――主演の福田悠太さんの印象は？
すごく柔らかい方で、現場でもたくさん話しかけてくださいますし、僕らの中ではお兄ちゃんみたいな存在です。お芝居もすごく素敵で、コメディシーンとかもすごく面白いですし、熱のあるシーンも熱量があってストレートに届きますし、見ていて惹きつけられる方だなって思います。
――岩波と神山の掛け合いも作品のポイントとなっていると思いますが、渡辺さんのお芝居はどのように感じられていますか？
稽古の序盤から常にお芝居の正解を叩き出している方だと思っていて、このお芝居についていかなきゃと思いながら稽古をしているんですけど、その中でもいっけいさんのお芝居がとにかく面白いと言いますか。いっけいさんが必死に叫ぶシーンやノリツッコミをするシーンとかもあるんですけど、全力で演じられているのを見て、稽古をしている時に思わず笑ってしまって……。同じお芝居でもほんの少しニュアンスが違っていたりして、でも絶対に笑えてしまうので、そういった部分も勉強になると思いながら見ています。

――お芝居を詰めていく中で、役について話し合いはされましたか？
細かいところだと間の詰め方や、ただ会話を聞いてるのもあれだからこういうことをしようかっていうお話をさせていただきました。あとは役者っていうのは引き出しが多い方が良いと言われることがあるんですけど「引き出しってどうやって広げるんですか？」といっけいさんに聞いてみたことがあって。「人間はすごい窮地に陥った時に、そこで対応する能力が後々の引き出しになる」「例えば死にかけるとか、ピンチに面した時の感情や色んな状態を忘れないようにしている」ということをおっしゃっていて、そういったことをたくさん聞いています。
――色んなお話を聞くことが出来る絶好の機会ですね
今しか聞くことは出来ないと思っていて、舞台は稽古も含めたら2ヶ月近く一緒にいられるので、いっけいさんがどうやってお芝居を作っているのかを知って、一緒に舞台に立っている時に意識しながら演じていきたいし、かつ舞台上でいっけいさんと演技で戦えるぐらいになりたいなと思っています。
――小南さんの思う舞台の見どころを教えてください
人を救うってお話になっているんですけど、その中で色んな人がいて、それぞれの価値観があって人生は表面的ではないということがテーマにあると思います。そういう部分を堅苦しく考えるわけではなく、理解しようとせずとも分かりやすい内容になっていると思います。色んなキャラクターの心情が描かれていて、一言一言に色んな想いが詰まっています。語尾一個でも接続詞一個でも鴻上さんやキャストの想いが乗っかっているので、注目してもらえたらなと思います。
そこに鴻上さんならではの歌とダンスもあって、どうやってこの作品に歌とダンスが溶け込んでいくのかというのも見てもらいたいです。
――役として注目してほしいところはありますか？
岩波は先生(神山)のために、団体のためにということで一生懸命なんですけど、徐々に色んな気持ちが芽生えてきて、先生との距離感にも変化が出てくるので、表情や心の移り変わりを見ていただけたら嬉しいです。岩波も踊ります！(笑)

――ここからは小南さんご自身についてお伺いします。当初はモデル活動を行っていた小南さん。役者を目指したきっかけは？
最初はモデルをやっていたんですけど、その時はお芝居をやろうって感覚は無かったんです。ただ、アルバイトでレンタルビデオ店で働いていたり、小さい頃から映画やドラマを親と一緒に見ていたので、作品に関してはすごく興味はありました。特に映画を見ることが好きで、そこでとある事務所の方から「この映画を見に行ってみてよ」と言われた作品がありまして、実際に見に行ったんです。昔はちょっと苦手だった少女漫画原作の恋愛ものだったんですけど、すごく面白かったんですよ！その作品に出演されていた山田裕貴さんのお芝居にすごく惹かれまして、素人ながら山田さんのお芝居が面白いって思ったんです。素人の僕でもお芝居がすごいってなる役者さんはすごいなと思って、僕もお芝居でこういう風に人を感動させられたらと、役者をやろうと思いました。
――色んな映像作品や舞台作品で活躍されていますが、これまで出演してきた作品の中でターニングポイントとなったものはありますか？
最近は主に2.5次元の舞台に出ることが多いんですけど、初めて出演した2.5次元の舞台が『あんさんぶるスターズ！オン・ステージ』でした。舞台は2、3本しかやったことがない僕にオファーをいただけたんですけど、原作がとても人気でしたし最初はすごく不安が大きくて。僕もアニメとか大好きなので、得体のしれないやつが自分の好きなキャラクターを演じるのは嫌だなって思う気持ちがあったので、その分一生懸命演じようと挑みました。そこで色んな方に知っていただいて色んな舞台のオファーをたくさんいただくようになりました。それまでは「“モデルをやっていた小南光司”が舞台をやるみたいだよ」って感じだったのが、“朔間零を演じていた小南光司”と言っていただけるようになりました。
その後にいくつかストレートの舞台や、ドラマや映画にも出演してきたんですけど、平野良さんという役者さんとの出会いも大きかったです。平野さんとの共演は2、3回あるんですけど、お芝居は難しいものだ、苦しいものだって思っていた時だったんです。そこで相談して色々教えていただいたり、お芝居を楽しんでいる姿を見た時に「苦しんでたらダメなんだな」「楽しくやらなきゃいけないんだな」と思うようになり、だんだん自分の中で作品に対する向き合い方も変わってきました。なので、僕の中では『あんさんぶるスターズ！オン・ステージ』と平野良さんがターニングポイントになっていて、第三のターニングポイントが今回の『ウィングレス～』になりました！
――『ウィングレス～』もたくさんの方に観ていただきたいですね
どんどん進化しているので、ぜひ観てほしいです！
――最後にファンの方々へのメッセージをお願いします
『ウィングレス～』は胸を張って面白いと言える作品です。役者たちも本当に楽しみながら、プラス苦しみながらも作っているので(笑)、その僕らの血肉で出来た作品をぜひ堪能していただけたらと思います。皆さんは何も構えずに、ただただ楽しみな気持ちを持って劇場に足を運んでいただいて、観終わった後に何かもやもやっとする部分もあったりするかもしれませんが、すごくほっこりする部分もあると思います。作品の中で僕らは感情を色んなところに置きながら演じているんですけど、皆さんも観終わった後に色んな感情が生まれて心に残る作品になると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。


撮影：秋葉巧