――9月27日より映画『春琴抄』が公開されていますが、まず台本を手にした時の感想は?
もともと『春琴抄』のことは知っていましたし、前作の映画に山口百恵さんが出演されていたのも知っていたので、社長から今回は私が出演するということを聞いて、まずびっくりしたのと同時に不安とプレッシャーを感じました。山口百恵さんは好きな女優さんの一人ですし、作品自体も有名で歴史あるものなので、その映画版に自分が出演できることになり不安も感じましたけど、“やってやるぞ!”という気持ちと素直に嬉しい気持ちに変わりました。 今までは、アクションものや色のある役が多かったのですが、こういった文学作品に出演することは自分にとっても初めてだったので良い意味で変われるかもしれないという、自分自身への挑戦でもあったので・・・、頑張って演じようと思いながら台本を読みました。
――以前、舞台挨拶で山口百恵さんにお手紙を書かれたというお話が出ていましたが、どんなことを書かれたのかお伺いしてもいいですか?
普段、曲をカバーする場合は挨拶には行きますし、前作は百恵さんが演じていらっしゃったので、自分のけじめとして手紙を書いてみたんです。社長に、「手紙を書いたら渡してもらえるんですかね?」と聞いたら、「う~ん、書いてみたら?」と後押しをしてくれたので、「どうにかして、渡してください!」とお願いして(笑)。内容は、自己紹介と『春琴抄』をリメイクすることになった報告と自分の心境を素直に書きました。

――作品をまだ知らない方もいらっしゃると思うので、簡単にストーリーと長澤さんの役どころを教えて頂けますか?
私が演じる春琴は盲目なんですが、お琴や三味線の師匠をしている女性で、目が見えないがゆえに凄く性格がキツくなってしまった春琴と、全てのお世話をする奉公人の佐助との純愛を描いた作品になっています。今回の私たちが演じた『春琴抄』は、登場人物も少なくいんですが、その分ひとりひとりにスポットが当てられていて絵も綺麗なので、最初は重い物語だと思いがちですが、結構すんなり観られる作品になっていると思います。
――春琴を演じるに当たって、心がけたことはありますか?
目をつぶって演技をすること、お琴を弾くこと、関西弁を話すこと、全てが初めてだったんですけど、“長澤が演じてる”と思われないようにするのに、気をつけました。春琴にとっては、目をつぶって生活をし、お琴を弾いて、関西弁を話すことが当たり前のことなので、“春琴”として映像に写るように・・・。クランクインする前に、時間を作ってお琴の練習に通ったり、方言をずっと聞いたり、家では目隠しして生活してみたり(笑)、そういったところから役作りを始めました。
――もちろん、お琴は初めて?
はい。普通に弾くだけなら、なんとなく出来るんですけど、目を瞑って弾くとなると自分の感覚だけが頼りになってくるので、それを得るまでにかなり練習しましたね。
――役作りをするまでが大変だったんですね。
今回は大変でした。いつも役作りをするときは、比較的すんなり入れて余裕も持てるくらいなんですけど、この作品では他のことが手につかなかったです(笑)。

――長澤さんから見て、春琴はどんな女性だと思いましたか?
春琴は、凄く寂しさと孤独を抱えていているんですが、常に愛されているという自覚を持っていて、同じ女性として羨ましいと思う部分があります。目が見えないことは辛いことだと思うんですけど、その代わりにずっと傍に居てくれる人がいることは幸せなんじゃないかなって思いました。
――演じていてリンクする部分はありましたか?または全くなかったですか?
全く違いますね。でも、違うからこそ、役に入り込めたというのはあります。私がもし春琴のように目が見えなかったら、きっとあんなに人に対して強く当たることもしないと思うんです。きっと周りの人に優しくして、周りの人にも優しくしてもらいたいなぁと思うんじゃないかなって。でも、春琴は佐助という絶対的な存在がいるからこそ、そういうことが出来るんだろうなと羨ましく思いました。