――芸能界を志したきっかけは?
僕元々、愛知県のモデル事務所に所属していて、それは友達が所属していたのがきっかけだったんですけど、モデルの撮影はスチールが多いじゃないですか。スチールは二次元の表現のしかたで、すごくざっくりした所が多かったんです。例えばカップルのデートの撮影だったら、仲良くすればなんとなく雰囲気が伝わってくるとか、そういう紙媒体での表現のしかたをそこで知って、そうしたらもっと役になって三次元で表現することって面白いんじゃないかなって思ったんです。その頃事務所でも演技のレッスンをやって、ハマったときの気持ちよさとかも面白いなって感じて、前から俳優のお仕事に憧れはあったんですけど、改めて俳優を目指してみたいなと思いました。
――「D-BOYSオーディション」で準グランプリを受賞された時の周囲の反応はいかがでしたか?
どうだったかなぁ…そこまで大きな反応は無かったですね。嬉しかったですけど、もともとそういう仕事をしているってこともあって、そこまで周りの反応も自分自身も大きな変化はなかったと思います。自信があった訳じゃないですけど、合格するのがゴールじゃなくて、そこからどうしていこうっていう事の方が、当時はもうちょっと大きかった気がしますね。年も22歳で周りより年上だったので、早めに何かしないとっていう焦りもありましたし、うかうかしていられないって思いました。
――D-BOYSオーディションに合格されてからはじめてのお仕事の事は覚えていますか?
関西の方のテレビで、バラエティ番組の間に挟むちょっと長いCMでした。僕が本屋の店員でアジアンさんが「ゼクシィ」を買い物に来るっていうCMで、そこで初めて演技をしてすごく緊張したのを覚えています。
――モデルとして芸能界での経験はあっても緊張されるんですね。
しましたね。モデルの時もVPとかは経験があったんですけど、全然違う感じがして。結構スタッフさんも沢山いらっしゃいましたし、そういう環境でやるのは緊張しましたね。

――今までのお仕事で特に印象に残っているものは何ですか?
今までだとやっぱり、去年の6月にPARCO劇場で『吸血鬼』という舞台に出演させて頂いて。今まで舞台は『D-BOYS STAGE』とか『ミュージカルテニスの王子様』とか同世代のキャストのものが多くて、初めてベテランの方々に囲まれてやる舞台で、雰囲気が今までと全く違っていました。楽しみながらというか「本番使えないでしょう」っていうネタみたいなのをやって稽古場が盛り上がったり、本当に楽しみながら作品を創っている感覚がありました。今までは、『ミュージカルテニスの王子様』だったら、歌、ダンス、芝居とか、技術どうこうじゃなくて、その時点での自分たちの精一杯のことをやっていて、『D-BOYS STAGE』も結構ストーリーが重たかったり、時代に抗う話が多かったので、頑張ってやっていた所もあったんですけど。ベテランの方々はやっぱり慣れている方々が多いので、すごく楽しんで演出家と一緒に作品を創り上げているんです。僕がなかなかいい感じに役がハマらない時に、共演していた鈴木砂羽さんに相談したら、「牧田哲也っていう人は面白いんだから、それをそのまま舞台上でやればうまくハマるのに」って言ってくださって。すごくその言葉で楽になって、「別にガチガチに創り込まなくても成り立つんだな」って。今までは、役を自分に引き寄せることっていけないことで、自分から役に近づいていかなくちゃいけないと思っていたんです。でもそればっかりじゃなくて役を演じた上での個性は、その演じている人の個性であるからであって、役を全部引き寄せるのではなくて、上手く自分の個性を出せる役作りをしたらその人にしかできない役が完成するのかなぁと。舞台『吸血鬼』の時はそういう事が学べましたね。

――6月に主演映画の公開を控えて、今の心境を教えてください。
出演が決まってから撮影に入るまでも、撮影期間もすごくあっという間だったので、撮影している最中も「どういう出来あがりになるんだろう」っていうのもありながらだったんですが、出来あがりを見たらクライマックスの試合のシーンも盛り上がりがあったので、面白い作品になったと思います。でもそれは創っている僕たち目線であって、お客さんは実際どう思うんだろうって不安もありますし、期待もあります。
――映画『アベックパンチ』にご出演が決まった時の感想は?
不良の役で、僕は不良要素があんまり無く、いつもニコニコしているタイプ(笑)なので、この役がちゃんと務まるのかって。作者のタイム涼介さんが、男として格好いいものをイサキとして創っているので、やっぱり男として格好いい所があるんですよ。ケンカはヒラマサの方が強くて敵わないですけど、その代わり頭がキレたりとか、そういう格好いい男に僕も憧れがあって。自分にはそういう要素が無くて、マザコンだったりとか(笑)。男らしく無いんです。親父がすごく男っぽい男なんですよ。九州男児みたいな。小さな時から僕を、一人前の男として認めてくれなくて。自分でも「なんとかして男として認めてもらいたい、格好よくなりたい」っていうのを昔からずっと思っていたので、不良が格好いいって訳じゃないですけど、自分にはないものを持っているキャラクターなのでうまく演じられるか不安はありましたね。
――役作りはどのようにされましたか?
不良要素は無くても、考え方とか人との接し方は結構似ている所があって。イサキは人との距離感を保って測りながらアプローチをしていくタイプで、ヒラマサは直感タイプなのでそんな事は考えないんですけど、僕は色々考えながら「この人はどういう人なんだろう」って距離感を結構測るんですよ。僕の友達にも、全然距離感とか関係なく近寄ってくる人もいて、その人はヒラマサに似ていたりとか。ヒラマサもヒラマサで「この人は自分をうまく導いてくれる人なんだ」って近づいてくるっていうのは、プライベートでの交友関係でも似たものがあって。演じていても共感できる部分もすごくあったので、役作りとしては体を鍛えることですね。
――体作りはジムに通ったりされたんですか?
ジムも行きましたし、あとはヒラマサ役の鈴之介君と家が近かったので一緒に走って筋トレしたりしましたね。出演が決まってから撮影までの2週間くらいの期間、出来るだけのことはしましたね。