした。冴子は恋愛経験もあって、みわを引っ張ろうとしているような関係性で進めていこうとしているのに、愛情が深まっていくうちに嫉妬心が生まれたり、子どもっぽいんじゃないかという自分に直面してしまったりするところが色んな場面で見受けられて、そばにいる人の生活を見ているような気持ちになって、没入すればするほど、自分でも思い当たる節が出てきたり、そういう時に醜い気持ちになるなと思い出されて苦しくなったり、非常に人間らしく描かれている作品だなと思いました。
- 小西桜子(以下、小西):良い悪いだけで決めつけず、綺麗な感情だけでない、人間らしいところも否定せずにまっすぐ描かれていて、たくさんのファンの方がいるのが納得の作品だなと思いました。私も大好きな作品になりましたし、私の周りにも作品のファンだと言っている方がたくさんいて、良い緊張感を持ちながら、頑張るぞという気持ちでした。
――ご自身の役柄の印象と、演じる上でどのようにアプローチしていったのか、教えてください
- 鞘師:冴子はグループの中でもお調子者やムードメーカーのような人当たりの良さがまずは特徴かなと思いますが、私は皆の空気を引っ張るような役割に立つことがあまり無かったなと思ったので、その先頭に立つ人のエネルギーって多分すごく大きいものだと思い、それはクランクインしてから模索していた部分もありました。物理的に朝ご飯を食べるようにしたり、激しい音楽を聞いてから現場に向かうとかもしていましたが、内面的な部分では、そうやって自分の弱さを明るさで誤魔化してしまおうとか、心配させないようにしようという優しさから生まれてくるものだったりするけれど、エネルギーを使うことをするのはしんどいのかもしれないな、と。私はそれだけのタスクをこなして、そのテンションに持っていけたので、その段階を経たという意味でも、そういう冴子を愛して、私も全力で演じたいなと思いました。
- 小西:みわは、色々なものに対する免疫や経験が少なくて、それでも本人はいたって真面目に頑張っている姿が可愛らしくてチャーミングなのですが、だからこそ演じるのが難しいなと思いました。冴子がみわに対して思うのと同じく、もうちょっと器用にやればいいのにとやきもきする部分もありましたね。ただ、同時に可愛くて守りたい、放っておけない気持ちになる魅力的な子だなと思います。
――山田佳奈監督、洪先恵監督とは、役柄やお芝居についてどのようなお話をされましたか?
- 鞘師:限りある時間の中でも、できる限り二人の心情やどうすれ違っている時点なのかを話し合わないと、大きなすれ違いになりっぱなしになる部分もあったように思うので、お互いに意見を出し合いながら、丁寧に作っていくことができたと思います。監督が思っていた心情と、私たちが考えていた心情が違うところもあったりしたので、どう落としどころを見つけられるのか、その場でしっかりお話しさせていただけたかなと思います。
- 小西:どのシーンも重要な意味を持っているシーンばかりだったのですが、その中でもお二人が楽しい空気感を作ってくださいました。クランクインの前に監督とお話させていただいた時に、私は普段、役者として求められることをやろうと思っているとお話ししたのですが、山田監督が「小西さんが思うみわを演じてくれれば、それをどう寄せるか、アレンジするかの調整はこちらが担うから。まずは小西さんが思うようにやってくださいね」と仰ってくださって。信頼してお任せできる、良いチームなんだなと思いました。
――演じる上で苦労した部分はありますか?
- 鞘師:各シーンに入る前に気持ちを作っていないと、トーンをキープするのが難しいシーンが多かったんですよね。ずっと心の中のコップの水を表面張力でプルプルさせている感覚のところが多くて、溢れさせなければいけない瞬間をコントロールするのがとても大変でした。それはお互いに気持ちを送りながら演じさせてもらっていた部分で、非常に苦労しました。
- 小西:みわは本人が自覚していないのに足りなさが出てしまったり、どんどんほつれが出てしまったりするようなキャラクターでもあるので、皆さんと相談して、一緒に作り上げていきました。親密な場面を撮って、喧嘩をしている場面、そこからまた初めましてくらいの場面だったりと、順番に撮影するのではないので、作品の感情表現が繊細だからこその難しさがありましたね。

――お互いの役で似ていると思うところはありますか?
- 鞘師:冴子は人に対して率直に思いを伝えるのが苦手な分、言葉にできない感情を音楽でフラットにしていると思います。実際ドラマの中でも、ライブでここが自分の居場所だと感情をぶつける描写もあって。私自身も、言葉で器用に思いを伝えられるタイプではなくて、気持ちを歌に乗せたりパフォーマンスをしたりすることが一番の救いであり、生きがいになっています。そういう意味で冴子とは私は同志だなと思いました。
- 小西:はじめは、自分とはあまり似ていないなと思っていました。でも、演じているとみわの中にある不器用さみたいなものは、私の中にも本当はあったもので、自分の弱さや恥ずかしい部分をなるべく隠すようになってしまっているんですよね。みわはそれが上手くできないんですけど、そんなところも可愛らしくて魅力的で。だからこそ、自分が恥ずかしいと思っていた部分も肯定されたような気がして、似ている部分もあると気づけたことは、とても良い出会いでした。
――原作がある作品ならではの難しさや、逆に魅力を感じる部分はありますか?
- 鞘師:髪型やギターの弾いているところなど、自分も冴子の形になっていくのはもちろんですが、冴子の人間性みたいなものを咀嚼していって、到達したい部分は決めていました。ですが、真似をしていく気持ちで役作りをすると、ドラマで演じさせていただける意味が変わってしまうと思うので、冴子というキャラクターの心に寄り添って一緒に歩んでいく気持ちだけは忘れずにいようと思いました。
- 小西:台本や原作の中に心の機微が丁寧に描かれているので、感情面での役作りを心がけました。それが雰囲気や香り立つものとして、見てくださる方に伝わると良いなと思って演じていました。
――本作の撮影を重ねていく中で、お互いの印象についてお聞かせください
- 鞘師:小西さんに初めてお会いした時に、纏っている柔らかい春風のような雰囲気というか、桜子というお名前の通りで、「みわだ」って直感で思いました。原作を読ませていただいていたのもありましたが、ここから一緒に作品を作り上げられるイメージがわっと広がりました。
- 小西:今回、実写化されるのも、鞘師さんあってなんじゃないかと思うぐらい、唯一無二の存在の方だなと思いましたし、表現者としてもたくさんの魅力を持っている方なので、今回ご一緒できるのがすごく楽しみでした。撮影が始まってからもすごく真摯で、お芝居もコミュニケーションの部分でも、最後まで駆け抜けることができたのは、鞘師さんのおかげだと思っています。

