――ドラマ『コードネームミラージュ』。最初の作品の印象を教えてください
日本のドラマっぽくなさそうだなっていう印象でした。“刑事もの”とかそういうカテゴリに入らないようなテイストで、洋画を意識しながら作られているなって。これだけ主人公が喋らない作品っていうのも邦画ではなかなかないし、アクションは近接格闘術っていって、銃を持ちながら相手を至近距離で倒していくもの。銃もよく刑事ものである片手撃ちじゃなくて、両手撃ちなんですよね。原作ものが多いこの時代で、なかなかこういったタッチの作品には出会えないので、すごく貴重であり夢のある、可能性を秘めた作品と出会えなと思っています。
――お話にもあったように今作は原作なしの完全オリジナルストーリー。役作りで苦労された点は?
原作ものよりもオリジナルの方が苦労はないです。(原作があると)役に寄せなければいけないじゃないですか。逆にそっちの方が難しいと思うんです。確かに台本を読んだ時の感じ方って十人十色だと思うし、僕が思うミラージュはこうなんだよね、いや僕の思うミラージュはこうんなんですよっていうのが絶対ある。作品に入るにあたって、監督やプロデューサーとディスカッションしながら、みなさんこの作品にかける思いが強いので、いろいろ話し合いながら進めてこれたのがよかったなって。これからもっともっとスタッフ、キャストと良いチームでこの作品を作って行けるなってわくわくしてますし、楽しみながら撮影に臨めてます。

――第一話でミラージュは後半になるまでほとんど言葉も発さず淡々と敵を倒していくところが印象的でした。今回の見どころのひとつとも言えるガンアクションだと思うのですが……
アクション監督の園村(健介)さんに、1ヵ月前から徹底的に叩き込んでもらいました。(園村さんは)アクションで出来ないことがあったとしても、出来るようになるには体のどこをどう使ったらいいのかっていうのも教えて下さるんですよ。準備段階から誰よりも多く接している方なので、信頼しながらやれてますし。「新宿スワン」だったり「曇天に笑う」だったり、近年アクション作品に携わる事が運よく多かったんですが、そういう今までやったこととかをいったん全部捨てて、本当にゼロからスタートの気持ちでやらせてもらえたので、それが吉と出たかなと思います。大変だったことは……、「背中を使え」ってよく言われましたね(笑)。表面でパンチするんじゃなくて、背中の筋肉を使って打ち出す、みたいな。
――作中に登場する高性能自動車・ロビンにも「人間嫌い」と言われてしまうミラージュ。そんなミラージュと桐山さんの似ているところって?
僕は人間が苦手ではないです(笑)。似ているところっていうと後々(ミラージュがしている)ネクタイについて触れられることがあるんですね。ミラージュのオフの時の兄貴的存在である荻原(聖人)さん演じる鐘ヶ淵が3話から登場するんですけど、このネクタイをつけてないと怒られるんですよ。このネクタイが特殊な素材で出来てて、光に反応してカメラに映らない、要はカモフラージュのための発光作用があるネクタイなんです。だから任務の時はつけさせられるんですけど、僕ネクタイ大嫌いで、出来るだけつけたくないんです(笑)。首もとがガってなってるのが苦手で、タートルネックもあんまり着たくないんですよね。ミラージュもネクタイが苦手だから、つけたくないっていう設定なので、その気持ちがすごくわかるなって。

――この現場ならではの撮影エピソードを教えてください
僕、本当に1人でいることが多くて。佐野(ひなこ)さんも1人だし、要(潤)さんもオペレーションルームで1人だし。結構キャストの皆さんと会えてないんですよ。佐野さんとまともに話したのは会見が初めてで(笑)。
あと、カーアクションがあったりするんですけど、結構自分で運転してます。ミラージュはバンバン飛ばしていろいろやってますけど、普段はそういう運転はしないでちゃんと安全運転です。今回は、OKもらえる本当ギリギリのラインをねらいながらカーアクションをしているので、実際僕が運転してるところもたくさんありますし。アクションにおいても吹替えカットがほとんどないんですよね。だからきちんとやってるよ、って言うのも書いておいてほしいです(笑)。
――桐山さんから見たミラージュの印象は?
過去を失ってて感情が欠落してるっていう本当に物静かな、しゃべらない主人公なんですが、萩原さん演じる鐘ヶ淵の前でだけオフモード。彼にだけ心を許しているというか。真一もミラージュも口下手だし、嬉しい悲しい楽しいを出すのが苦手なタイプの人なんですけど、鐘ヶ淵のことは兄貴のように慕っているんです。鐘ヶ淵の前で弟感っていうのが見れるので、“殺しばっかりやってるミラージュがオフのときにはこうなんだ”っていうギャップもこの作品の幅になっていくと思いますし、そんなところもみてもらえたらと思います。
――しゃべらない役だけど視聴者に伝えたいことって動きでどのようにアプローチしていますか?
喋らない時の……こそ、今回僕がこの作品で出していかなければならない最大のカットだと思います。しゃべらない中にも、ミラージュのように過去を失っている人が、人を殺す時にどういう想いで殺すのかな、殺した後の顔ってどういう顔をしているんだろう、とか。これを何も思わずやってしまうとただの殺人マシーンになってしまう。彼も彼なりになんのために生きていたりだとか、存在理由とか……葛藤があるんです。そういったミラージュの持つ寂しさだったりとか孤独なところっていうのも、きちんと目だったり立ち姿だったりとかで表現して行きたい。セリフにはないけど、体全体から放つ彼の人柄、雰囲気っていうのを意識しながらやらせてもらってます。


写真:秋葉巧、文:水出綾香