――エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』に出演が決まった時の気持ちを教えてください
単純に嬉しかったです。役名も含めて、奴隷だけど実は王族の血を引いてって設定もかっこいいと思いました。でも“バレエダンス”っていうのが目に飛び込んできたんですけど、僕、全くダンス出来ないんです(苦笑)。今もそこだけがすごく不安ですけど、嬉しかったです。
――台本を読んだ感想は?
それぞれの登場人物が皆、自分を一番守ろうとしている人たちというか、綺麗なところだけではなく醜いところもさらけ出してみせる人物たちだなと感じました。全体的に重くしたいっていうのは池田さんが言っていたんですけど、僕としてもこんなに重厚感がある作品は初めてです。
――お稽古での手ごたえはいかがですか?
家で声に出して読んではいるんですけど、相手と会話をしてみて、僕が思い描いていた温度とは違いましたし、僕の芝居もまた違う感じになっているので、まだまだこれからだなと。役が自分に馴染むまで時間がかかりそうな印象です。

――岐洲さんが演じるレオニダスはどのような人物と捉えていますか?
レオニダスはきっと、空っぽな人間なんです。だからこそいきなり王宮に連れて行かれたら子どものように色々吸収してしまって、王族の血が流れていることを理解して偉そうな口も叩いたりする。でもずっと奴隷として生活していたから、その匂いも染みついていて……すごく難しい役です。
――物語の中で立場が変わる、難しい役どころですね
でも、レオニダスは知らないことばかりなのでそれは逆にすごく強いのかなとか、これから色んなことを知るっていう段階のレオニダスには怖いものが無いんじゃないかなと思っていて。あとは死ぬことを恐れていないので、そういうのも強さになるのかも……。レオニダスにとって一番怖いものは自分なのではないかと思います。
――演じる時に気をつけようと思っている点は?
奴隷の身から王宮に連れて行かれて王族に変わるところは、口調や声のボリュームなど気をつけたいです。気持ちの面では、空っぽな状態から、どんどん色んなことが足されていくレオニダスをちゃんと演じ分けていけたらと思います。
――作・演出を務め、ゲルギオスを演じる池田純矢さんの印象は?
今回初めてご一緒するんですけど、ダンスレッスンに顔を出してくれた時に、ご自分で踊って見せてくれたんです。すごくバレエが上手で、踊っている時と普段話している時で全然違う印象を持ちました。本読みでゲルギオスを演じられた時もまた全然違って。ポスターの撮影でも顔つきが変わっていたので、スイッチがたくさんあって、かっこいいです。
――池田さんから役について何か言葉はありましたか?
役を自分に寄せて行ってほしいと言われました。そうやっていかないと役に持っていかれてしまうんじゃないかなとは思います。それぐらいレオニダスはすごくパワーのある役だと思っているので、難しいです。
――主演のテオ役・中山優馬さんの印象はいかがですか
すごく優しい方です。まだそこまでお話は出来ていないんですけど、見守ってくれている感じがすごくあって、見えない気遣いをしてくださるので、静かに見守ってくれるお兄さんって感じです。
――テオとレオニダスの関係性は物語の重要なポイントにもなってきますよね
この2人の関係も複雑なんです。奴隷の時はどんな喋り方をしていたのかとか……もちろん畏まっていたとは思うんですけど、2人でいる時は「畏まらなくていい」って言われたりして。でも急に敬語を使わなくていいと言われても戸惑うじゃないですか。だから想像力を膨らませようと思います。

――既に公開されているPRスポットやビジュアルも印象的ですが、撮影の感想は?
あの砂が洗っても洗っても全然取れなかったんです。撮影の後が大変でした(笑)。でもあれだけ見ると美しい話なんだろうなって思いますよね。美しくありつつ、悲劇的な面もあり、かっこいいビジュアルになっていますよね。
――本作と他の舞台作品との違いはどのように感じていますか?
それはもう僕の苦手なものが必要とされていることが大きく違います(苦笑)。『るろ剣』(『ミュージカル「るろうに剣心 京都編」』)では相楽左之助という役を演じていたんですけど、左之助だったらダンスが下手くそでも左之助らしければ良いという役柄だったので、ミュージカルだったけど少し安心していたんです。
――やはりバレエダンスが不安要素なんですね
いつもは不安とかあまりない方なんですけど、レオニダスは緊張感があります。でも苦手なダンスを克服出来るっていうのは楽しみな部分でもあるんです。ただ、この感じだとまだまだ時間がかかりそうで、台本もこれから変わるので、内心大丈夫かなって思います。たくさん練習しないといけない部分があるので、頑張ります。
――映像作品にも出演されていて幅広く活躍されていますが、舞台の良さはどんなところに感じていますか?
舞台は稽古期間があるので役と向き合う時間が長くなる。だからお芝居はしやすいですし、役者さんやスタッフさんと過ごす時間も長いので、仲が深め合えるのでそういう時間を大切にしています。映像作品は瞬発力が試されますが、見てくれる人が多くて、地方にいる方にも見ていただける。だから反応をたくさんもらえるのは嬉しいです。
どちらも違う集中力が必要で大変さもありますけど、やりがいを感じます。

――舞台の見どころを教えてください
池田さんが「お客さんがテオの感情に共感しやすいように台本をどんどん変えていく」とおっしゃっていて、今でも充分テオの感情に近づけると思うんですけど、テオだけじゃなくて他の人にも共感するところがたくさんあると思います。これを頑張ってみようとか、ここを変えてみようとか、もしかしたらお客さんの生き方を変えられる作品になるんじゃないかなと思っていて。僕たち次第ですけど、見てくれる人の心を動かせるような作品にしたいと思います。
――作品への意気込みをお願いします
柔軟をしっかりやって体を柔らかくして、バレエダンス頑張ります!(笑)