――初の映像化となる松本清張最後のミステリー。台本を読んだときの印象は?
松本清張さんの持ってらっしゃる、あの独特の雰囲気の本格ミステリーの世界にのめり込みました。私自身、最後の最後まで、全く犯人がわからなかったのですが、監督から「観ている人にも最後の瞬間まで、一体誰が犯人なのっていう状態で演技してほしい」と言われていて。「私が最後まで怪しそうにするね」とか、現場のみんなで清張さんの遺作を作り上げようという気持ちが大きかったです。
――田中さん自身も初の清張作品に出演が決まって
最初は私で大丈夫かなという気持ちでした。今まで『ドクターX』や『貴族探偵』、『西郷どん』でもそうだったんですけど、コメディーな役が多かったんです。本格ミステリーでは小手先の技術は通用しなくて、いかにミステリーを魅せるかということが大事なのでドキドキしていました。

――以前、事務所の後輩である是永瞳さんが『ドクターX』での田中さんの色気がすごいと……(笑)
それもうずっと言ってるんですよ、瞳ちゃん(笑)。瞳ちゃんとは一緒にアクションレッスンを受けてるんですけど、毎回そう言って私のハードルを上げようとするんです(笑)。
――今作で女刑事の青木奈津美を演じるにあたって、どんな役作りをされましたか?
松本清張さんの作品としては剛力彩芽さんがよく刑事役として出演されていて、何回も観させていただきました。剛力さんを参考にしつつも、私らしさを出せたらと模索して。今回の場合だと、一個上の先輩役として平岡祐太さんがいるんですけれど、平岡祐太さんにツッコミを入れられるような、ちょっと強気な部下を演じてみました。私が失敗するはずないみたいな、そのぐらいプライドが高い感じです。
――村上弘明さん、陣内孝則さんお二人の印象は?
性格が正反対なんですけれど、お二人とも大好きです。特に村上さんは、私が娘さんに似ているらしく娘さんの名前で呼んでくださって。私も“お父さん”まではいかないですけど、すごく親近感が湧きました。和やかな現場でしたが、そこに陣内さんがスパイスを入れるというか、ジョークが本当におもしろくて(笑)。人として本当に尊敬する方々ばかりで、毎日撮影に行くのが楽しかったです。
――話の展開も気になりますが、田中さんが作中で注目してもらいたいポイントは?
最後の最後で人の業が露わになるというか。男女関係もただの好き嫌いじゃなくて、誰しも持っている醜い部分をふくらませてテーマにしているので、見終わった後に何か得るものがあると思います。そして私も全速力で犯人を追いかけています! 北海道まで行って撮影したり、すごく役に体当たりした作品でもあるので、ぜひ観ていただきたいです。
――『ドクターX』や『西郷どん』など、女優宣言されてから色んな役にチャレンジされてきましたが、演技に振り幅が出てきた実感はありますか?
ついてきたなって感じはします。特に前回の『西郷どん』ではタマという役だったんですけど、「タマさんがいなくなって寂しい」っていう声をいただいたのが嬉しくて。やっぱり反響をいただくと、役をものに出来た気がするので、“ああ、力になっているんだな”っていうのは実感します。
――今後挑戦してみたい役柄は?
アクションが得意なので、アクション映画やドラマはやってみたいです。そしてマンガやゲームが好きなので、実写化も。ずっと男の人をだます役をしていたので、純粋な恋愛ものもやってみたいですね(笑)。