――映画『銀河鉄道の父』がまもなく公開を迎えますが、撮影を振り返っていかがでしたか?
本当に僕にとっては宝物のような時間でした。全部が贅沢すぎる時間だったので、休みの時でも毎回現場に足を運んで撮影を見させていただいたり、当時の僕が出来る限りのことを現場で出来るように、皆さんの会話している言葉や何をしていたかとかをメモを取っていました。
――出演が決まった時はどのようなお気持ちだったのでしょうか
すごく嬉しかったです。ただ、他のキャストの方をその時点では聞いてなかったんですけど、キャストを聞いた時に震え上がりましたね。
――憧れの役者として名前を挙げていた役所広司さんと菅田将暉さんとの共演となりました
不安な気持ちもあったんですけど、自分が出来るのは精一杯向かい合うことだけだと思っていたので、出来る限り不安を無くして一生懸命演じていました。

――台本を読んだ感想は?
政次郎をはじめ、家族の愛を感じる部分はすごく多かったです。家族って本来こうあるべきだよな、と思うところもすごく描かれていました。あとは賢治という人間を僕は全然知らなかったので、賢治がこんなに多才な人間なんだと思ったり、あとはトシの存在が賢治にこんな風に響いていたんだとか、原作の小説も読ませていただいていたんですけど、台本を読み終わった時にまた一つ小説を読んだような気持ちになったのを覚えています。
――清六役を演じる時に心がけていたことはありますか?
賢治と清六は反対の性格で、清六はすごく堅実で真面目な人間だと僕は思ったので、そういうところは外さないように演じようと思っていました。
――ご自身と清六、共通点はありましたか?
僕も兄がいるのでそういう部分では同じだなって思いました。でも清六のようにお兄ちゃんが大好きですごく慕っているというところは、少し僕には無い部分でした(笑)
――演じる上で難しかったところは?
皆さんについて行くのが精一杯だったなっていうのが正直な気持ちです。自分がどうこうしようっていうより、皆さんにポジションを作っていただいているような感覚でした。
――錚々たる役者さんがいらっしゃいましたが、現場で吸収することもたくさんあったのではないでしょうか
本当に多かったと思います。役者としてもそうですし、自分が現場に入る上での入り方や居方とかも良く分かっていなかったので、すごく勉強になりました。

――父・政次郎を演じた役所さんにはどのような印象を持ちましたか?
役所さんはすごく真っ白い大きな紙みたいなイメージです。どんなものにも染まれて、でも何回も何回も真っ白になれるというか、そういうフレッシュさみたいなものがあるとお芝居を見ていて感じて、すごいなって思っていたので、吸収したいと思った部分でした。あとはすごくフラットな方だなと思いました。
――事務所の先輩でもあり、兄・賢治を演じた菅田さんの印象は?
凄まじいエネルギーを持っている方だと思います。それでいて、軸足がしっかりしていると言いますか。僕が役者を始める前に見ていた菅田さんはすごくトリッキーで華やかさや派手さがあって人と少し違う部分がすごく多いと思っていたんですが、そうではなくて、誰よりも細かいところに気がついたり、基本に忠実な方なんだなと見ていて感じたので、軸足がみたいな部分がしっかりしているからこそ、人と違う部分にすごく気づけて、それが大切なことを認識しているからこそ違う意見を出せるんだなと感じました。

――撮影中、印象に残っている出来事はありますか?
色んなことが印象に残っているんですけど……。お芝居の面では、トシ(森七菜さん)の火葬場のシーンがすごく印象に残っています。炎が上がっているところで役所さんと菅田さんが肩を持ちながら話すみたいなシーンで、薪を組んで本物の炎を上げていたので一発で成功させたいとなっていた中で、実際に一発で成功させるお二人と炎のエネルギーを感じて、これはなかなか出来ることではないだろうと思いながら見ていました。
――映画を通して届けたいメッセージや注目してほしいところを教えてください
どの世代の方が見ても楽しい映画だと思うので、ぜひ見に来てほしいです。宮沢賢治という人物が好きで見ても感動出来ると思いますし、宮沢賢治のことを知らなくても、賢治がどのように生きてきたかという背景とか、父親がどう接していたかが分かったり、あとは一番のテーマでもある家族愛が、現代と比較しても同じで大切なものは変わらないという部分は感じ取れると思います。
――最後にファンの方々へのメッセージをお願いします
映画『銀河鉄道の父』が5月5日、こどもの日より公開となります。体当たりでお芝居をさせていただいて大切な時間を過ごさせていただいた、とても大切な映画になっています。キャスト、スタッフ、監督含め、皆さん素敵な方々で素晴らしい映画に仕上がっているので、ぜひご覧ください。よろしくお願いします。


写真:秋葉巧