――ここからは日比さんご自身についてお伺いします。これまで様々な作品に出演されているかと思いますが、印象に残っている作品はありますか?
少し前の作品になるんですけど、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』というドラマに出演させていただいて、その時の記憶はものすごく鮮明に残っています。
――私も拝見していました。すごく面白かったです
私も台本をもらうまで次がどんなお話か分からなかったので、台本が届くのが毎回楽しみでした。撮影も本当に教室に閉じ込められたみたいに、ほぼ毎日スタジオで陽の光を浴びることなく撮影する生活が続いていたので、役と自分の境目が分からなくなるような瞬間がたくさんあって、そういう現場ってなかなかないのかもしれないなと思って、すごく貴重な体験になりました。
――『3年A組』の現場で学んだことやこの人から刺激を受けた、といったことはありましたか?
やっぱり菅田将暉さん演じる先生の言葉一つ一つが心身ともにずっしり響きました。菅田さんとは撮影の後半には現場でもお話させていただいたんですけど、前半は緊迫するシーンがすごく多かったので、菅田さんが前室に一回も現れなかったんです。それが役と重なってすごく緊張感がありました。普通、前室は休憩する場所なんですけど、前室から教室の雰囲気が漂っていたというか……。
――スタジオの外でも菅田さんの現場の雰囲気作りが行われていたんですね
ここまで徹底された役作りを間近にしたことが初めてだったので、すごく衝撃的でした。

――日比さんがお芝居をする上で大切にしていることは?
最近気づいたというか、『liar~すれ違う恋~』の撮影中に思ったんですけど、今までは台本を読んで気持ちを作って現場に行っても、カメラのアングルはどう撮っているのか、どう映ったら綺麗に表情が見えるかなとか、食べるシーンだったらこうやって食べたら綺麗に美味しそうに見えるかなみたいなことをすごく気にしていたんですけど、実は気にする割合はすごく少なくて良いんだなって。自分がどういう風に思ってどうやって気持ちを表現するかが一番大事じゃないかということに改めて気づいたと言いますか、大事にしていたつもりだったんですけど、もっと自分の表現にワガママになっても良いのかもしれないなっていうことを感じて、これから意識していこうと思いました。
――憧れている方・目標としている方はいらっしゃいますか?
たくさんいらっしゃるので難しいんですけど……あえて熊坂監督で。今回ご一緒した監督です。
――どのような理由なんでしょうか?
言葉選びがすごく不思議というか、衣装選びをしていた時に、お嬢様風の衣装を全部着て写真を並べて「このシーンはこれ、このシーンはこれ」って決めて行ったんですけど、私が今まで経験した現場では「これだと色が綺麗で、共演者の方はこの色を着ているから被らないよね」っていうやり方だったんです。でも熊坂監督の場合は「この衣装だときちっとまとまっている感じがして窮屈そうだから前半に持って来よう」とか「このコートはナオの内面から出ている獣みたいな雰囲気を感じるから後半の方が良い」とか、その表現方法の仕方というか、伝える力がすごく素敵だなと思いました。
あと、撮影現場では振り落とされないように一生懸命向き合っていて、飴と鞭で言う鞭みたいな感覚でいたんですけど、監督から「ここは台本に書いてある通りじゃなくて好きなようにやっていいよ。あなたは何気ない短いシーンでも大事なシーンに出来る人だから」って言ってくださって、その一言が私にとって特大の飴だったんです。撮影現場全ての飴をもらったみたいな嬉しさがありました(笑)。そうやって言葉でこの人について行きたいと思わせる魅力みたいなものがすごく素敵だなと思いました。私もそうなりたいです。

――今後の目標があれば教えてください
今まではこういう役だったら自分に似合うかなとか、こういう役だったら何回かやったことがあるなとか、目の前の自分に出来ることの範囲で考えてしまっていたんですけど、それを飛び越えて、手探りでも良いから視野を広げていきたいと思います。色んな知識を得て、色んな現場を経験したいですし、色んな作品や役に挑戦していきたいです。
――最後にファンの方へのメッセージをお願いします
いつも応援ありがとうございます。『liar~すれ違う恋~』は切ない恋物語ではあるんですけど、見ている方が恋愛に限らず、何か自分が踏み出せない状況にいる時にポンと背中を少しだけ押せる存在になっていたら良いなと私は思っています。ぜひドラマを見ていただけたら嬉しいです。


カメラマン:秋葉巧、文:村松千晶