――映画『今はちょっと、ついてないだけ』についてもお伺いしていきます。出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
玉山鉄二さんの若い頃の役を演じると聞いた時、玉山さんのことは幼稚園の時に『百獣戦隊ガオレンジャー』を見ていましたし、その後色々な作品を拝見しましたが、その中で衝撃を受けた作品が『手紙』だったんです。なので、小さい頃から見ていて衝撃を受けた方の若い頃を演じられるというのはすごく感慨深かったです。「良いのかな?本当に俺がやって」っていう気持ちも少しありました。
――台本を読んだ感想は?
物語的には淡々としているんですけど、観終わった後に良い映画だなってしみじみ思える作品でした。でも、台本を読んだ時点ではどういう映像になるのかあまり想像が出来なくて、これはどうやってやるんだろう?というト書きとかもあったんです。そのことを監督に伝えたら「大丈夫」と言ってくれて、「それは俺が上手いこと出来るから、映像を見てもらったら分かるから」って言われて。実際に出来上がったものを見たら、こうなるんだっていう感動がありました。
――原沢さんが演じた青年期の立花浩樹は、どのような役でしょうか?
色んな秘境に行って写真を撮るネイチャリングカメラマンで、周りからちやほや盛り立てられてスターとして取り上げられる役柄です。

――役とご自身で共通している部分はありましたか?
島に撮影に行ったんですけど、スタッフの方や他の役者さんが実際に機材を運んだりしている中、僕もやりたかったんですけどやらせてくれなかったんです。監督にも「やりたいです」と伝えたら、「やらなくていいんだ」と。「でもやりたいって気持ちは忘れないで。それが役に生きるから」と言っていただいて、やりたいけど出来ないっていう気持ちはたまたまかもしれませんが、役と似ていたのかなと思いました。
――演じる時に気をつけていたことはありますか?
表情にはすごく気を遣ったかもしれないです。色んな秘境に行って写真を撮っているわけなんですけど、設定では大砂漠でも、当たり前ですけど実際に見ているのは大砂漠ではなくて、でも本当に秘境を見ている顔をしないといけないじゃないですか。その時にどういう感情なのかっていう表情はすごく気にしました。顔のどアップになっているので、瞬き一つだったり、少し目が動いたりしただけで感動なのか驚きなのか、どういう意味があるのかを顔の動きで表現出来るように意識しました。
――注目してほしいポイントがあれば教えてください
玉山さんと初日にお会いした時に、監督も含めて3人で「役の癖みたいなものはどうする?」という話になって、カメラのストラップを手首に巻いて撮るっていうことを一つ決めていました。隠しネタとして所々に出てくるのでチェックしてみてください!
――玉山さんの印象はいかがでしたか?
とても優しい方でした。玉山さんが出演されている作品をたくさん見ていたので、憧れの人とどう接していいのか最初は分からなくて。役としてそこにいらっしゃっているから話しかけて良いものなのか、それに自分としても余裕がなかったんですけど、撮影終わりにお話しさせていただいて、僕の想いを伝えたら『ガオレンジャー』撮影当時のお話とか聞かせていただいて、ファンとしてはすごく嬉しかったです。温かい方です。
――演技の面では何かお話しましたか?
しなかったですね。同じ人物を演じていましたが、物語の中でも「あの時の時代の僕は演出ですよ」というセリフがあるように全然違う人物として捉えて良いものだと思っていたので、特別お話することはありませんでした。試写会でお会いした時も、映画の感想を話すというよりも、僕がその時に野球部の役を演じるために坊主にしていたんですけど「坊主じゃん!なんで坊主なの?」って声をかけてくださって、「俺も野球部の役を昔やってて」って『逆境ナイン』の頃の話を聞かせていただきました。
――気さくな方だったんですね
でも、僕だったら全く知らない駆け出しの俳優に、玉山さんのように優しく接せられるか分からないなと思いました。今は自分のことで精一杯なので現場でそんな余裕はないんですけど、でも玉山さんの姿を見て、自分もいつか若い人たちにそうやって出来るようになりたいなという気持ちがあります。
――映画のタイトルにちなみまして「ちょっとついてないな」と思ったことは?
一回、すごくついてない日があって、朝に散歩をしていたんですよ。そうしたら犬のうんちを踏んじゃったんです、本当に。そのまま近くに公園があったので靴を洗って、悔しいなって思ったからコンビニでアイスを買ったんです。ソフトクリーム系のアイスだったんですけど、開けた瞬間に落ちちゃったんですよ!
――不運が重なりますね(笑)
なんて日だ!と思いながら落ちたアイスを掬って捨てて、さっき行った公園で手を洗ったんです。で、最後にバスで帰ろうとバス停で待っていたら鳥のフンが頭に落ちてきて!だからまた同じ公園で髪を洗いに行った、っていう1日がありました。人間ってやっぱりついてない日があるんだなと思いましたし、「人生プラマイゼロ」って事務所の大先輩の萩本欽一さんの言葉もあるので、ついてないことがあれば良いこともありますし……。映画のタイトルにもある“今は”ちょっとついてないだけで、だからこれから良いことあるよってプラスに捉えて、それこそこの映画に出演出来たのが良いことですね。

