――舞台『ロスメルスホルム』はイプセンの最高傑作ともいわれる作品ですが、出演が決まった時の心境を教えてください
自分にとってすごく新しいチャレンジになるなと思えたので純粋に嬉しかったですし、楽しみでした。
――稽古に入られたばかりと伺いましたが(※取材は9月下旬)、手ごたえはどうですか
手ごたえを感じるにはまだまだ遠いですが、でも純粋に楽しいです。翻訳劇をやるのが初めてなので、新しい言葉というか、言い回しも含めて音としても心地よくて、新しいものに触れているという実感があります。
――台本を読んだ感想は?
人間の持つ、単純ではない矛盾している複雑な部分とたくさん向き合える作品になるだろうなと思いました。考えても一生答えが出ない故に難しいけれど、でも答えが出ないからこそ考えるのが楽しい、そういうところと向き合う時間になるんじゃないかなと。あと、自分が演じるレベッカという女性も、セリフ一つ一つの裏側にある感情をどうやって解釈するかによって、180度キャラクターも変わるだろうなと思って、それをどのように魅せるのかを探している最中です。どこに自分なりの正解を見つけていくのかというのが、今、稽古をしていて面白いところです。

――現時点で、役を演じる際に意識しようと考えているところはありますか?
本読みの時に「心の中のグラデーションをどう魅せるか、それが役者の仕事だ」ということを栗山(民也)さんがおっしゃっていたのがすごく印象的で、自分の中で頭に留めてある言葉です。稽古が始まってまだ間もないですが、気をつけることや課題というのは日々更新されていくような気がするんですよね。なので、今後稽古を重ねていくにつれて変化していくのかなと思います。
――舞台やドラマ、映画など幅広いジャンルでお芝居をされている三浦さんですが、その中で舞台にはどういう印象をお持ちでしょうか
本当にとても勉強になります。それはもちろん映像の作品もそうなんですけど、映像のお仕事は時間の制約が多い中、舞台のお仕事はじっくり稽古をして、何度も同じセリフを言って、何回も考えて試して、それで一つの答えを導いていく。それは映像の作品ではなかなかできない経験で、時間がかけられる現場だからこそ見える景色もあるなと思っていて、とてもありがたいです。

――ロスメルを演じる森田剛さんの印象は?
舞台や映画で拝見していて、とても素敵な役者さんだなと個人的に思っていたので、共演できるのが楽しみでした。まだお会いして間もないですが、セリフのやり取りをしていてすごく楽しいです。音が素敵だなと思います。あとは、ロスメルとして見てしまっているからか分からないですが、今、どこに立っていらっしゃるんだろうというような、掴めなさ、読めなさがあって、それが一緒にお芝居をしていて楽しいと感じるところなのかなと思っています。
――栗山さんの演出を受けてみていかがでしょうか
「このセリフの時にこう動いて、このセリフをここで強くして、ちょっと間を持って」と具体的におっしゃるんですけど、言われた通りに動いてみたり言ってみると見えてくるものや分かることがあって。栗山さんの演出によって、本を読んで自分一人で考えていた時には動けなかった場所に立たせてもらったり、自分では導けなかったであろう音でセリフを言うことができて、体が新しいことをしている感じがすごく楽しいです。

――今作品は歴史と伝統に縛られたお屋敷の物語ですが、三浦さんのご家庭にもルールや決まりごとは何かありましたか?
大したルールじゃないかもしれないですけど、先日、母とご飯を食べた時に子どもの頃の話になって、私は20時にお風呂に入るのがルールだったらしいです。
――それは親御さんから言われて?それともご自身で決めたのでしょうか?
どうしてだったんですかね……。20時から観たいテレビがある時はどうしたらいいんだろうってすごく考えていたことを思い出しました(笑)。多分、19時でも20時でも21時でも、何時でも良かったんですけど、お風呂に入る時間を決めないとだらだらしてしまい、お風呂に入らないで夜ふかししちゃうからルールを決めたんだと思います。その時にやりたいことや観たいテレビとかを加味して20時が一番良いんじゃないかと自分で決めたんだと……でもすごい葛藤した記憶もありますね。

――舞台稽古そして本番が控えていてお忙しい日々を過ごされているかと思いますが、普段行っている息抜きの仕方やリラックス方法はありますか?
全然意識してないです。日々、息を抜いていて(笑)。何も特別なことはしていなくて、ちょっと長く寝れたなとか些細なことで良いんです。
――身体のケアで気をつけていることは?
声も喉の筋肉を使って出すものなので体が資本だなと。元気じゃないと頭も回らないし、頭が回らないと感じたり考えたりもできないので、食事はバランスよくちゃんと食べて、睡眠もちゃんと取ることは意識しています。
――ありがとうございます。三浦さんの思う『ロスメルスホルム』の注目してほしいところや楽しみにしてほしいところを教えてください
音にしている言葉とその裏側に持っている感情が必ずしも一致していないというか、一致しているのかしていないのか分からない部分があるので、そこは観ている方にも集中力を持って観て聞いて感じてもらうような作品になるのではないかと思っていて、だから体調を万全にしてきてほしいなと。すごくたくさん準備をしてきてほしいということではないんです。ただ、演じている方もすごくエネルギーを使っているので、きっと観ている方もエネルギーを使うのではないのかなと思います。でもそこがきっとこの舞台の魅力で、面白さだと思うので、舞台上に張りつめている空気に触れられる時間になるんじゃないかなと個人的には思っています。
――最後に、舞台を楽しみにしているファンの方々へメッセージをお願いします
時代は違いますが、構造的に現代に繋がるお話だと思います。なので、すごく遠くにある難しいお話だと思わず、登場人物たちの葛藤を身近に感じていただき、人間の本質的な揺れに触れていただけたらなと思います。楽しんでもらえる舞台にしたいです。


撮影:秋葉巧、ヘアメイク:山口恵理子、スタイリスト:佐々木翔
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<衣装>
シャツ ¥58,300(BARENA / 三喜商事 TEL:03・3470・8232)
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靴 スタイリスト私物 ※価格は税込表記です。
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