――本格バトル時代劇ということで激しいアクションシーンも見どころとなっています。こちらの稽古の手ごたえは?
私自身のアクションの総合的なキャリアを見た時は、やっぱり映像作品の経験の方が多いのですが、舞台の中でも今一番レベルが高いと言っても過言ではない新感線の立ち回りを経験させてもらい、今は覚えることやついて行くことに必死ですが、舞台で魅せるやり方というのは映像とは全然違って。足運び一つ一つ、丁寧に説明しながら教えてもらえるので、自分でも勉強しながら出来てありがたいです。
――製作発表で早乙女兄弟のお二人から「アクション楽しみにしてるよ」とお声がけがあったとおっしゃっていましたが、お二人との共演はいかがですか?
すごいですよね、やっぱり。動きを一回見たら覚えてしまうので、見ないで!って思いながら。でも最近私もやっと学習してきて、早乙女兄弟よりも先にフライングしてアクション部さんがつけてくれた立ち回りを見ておけば少しは追いつけるかなと思って(笑)。それでもすぐ追い越されちゃうんですけど、そうしないと本当に置いて行かれちゃうなという危機感を持っています。
――舞台の注目してほしいポイントを教えてください
個人的には、中島さんもいのうえさんもチャンバラをたくさん入れてくださっていて、そういった部分では新感線の舞台でしかお見せできないであろう立ち回りと、早乙女兄弟も揃っているのでそこに食らいついている姿を観てもらいたいです。新感線を作り上げてきた古田さんが主役を張っていて、ご自分では誇ってないとおっしゃっていましたけど、新感線に最多で出演されている(池田)成志さんがいて、私が一番好きな『髑髏城~』の沙霧を演じていた高田聖子さんがいらっしゃったり、一ファンとしてすごいメンバーの中に居させてもらっているなと思います。作品は徐々に作り上げているところで、私もまだ自分の役と完全に向き合えているわけではないんですけど、必ず面白くなるというのは稽古場のいのうえさんの笑顔を見て感じているので、ついて行けるように頑張りたいなと思います。

――ここからは山本さんご自身についてもお伺いします。2013年に舞台で女優デビューを果たしてから今年で10年が経ちますが、女優としての活動を振り返って印象に残っている作品はありますか?
ここが絶対的なターニングポイントで人生が変わりましたというのは、この10年の中で何か挙げてと言われたら難しくて……武術自体もそうだったんですけど、地道にコツコツ続けてきたものがだんだん実ってきたなという人生の歩み方しかできないみたいで、それは女優活動も同じで。10年経ちましたけど、10年の内で地道に少しずつ掴んできたものがやっと今こうして新感線に繋がったり。出会った作品が少しずつ私を救ってくれたんだと思っています。
――役を演じる時に気をつけていることや意識していることは?
作り手である演出家の方や監督の言うことをまずは第一にしたいなと思っていて、自分だけで固める役作りは絶対しないでおこうと決めています。そうすると悪い癖で抜け出せなくなりますし、人から見た役の方が演じていて面白いというのもあるので。20代後半に差し掛かったぐらいから特にそう思えるようになりました。
――TBS系『埼玉のホスト』では連続ドラマ初主演を務め、また山本さんの新たな一面が見られたと思っています。映像作品と舞台、それぞれどのような魅力を感じていますか?
私は舞台の方が経験が少ないので、すごく難しいなと思ってしまうのは舞台の方なんですけど、どちらも楽しいことに変わりはないです。映像だと役者さんから得た新鮮なものをその一瞬で表現できる楽しさがあったり。舞台は決まり事も多い中で、「今日は上手くいった」とかが如実に出ると言いますか、誤魔化せないというのもあってずっと努力が必要だなと思います。
――最近ハマってることはありますか?
最近だと『必殺シリーズ』を観ることにハマってます。新感線の舞台に出演するとなった時に、引導を渡す引導屋は殺し屋ということで、つまり仕事人なんですよね。そこからヒントを得ることがきっとたくさんあると思ったので、今日もいのうえさんから必殺の劇場版のDVDをお借りしたり、三谷幸喜さんも『必殺仕置人』のDVDを貸してくださって。それを観るのが今は楽しみの一つになっています。
――今後挑戦してみたいお仕事や演じてみたい役柄は?
「これをやってください」っていうオファーがもしあるのであれば、それは全部やりたいと思っています。ものすごい数の俳優さんがいる中で、私にやってほしいと言ってくれること自体が奇跡的なことだなと思います。なので、こういう役がしたいというより、作り手側の人たちに、今、山本千尋にはこういう役をしてほしいと思ってもらえるのであれば、それに挑戦することが一番正しいというか、自分にとっても嬉しいことなんじゃないかと思っています。

――プライベートで挑戦したいことはありますか?
ずっと仕事に活きたら良いなということばかり考えてしまうので……最近だと乗馬とか。その方が楽しめている自分もいて、仕事の延長線が趣味になっているんですけどそれが性に合ってるみたいです。最近は行けてないですけど、大河が終わった時は乗馬が趣味になったり、よくよく考えると仕事に繋がっているねって……本当に後付けなんですけど(笑)
あとは中国武術を誰かに教えるのも最近趣味の一つになりました。指導する側っていう。
――どなたに指導されたんですか?
それこそ太一くんにも教えたことがあります。その時は、新感線にも出演された須賀健太くんも一緒でした。最近だとこれもまた面白いことに新感線に出演したメンバーなんですけど、木村了くんと福士蒼汰くんの2人に中国武術を教えて。皆すごく興味を持ってくれて、自分が幼少期から大好きなスポーツだから嬉しいです。指導者側としても得られる部分がすごく多くて、教えることで見えるものもあるので。一応、武術の指導員免許も持っていて、今後もしそういう機会があったらお仕事にも繋がりますし、指導してくれた武術の先生への恩返しになると良いなと思いながら、楽しくさせてもらっています。
――山本さんの思う中国武術の魅力は?
同じような演武をしているように見えると思うんですけど、実際は性格やその人が培ってきたものによって演武の魅せ方が変わるんです。立ち回りは一緒でも、同じ振り方をしても全然違うように見えたりします。実際に誰かと戦ってるわけではないんですけど、何かと戦っている演武なので、華麗さもありながら強く見えるというのが武術の魅力だと思います。
――ありがとうございます。最後に公演を楽しみにしているファンの方々へメッセージをお願いします
正直私もファンの方と同じような気持ちで、ずっと客席にいた側でしたし、今でも稽古場でファンみたいな感覚で見ちゃうところがあるんですけど(笑)。私がどうこう言わずとも新感線ファンの方たちは分かっていらっしゃると思いますが、まずは早乙女兄弟を見てほしいですし、古田さんや成志さんたちの面白さと切り替えた時のかっこよさというのも、私が稽古場で「こんな近くで見させてもらってありがたいな」と思うぐらいすごく魅力的です。この公演を楽しみにしてくださっている方たちには自信を持って「絶対楽しいです」と言えるので、楽しみな気持ちを持ったまま来てもらいたいなと思います。


カメラマン:川島彩水、ヘアメイク:清水恵美子、スタイリスト:岡本純子