――歌やダンスシーンも満載と伺っています。稽古をしてみた感触はどうですか?
どれもすごく楽しいものなんですけど、楽しいものを楽しく表現するためには技術や努力が必要だなと実感していて、そのための基礎的な体力やテクニックを学んでいる最中です。本当に明るくて元気な作品なんですけど、楽曲一つ一つのレベルが高すぎて……。ブロードウェイで公演されていた作品ということもあって、ハイレベルな楽曲が詰まっているんですが、それを乗り越えて役にプラスしていけたらと思っています。
――ダンスは得意な方ですか?
ダンスは今回がほぼ初挑戦です。踊りながら歌わなきゃいけないのが、本当に体力を使いますし声もぶれてしまって、歌も経験が多いわけではないので本当にレベルが高いな……って思ったんですけど、稽古を重ねていく内に少しずつ自分自身も楽しんで出来るようになってきた感覚があります。

――エマの恋人・アリッサ役を演じる三吉彩花さんとは初共演になりますが、印象はどうですか?
彩花ちゃんはスタイリッシュでクールな印象があったんですけど、初めてお会いして話してみると楽しい時は楽しい、疲れる時は疲れるね、と共感力をすごく持っている方だったので、一緒に話していてすごく楽しいですし、エマとアリッサの関係性を築いていくのにとても良い方とパートナーになれたなって感じています。実年齢だと彩花ちゃんの方が二つ上なんですが、お互いに楽曲の中でハモリも結構あるのでそこを確認したり、お芝居の中でもここはもうちょっとこういうテンポで言った方が良いかなとか、そういう話し合いも何の飾り気もなく出来ています。
――今回で舞台出演は3作目になります。過去に出演した作品から学んだことや活かせそうなことはありますか?
『ロミオ&ジュリエット』も『アナスタシア』もどちらも糧になっています。映像作品と舞台は全く別物だなと初めての舞台の時に感じました。お芝居をすることは同じなんですけど、表現の仕方とか、歌やダンスもそうですがやらなきゃいけないことが多かったり。言葉で説明する以上に感覚的に違うものなんですよね。それを自分の感覚と舞台の感覚をすり合わせていくのが難しく感じていたんですけど、今回の作品は楽しさを見つけられているような気がしています。過去の作品も楽しかったんですけど、楽しさ以上に壁があったので、今ようやく楽しさと壁の高さが同率くらいなったかなと感じていて、それはこれまでの2作品があるからだと思いました。
――葵さんの思うこの作品の見どころは?
色々なテーマを抱えながらも「明るい」っていうのがこの作品の良いところだと思っています。他人を受け入れることが出来ない人や曲がって大人になってしまった人、愛を伝えられない人といった色んな困難の中にいる人たちが出てくるんですけど、その人たちが上手くいかないこともありながら前を向こうと頑張っていて、それを明るい音楽とダンスで表現しています。エンターテインメントって力になるんだなって思わせてくれる作品なので、今の時代にこのような明るい作品が出来て良かったなとすごく思います。
――コロナ禍で世間も少しどんよりしてしまっていますね
現代にも色んな人がいて、何が正しくて何が間違っているのかが話題になることがあると思うんですけど、本当は正しさよりも受け入れることが大事なのではないかとか、意外と深いことを伝えてくれている作品です。ズコーッってなる明るいシーンもたくさんあるんですけど、その明るさに包まれながら大切なものを教えてくれるような作品になっているかなと思います
――たくさんの方に観ていただきたいですね
そうですね。会場に来て、たくさん笑って帰ってほしいなと思います。
――最後にファンの方々へメッセージをお願いします
この作品でミュージカルは3作目で、初めてシングルキャストで主演をさせていただきます。前作の『アナスタシア』ではコロナウイルスの影響で一部の公演が中止になってしまったり、演劇界にとってもあまり良い状況が続いていないように思います。出演している私たちもその挫折の時期を越えて、今は頑張って立ち上がって前を向こうとしている現状で、この作品に出てくる人たちも困難の中にいるけれどそれをどうやってより良くしようか考えて動いて行こうとするお話なので、今だからこそ表現出来る前向きさや明るさ、少しでも気持ちが楽になるようなそういう世界を作っていけたらと思っています。「ぜひ来てください!」とは言いづらい世の中ですが、もし楽しみにしてくださっている方がいらっしゃったら全力で頑張りますので、見守っていてほしいなと思います。よろしくお願いします。

カメラマン:秋葉 巧、ヘアメイク:竹下あゆみ、スタイリスト:岡本純子
取材:村松千晶