――原沢さんからみた映画の見どころは?
この映画は淡々と穏やかなんです。急展開で逆転劇があるわけでもなく、4人の登場人物の一人一人の人生が描かれています。誰しも弱い部分や言えない過去があって、それを背負いながら生きていると思うんですけど、この4人は特にそういうものが強くあって。それでも前に進もうとしている姿に、僕はちょっと背中を押してもらうような、もうちょっと頑張ってみようかなって思える映画です。
――憧れの俳優さんは?
もう亡くなられてしまったんですが、緒形拳さんが憧れです。『鬼畜』という映画を見た時に、本当にかっこいいなと思いました。目を見ただけでその人が思っていることが伝わってくるような感覚があって、こんな芝居があるんだって衝撃でした。その時に、緒形さんみたいな役者になれたら良いなって思いました。
――今後挑戦してみたい役柄や出演したい作品はありますか?
一個前の作品で金髪の“半グレ”役をやっていたんですけど、すごく楽しかったんです。そういうのを極めていきたいと言いますか、正義と悪で二つに分けたら、悪の方を今後も挑戦したいなって思っています。色んな悪があると思うんですけど、0から100までやっていきたいです。
――悪役自体はその作品が初めてだったんでしょうか?
初めてだったかもしれないです。今までは真面目な先輩とかSPとかが多かったので……。次に決まっている作品もまた悪役なんですよね。だから極めていきたいなと思いますし、それで注目してもらえるのであれば尚更嬉しいです。
――人柄とのギャップもあって、悪役は良いと思います
自分で言うのもなんですけど、ちょっと優しそうな顔をしているじゃないですか(笑)。極端に言うと兄貴と僕だったら兄貴の方が悪い顔をしていると思うんですよね(笑)。だから、そのギャップも映えるのかなと思ったり、振り幅として役に上手く使っていきたいです。
――最後にファンの方々へのメッセージをお願いします
今はまだたくさんファンの方がいるわけではないんですけど……。そんなにまだ活躍出来ていない状況で自分を支えてくれる人たちがいるわけじゃないですか。今後もそういう人たちの存在を忘れずに、色んな作品に出ることを望んで応援してくださっているわけなので、結果で返していきたいです……ってなんかスポーツ選手みたいですね(笑)
でも、もしどこかでファンの方にお会いすることがあったら「あの時はありがとうございます」って言えるような人になりたいなと思っているので、これからも応援してくれたら嬉しいです。このインタビューをきっかけにファンになってくださる方もいるかもしれないですからね!感謝の気持ちを忘れずに今後もやっていきたいと思います。


写真:秋葉巧、ヘアメイク:小池裕輔、文:村松千晶