――『ウィングレス(wingless)-翼を持たぬ天使-』の稽古も終盤かと思いますが、手ごたえはいかがですか?
これまで8年ぐらいお芝居をやってきましたが、鴻上(尚史)さんの演出を受けるのは初めてで色々勉強になることが多いです。
――どのようなことが勉強になっているんでしょうか
鴻上さんが他の役者さんにおっしゃっていた言葉でもあるんですけど「100回、200回出来る芝居は面白くない。50回ぐらいしか出来ない芝居が面白いんだ」と言われていて、しんどければしんどいほどお客さんも面白いし、役者側も演じていて面白いというか。そういった言葉を毎回メモしながら、頭で分かっていても体現するのが難しくて、じゃあどうしたら面白い芝居が出来るんだろうって食らいつくのに必死です。

――改めて、出演が決まった時の心境を教えてください
まずは鴻上さんの作品に出演させていただけるのは夢のようで、本当に僕で良いんですか?って思いました。そして渡辺いっけいさんや田畑智子さんといった先輩方もいらっしゃって、一緒に舞台に立つことが出来るんだってワクワクしていました。ただ、僕は稽古に1週間ぐらい遅れての合流だったので、一人だけ穴を開けてしまって申し訳ないなっていう気持ちもありました。
――台本を読んだ感想はいかがですか?
くすっと笑えるコメディチックなシーンも多いんですけど、その分後半にある感動的なシーンとのバランスが絶妙だなと思っていて、歌の入るタイミングとかもそうなんですけど、すごく精巧に作られた台本だなというのが印象的でした。
――コメディシーンはテンポ感も重要になってきそうなセリフの掛け合いもありますよね
そうですね。ただテンポを良くするだけではなくて、感情を乗せた上でのテンポ感がすごく大事だと思うので、今も皆でそういうのを詰める稽古をしています。だんだん稽古場でも爆笑が起こったりしてます(笑)
――コメディとシリアスの場面展開のギャップも魅力の一つに感じました
普段から鴻上さんはお芝居に対して「ギャップがあった方が面白い」というお話をされているので、そういったことも考えられて作られているんだと思います。僕らも演じていて楽しいですし、これをお客さんがどう受け取るのかがすごく楽しみです。

――小南さんが演じる岩波の役どころは?
渡辺いっけいさんが演じる神山秀雄に仕える第一秘書という立ち位置で、身の回りのお世話や事務作業といった細かいことをこなしている役です。元々はあまり目立った人間ではなかったというか、先生のためとか団体のために色々学んで社交的になったりしながら、自分の存在を確立出来るように努力しているような印象です。場を仕切らなければいけないシーンが多いので、テンポ感を大事にしながら演じています。
――ご自身と役柄で似ているところはありますか?
僕は何か一つ人のことを信じると、すごく信じてしまうタチなので、そういうところは似てるのかなって演じていて思います。岩波も一度信じると周りに色んなことを言われても「でも僕はあの人のことをすごく信じてるし」っていうような話をしたりするんですけど、そこは重なります。
――役を演じる時に意識していることは?
最初から「端正にいてくれ」と言われていたのでまず第一に端正に。そして岩波は元々人付き合いとかもあまり得意ではない人間だったんですけど、今は人の前に立って仕切ったり出来るようになっているということで、端正とプラスしてそういったバックグラウンドみたいなものを上手く醸し出せればと思っています。

――鴻上さんの作品には初参加とおっしゃっていましたが、鴻上さんにはどのようなイメージを持っていましたか?
すごく厳しい方なのではないかと思っていました。なので初めてお会いした時も緊張でガチガチでした。鴻上さんから「本を書くにあたって参考にしたいから」とお話させていただく機会があって自分の話をして、その時は鴻上さんがどのような方で何を考えていらっしゃるのかが分からなかったのですが、稽古をご一緒にするようになってからは、キャストに対してすごく優しい方だなと感じています。
――優しさを感じられたエピソードはありますか?
僕が初めて稽古に合流した時にも、僕を中心にまず1回通してくださったり、ユーモアを交えながらダメ出しをされたりということが結構あって。僕は色々言われるとだんだん硬くなっていって視野が狭くなってしまうタイプなんですけど、鴻上さんに対してはそこまで重く考えすぎず、もっとフランクに楽しみながらお芝居を作っていこうよって感じになるので、視野が狭くなることもなく、楽しく色んなことにトライさせていただけています。