――映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』に出演が決まった時の心境をお聞かせください
最初に面談をさせていただいて、その時はオーディションの気持ちで受けていたんですけど、そこで「麦戸ちゃんの役をやってほしい」と直接言っていただいたのですごく嬉しかったです。脚本も事前にいただいて読んでいたのもあって、この役を演じられるんだ、と本当に嬉しく思いました。
――脚本を読んだ感想はいかがでしたか
ぬいぐるみが相手ではあるんですけど、こんなに素直に自分の辛いことやしんどいってことを素直に吐き出している人たちがいるんだって感動したんです。辛いってなかなか言えないじゃないですか。でもこのぬいサー(ぬいぐるみサークル)の人たちは、それぞれが素直にしんどいって言っていいんだよっていう空気を作り出してて。この新しい世界が映像化されて色んな方に見ていただけたら、何かが変わるんじゃないかなって思いました。

――駒井さんが演じた麦戸はどのような役どころでしょうか?
麦戸ちゃんは普段は明るくて優しくて積極的な子なんですけど、他の人のことを自分事のように感じてしまうくらいの繊細さも持っている女の子だなって思います。
――ご自身と共感する部分はありましたか?
普段は明るいけど、結構ネガティブなところは似ているかもしれません(笑)
――役を演じる時に気をつけていたことや心がけていたことは?
クライマックスのシーンでは麦戸ちゃんが一番喋るシーンになっているんですけど、優しさを強要しないように気をつけました。どの役も終始優しくて、セリフのメッセージ性が強いんですけど、あくまでもそれが正しいわけではなくて、私たちはこう思っているよ、押しつけじゃないんだよっていうスタンスではありたいなと思っていました。
――セリフの細かい部分まで気をつけていたんですね
相手のことを思ってるんだよって前提でした。どの役もそれぞれ優しさに対する考え方があると思うんですけど、相手のことを思ってない優しさは押しつけになっちゃうけど、どの言葉も意見も、例えば七森くんのことを考えたら今は一番これが良いと思って、そのために言ってるんだよっていうことが伝われば良いなと思いました。

――麦戸が心を通わせることとなった七森を演じた細田佳央太さんはどのような方でしたか?
4年前に『町田くんの世界』っていう映画でご一緒していて、その時は私のお兄ちゃん役だったんですよね。年齢は逆で、細田さんが1つ下なんですけど、その時から純粋さというか目の輝きみたいなのはずっと変わってなかったです。七森くんそのものだなって思いました。
――変わらない中でも、当時と比べて変化を感じた部分はありましたか?
大人になったなと思いました(笑)。私が言うかって感じですけど(笑)。色んな作品を経験されて、芯がより太くなった感じはしました。でも優しいところやいつも穏やかで明るいところはそのまま変わらずだと思います。
――ぬいぐるみサークルが舞台の作品となりましたが、サークルの皆さんとの撮影はいかがでしたか
本当の大学のサークルみたいでした!サークルには入ったことはないんですけど、実際に入ったらこんな感じなんだろうなっていう疑似体験が出来ました。
――皆さんとはどのようなお話をされたんですか?
現場にぬいぐるみが多かったので、このぬいぐるみはこの人に似てるよねっていうのを探しまくってました。「これは佳央太くんに似てるね」「こっちは白城ちゃん(新谷ゆづみさん)だね」って皆で探して。あと、最終日には絵しりとりもしてました(笑)。皆明るくて仲が良くて、内容は結構シビアなのに、明るい現場でした。

――金子監督はどのような方でしたか?
監督が現場で一番繊細だと思いました。監督がいたからこそ、映画の中の繊細な空気感が作られたと思いますし、いつも明るくて朗らかな方で、ピリピリすることが一切なくて、穏やかな現場でした。現場の雰囲気ってやっぱり監督の持っている空気感そのものになると思うので、すごく楽しかったし、優しくて寄り添ってくださる方でした。
――撮影期間中に金子監督から言われた印象に残っている言葉や出来事は?
言葉じゃないんですけど、監督がリハとかで実際に動きとかをやってくださるんです。その姿がすごく参考になったというか、この映画の全てのキャラクターが持ってる、人とのコミュニケーションの取り方みたいなものを監督が全部持ってるんですよね。だから監督がやってくださると、「なるほど」って理解が深まりました。あとは演出とかじゃないんですけど、監督に「次はどんな作品を撮りたいですか?」みたいな話をした時に「人間がいない映画が撮りたい」っておっしゃっていたのを、今パッと思い出しました。
――どんな作品になるのか、すごく興味深いですね
でも監督のことが少し分かる気がします。この映画の中でも、ぬいぐるみ目線のカットとかもあって、これは他の人にはなかなか思いつかないことなんじゃないかと思って。世界って人間中心なことが当たり前になってしまっていますけど、監督が見てる世界は多分そうじゃないんだろうなって感じがしました。
――撮影中に印象に残っているエピソードはありますか?
この映画では、私もそうですけど、それぞれがぬいぐるみに対して自分のことを話す時間が結構多くて、その中でも鱈山さんを演じた細川岳さんは特に重いシーンが多かったんですよ。細川さんの役は、社会で起こってる全ての戦争とかそういう攻撃的な事について考える姿がたくさん描かれているんですけど、普段現場は明るい中で、そのシーンになると空気がガラッと変わって全然違うんです。すごいなと思いました。
――共演者の方から刺激を受けることも多かったのではないでしょうか
同世代が多かったんですけど、多種多様でそれぞれが持つ色も全然違っていたので、皆さんの姿を見ながら頑張ろうって思いました。