――映画『リスタートはただいまのあとで』は同名コミックが原作となっています。原作は読まれましたか?
オファーをいただいてから最初に原作を読んで、その後に脚本という流れでした。
――原作を読まれた感想は?
脚本も含めて、全体的にこの作品自体が同性愛というところよりも人間の苦悩や葛藤をお互いが助け合って導き合いながら、そこで恋に発展するっていう、人間のラブストーリーという風に思っていました。同性が好き、という人たちの葛藤の方が強く描かれることが多いと思うんですけど、そうではなくどうやったら人間は自然とその人に、惹かれて好きになって愛し合っていくのかという根源的な部分が同性愛と絡み合っていることが面白いなという印象でした。

――竜星さんが演じるのは田舎暮らしで優しい熊井大和役です。原作や脚本を読んで大和についてはどのように思いましたか?
対異性であればまた感覚が違うと思いますが、どんどん惹かれあっていって、これは恋なのかなって悩む大和の葛藤を表現するというのがすごく繊細と言いますか、特に大和は愛を小さい頃にあまり受けてこなかった役柄なので、そういった意味でも愛を表現するという点は難しいなと思いました。
――竜星さんはどちらかというと都会的なイメージがあり、長野の純朴な青年である大和とは180度違った印象がありますが、役作りは苦労されました?
僕の中で田舎暮らしというのは両親が山形で祖父母は農家をやっていたりするので、あまり遠い存在ではないと言いますか、もっと田舎の風景や田んぼは実際に小さい頃から見ていて実際に手伝っていたので、役作りの中でイメージしづらいということはあまりなく、逆にイメージしやすかったです。
――大和は「方言おっとり男子」と謳われていましたが、方言は難しかったですか?
今回は方言にあまり左右されないようにしようと思っていました。でも場所や方言といったところから役としての幹が太くなっていくと思っていたので、そこからキャラクターをもっともっと膨らませていったというところはあります。
――演じる上で気をつけた点は?
光臣(古川雄輝さん)との関係性にはすごく気を使っていました。僕の役は相手にものすごく影響を与えなきゃいけないと思っていたので、お互いのバランスを意識して。向こうが引いたらこっちはアクションを起こしてアタックする、ということをお芝居の中でやっていました。
――大和に対して共感する部分はありましたか?
大和は愛情が注がれている人のことをすごく敏感に分かるし、人に嫌われたくないっていう気持ちがあると思うので、だからこそ誰に対してもきっと分け隔てなく優しく明るい大和であって、人として素敵だなと思いました。また、大和には前に進まなきゃいけないことや隠したい気持ちがあって、それは僕にもあるし誰にでもあることだと思います。だけど前に進むっていうことに対して自分ひとりじゃなかなか進められない。近くにそれを受け止めて分かってくれる人が居るとこれだけお互い前に進めるんだ、というところは僕自身の人生の中でもあることなので共感出来ました。
――ダブル主演ということで光臣を演じられた古川雄輝さんと一緒のシーンが多かったと思いますが、古川さんと共演されてみていかがでしたか?
古川さんは、最初は結構クールでミステリアスな方なのかなっていうイメージだったんですけど、一緒の作品を共にしていく中で監督とディスカッションしている姿や自分の意見を伝えている姿を見て、作品に対しての情熱をすごく感じましたし、僕自身も勉強になりました。
――井上竜太監督はどのような方でしたか?
懐の深い方でした。監督自身も今回が初監督ですごく気合が入っていたと思うんですけれども、もちろん監督のイメージや熱量みたいなものがすごくパワフルにあったので、そういう熱量は一緒にやっていて自分の士気も上げられましたし、自分が作り上げていたものに対して結構柔軟に受け入れてもらえました。僕自身何か演出をされたという意識はそこまでなくて、それって自由にやらせてもらえたということなのかなと思っています。

――長野でずっと撮影されていたということですが、長野でのエピソードは?
僕はその土地に馴染むにはその土地の人たちと仲良くしなければっていう意識があって。撮影が早く終わることも多かったので、1人でお店に行ってそこの大将たちと仲良くなって、そこから「次行くぞ!」となり、気づいたらそこの町の住人みたいになっていましたね。誰も知らない中に僕1人いて、5、6人に囲まれて一緒に飲んでいることもありました。
――馴染まれていたんですね
だから帰る時はすごく温かく見送ってくださいました。「また来いよな」「ありがとうございました!」みたいな感じで。
――第二の故郷のような?
そうですね。本当に皆さん優しくて温かくて、色んな美味しいものもご馳走していただいて感謝しています。