――来月公開される映画『馬の骨』は初主演作ということで特別な思いもあると思います。改めてどんな作品に仕上がっていますか?
この作品は、本当はソロで歌をやりたいという夢を持ちながら売れないアイドルをしている女の子と、昔はバンドをやっていたけど、今はちょっと冴えない生活をしているおじさんとの交流を描いた意外とベタな話です(笑)。ただ、大事なのは私が歌うとか、桐生(コウジ)さんが歌うとかそういうことじゃなくて、私たちが勇気を出して人前で歌うまでの経緯というのがしっかり描かれているところ。主演でやらせていただいていますが、私だけが主役というよりは、出演しているみなさん個人個人をピックアップして描かれているので、みんなが主役の映画になっていると思います。

――アイドルをしながら、本心ではシンガーソングライターを目指すという言わば“仮面浪人”をしているような状況のユカ。今回の役作りにあたってどうやって気持ちを作っていきましたか?
この作品はフィクションではあるんですけど、若干ドキュメンタリー感があるんです。台本をいただいたときも、役柄的にも等身大の女の子だったので、逆にあんまり作り込み過ぎないようにしようと思っていました。台本も撮影に入る前に一回読んで、みんなで本読みして……、あとは現場でみんなと空気を合わせてお芝居しようと思っていたので、あまりこういう役だからとかアイドルだからとかを意識しないように演じました。
――アイドルとシンガーソングライター、振り幅があって演じ分けが大変そうですよね
私、実は人前で歌うのが苦手で(笑)。 今回、監督と脚本の桐生さんにお会いした時にも、「歌は中の下くらいです」って言ったくらい。ダンスもほぼしたことなかったので、着いていくのが大変でした。 アイドルグループの他のメンバーは現役のアイドルなので、練習でも先生が一回振りを教えてくれたら、もう踊れちゃうんです。私は一回振りを見ただけじゃ全然わかりませんでした(苦笑)。
――ギターは桐生さんに教わったんだとか
そうなんです。他にも教えてくださる方はいたんですけど、基本は桐生さんに。桐生さんはもともとバンドをやられていたので、教えることってあまりしたことがないらしく、お互いに初めてな感じでした。曲も桐生さんに言われて私が詞を書いて、それを見せたら5分くらいで「曲、これでいいかな?」みたいな感じで作っちゃうんですよね。
――歌は苦手と言っていましたが透明感のある歌声でした
いやいやいや……。試写を観た時も自分の歌が流れているところだけ「もうやだやだ!」って思いながら(笑)。撮影中にスタッフさんがふとした瞬間に口ずさんでたりするんですけど、やっぱり自分が考えた歌詞でもあるので、恥ずかしいからあまり歌わないでほしいなって思っていました(笑)。

――作詞の話も出ましたが「逆転劇をはじめよう」等映画のコンセプトにも合った歌詞が印象的でした
ありがとうございます。作詞なんてもちろん初めてで、日記も書いたことがない人間なので、始めはどうしようと思って。とりあえず、自分じゃ思い付かないから台本を読んで、ユカの気持ちになって書きました。
――書き上げた詞を提出したとき、桐生さんの反応はどうでした?
ずーっと静かに詞を見てるので、ダメならダメってハッキリ言ってほしいなって思いました(笑)。 でも、「この言葉とこの言葉いいね」「じゃあこの後なにかない?」という感じで何度かやりとりをして完成したんですよね。
――二人の合作なんですね。自分が生み出した言葉が曲になるというのはどうでしたか?
もう恥ずかしくて恥ずかしくて……。 ユカとしては“これだ”っていう感じなんですけど、小島藤子としては見た人にちょっと忘れてほしい気持ちもあり(笑)。 でも、「逆転劇」って言葉がなかなか思い付かないよねって言ってくださる方が多いんですけど、ユカの気持ちになった時にやり返してやりたいという気持ちが自然と出てきました。